第276話 地球規模で
揺れ続いていた大地が止まった。
火山の噴火もおさまった。
自衛隊からの情報(衛星から撮れた映像)だと、海面が上がったのか陸地が沈んだのか、日本は小さな島の集まりのようになったそうだ。
いや、日本は元々、島国と言っていたが本当に島国になった。小粒な島国だ。
生き残った人々は自衛隊の先導で避難して何とか残った陸地へと移動していた。勿論、間に合わなかった地域もある。
筑波山は残ったが、その周りは酷いもんだ。流れ出たマグマがそこら中を飲み込んでいた。
筑波山中に作った拠点は無事だ。外への入り口を一時的に土魔法で閉じたそうだ。
病院拠点も飛んでくる火山岩が降り注いだが、直前に地下通路を通り、洞窟拠点へ移動したのが幸いした。
筑波山の洞窟拠点は出入口付近に住んでいた者は上へと移動した。元から巨大な洞窟だった。タウさんが北海道へ移動してから、洞窟拠点の拡大はストップしていたので、上部は本当にただの洞窟だった。
LAFサーバーも比較的新しい上の階層に作った部屋だったので今のところ問題はない。
本家である某国のLAFがどうなっているのか、興味がないので聞いていない。
ただ相変わらず、海外での『覚醒者』が出ていないようではあった。隠しているだけかもしれないが。
実はアメリカ、イギリス、ドイツから、自国にサーバーを作り繋げる事は出来ないかと打診を受けているそうだ。
日本にあった米軍基地の隊員にリアルステータスが発生した事が、日本から引き上げた後に発覚したらしい。最後の最後まで残っていた隊員はどうやらLAFをやっていたらしい。
米国は暫くは某国のLAFに皆で取り組んでいたが、一向に『覚醒者』が現れず、とうとう日本に打診してきたそうだ。
今のところ自衛隊は「知らん」で押し通しているらしい。
日本の残った陸地はかなり少ない。
しかも小島の様にバラバラと点在している。1番大きい陸地は北海道だが、北海道も以前に比べると3分の2以下の大きさになってしまった。
本州は高い山々を中心に島が点在している状態だ。
四国や九州は本当に小さい一部のみが残ったのだが、それでも人々はそれらの陸地に集落を作り暮らしているとの事だ。
以前の地球の様に、あの頃の日本のような交通網があるわけでなく、電気ガス水道も島によっては全くない。
ただ、少し昔の日本のように皆が工夫をして生きている。
大人も子供も、年齢に関係なく「出来る事」「得意な事」をして協力しあって生きている。
北海道に(サーバーが生きている限りだが)『ステータス学園』が設立された。
リアルステータスは生活のために「テレポート」や「マップ」が必須である。
また北海道には学院の他に『商店』がある。
子供よりも付き添いで来た大人達でいつも賑わっている。
『マツドマルド』
『スターガッコス』
『セボンイレボン』
『マツカワチヨコ』
『ゴンザエモンのスクロール屋』
ゴンちゃんは北海道に店舗を出した。拠点は相変わらず岡山なのだが、毎日通ってきている。
ゴンちゃんのスクロール屋は大繁盛。ゲーム内で作製した諸々のスクロールを売っている。店員も居る。護衛も居る。
各島には医者代わりのWIZが必要である。医療関係者や元医大生はセカンドにWIZを取得している。
最近では海外からの研修生も北海道の学園に学びに来ているそうだ。彼らの自国はかなり荒れているらしい。
海外では人が減っていく一方だそうだ。
『ステータス学園』が出来た当初、子供を何歳からステータス表示させるかで揉めた。
かつての日本の成人は二十歳であった。大災害より少し前には18歳が成人になっていたが、もっと若くてもよいのではと論争になった。
「電車もバスも13歳から大人料金だっただろ? 13歳が成人でいいんじゃないか?」
「そもそも大災害前の日本が幼すぎましたね。20になっても30になっても子供のように扱う親が多かった」
そんな話で盛り上がっていた時に、どっかの爺さんが話に割り込んできた。
「昔…いや、昔の話は嫌がられるからしてこなかったが、昔は中学に上がると大人と言う気分になったもんだ」
「私が小学生の頃は母親の手伝いをさせられたしクッキーくらいなら自分で焼いたものよ。けれど、最近は高校生の娘さんのためにバレンタインのチョコやクッキーまで親御さんが作るって聞いて驚いたわ。あ、大災害前の話よ? まぁそういう時代だったのね」
「私も清華姉も小学生で料理させられたわよね?」
「そうねぇ。友達は全部お母さんがやってくれるのにって当時は思ったけど、大人になってからやってて良かったって有り難く思ったわ」
キヨカとアネの話を聞いて、なるほどと思った。
自由気ままに育てられたように見えるが、実は色々な事が出来るふたりを見ていると親御さんがしっかり教育していたんだろうなと思ったのだ。
「大人がさ、子供子供と決めつけてる人が多いけど、子供って案外侮れないぜ。気がつかないうちに大人に負けないくらい色々考えてる。こんな世の中だから何歳が成人とか関係ないだろ。15でも13でも8歳でも5歳でも、ゲームにログインしたいやつはさせればいいし、もちろんちゃんとルールも周りが教えるべきだ。今の子は俺らの時に比べて生まれた時からネットやスマホがあった時代だ。俺らよりずっと上手く新しい世界に馴染むぞ?」
「そうですね。うかうかしていられませんね。翔太に置いていかれないようにしないと」
「そうだぜ!父さん。俺もマルクももうふたつの職を使いこなしてるしさ」
「マルクもか!」
「うん! ふふーん。早く父さん以上のWIZになって父さんにラクをさせてあげるんだ!」
「マルクぅぅ(号泣)」
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「トルネェェェェド!トルネェェド!トルネードッ!!!」
三つの竜巻が合体して大きく空へ噴き上がる。地面に積もった灰を巻き上げて、分厚いを雲を巻き込む。
灰色だった空の雲が巻き込まれて渦を巻く、その中心に少しずつ大きく穴があいて広がっていく。
そこから光が地上をさす。
久しぶりの太陽の光。
皆がその下へ向かって走る。
「マルク、待った。日焼け止めを塗りなさい」
アイテムボックスからゴソゴソと出す。向こうでセボンに売ってたやつだ。
「急に陽に当たると日焼けするからな、特にマルクは肌が白いんだから。あ、サングラスもしなさい。目に悪い」
日本国諸島はかなり土地が減ってしまった。
そして、人口も減った。
しかし、そこで生きる人々は以前と変わりなく生きている。
いや、以前よりいきいきとしているようにみえる。
俺たちは今も、楽しんで毎日を過ごしている。
---【完】---
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長らくのご愛読、ありがとうございました。
感謝申し上げます。
くまの香
あ!番外編が少しあります。たぶん。まだ書いていませんが。
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