第162話 基本はここから⑧

 大仏から洞窟に戻り、一旦解散になった。今後は用がある時は血盟念話で連絡を取り合う事になった。


 洞窟の部屋へ戻り3人でお茶をする。

 最近毎日慌ただしかったので、妙に時間を持て余した。



「明日もまだ休暇で時間ありますよね」



 キヨカが俺とマルクにお茶受けの饅頭を皿に乗せて差し出す。俺もマルクも好きな皮が薄くて餡がいっぱいの饅頭だ。



「何かやりたい事あるか?……あ、勿論個人的な用事があるなら明日は自由行動でいいぞ?」


「いえ、明日は3人で物資収集行きませんか?」


「そうだな。行きたい場所とかあるか?」



 キヨカは手帳を取り出したて、ペラペラとめくった。



「ギルドの掲示場に貼り出された依頼の品が幾つか、アウトレットモールで手に入ると思います。良ければそこに行きませんか?」


「大仏様と近い方向だよね。帰りにまた寄りたいなぁ」



 ああ、そうか。キックの両親を訪ねた時に寄ったモールか。

 あの時ってどうだったっけ? 俺、モールのブックマークしたんだっけか? 一覧を開く。



「う…うん? どれだ?」


「アミプレアウトレットで検索してみてください」



 おう、あったあった。あみぷれアウトレット。



「ブックマークの名称を統一するのに回った時にその名前にしたはずです」


「ああ、あった。ありがと」


「僕もあるー。アミプレアウトレット!」


「じゃあ明日はそのアミ行ってまた大仏だな。そうだ、久しぶりに朝の大仏ツアーも開いていいか?」


「そうですね」


「父さん、待ってる人いっぱいだよ。昨日とか色んな人に聞かれた。朝の回復整体はいつからなの?とか、お参りは復活しないのかって」


「そうか……じゃあ明日は人数増やすか」


「私、ギルドに連絡しますね。今からタブレットの予約受付開始してもいいですか?」


「うーむ、急だし明日は予約無しで5時から5時半までに来た人全員を大仏に運ぶか。そんで向こうでヒールするわ」


「いいですね、時間が有効に使えますね。でもカオさんは大変になってしまうかも」


「いいんだいいんだ」


「僕も!僕もヒール頑張るね!」



 キヨカはタブレットを操作し始めた。どうやらギルドへ連絡を入れているようだ。

 と、洞窟内に放送が流れた。



『お知らせいたします。暫く休業されていました『カオ回復整体&牛久大仏参拝ツアー』が、明日のみ開催されます。今回は、予約不要で参加人数の制限もございません。皆さま奮ってのご参加をお待ちしております。時間は5:00〜5:30の30分です。5:00〜5:30です、お間違いのないよう、カオ個室前まで参加の方はお集まりください。……お知らせいたします……』



 同じ内容で3回が流れされた。予約無しと言われているのにも関わらず、放送中からタブレットへの予約が入り始めた。

 苦笑いをしたキヨカがタブレットの承認ボタンを押して居た。


ドンドンドン!


 部屋の扉を叩く音に被せて、カセの声がした。



「カオさーん!まだ起きてますよね! 居るのはわかってます!ここを開けてください、今すぐ開けないなら入りますよ!」



 家宅捜査か!返事をする間も無くドアが開いた。カセだけでなくナラ、クマも立っていた。



「カオさん、入っていいっすか?」



 いや、もう、お前の右足は入ってるぞ?そんで体重移動も済んで左足が着地する寸前だ。



「あ、キヨカさん、ども。マルクもこんばんはー」

「マルク、今日は楽しかったな」

「ちわっすー」



 いや、返事なんて全く待たずに入ってきたよ。

 リビングの床に3人が座ったのと同時にキヨカはお茶と饅頭をテーブルに出した。



「酷いじゃないっすか、俺たちを置いてツアーですか」

「俺たちも行きます!ツアー参加で!」

「それ、前に何度か申し込んだけど全然取れなかったんですよ。前は定員50名だったですよね?」


「そうだけど、お前ら今日行ったじゃないか。ツアーは大仏様の参拝とひとり一回のヒールかけるだけだぞ?」


「行きます!俺らもハケンの一員なんで!」


「別にハケンの行事じゃないぞ? 俺の個人的な……そう、クラブみたいなモノか?」


「だったら俺もそのクラブ入りますから!」


「あの……カオさん、参拝クラブはハケンの血盟員って全員参加ですか? ハケンの活動でも、彩ちゃんは来ないと思うんです」



 えっ、『参拝クラブ』って名前になったのか。それはともかく、別にハケンの砂漠の血盟員の活動ではないからな。



「別にいいぞ? ハケンの活動じゃないからな。来たい者だけくれば…」


「じゃ俺行きます!」

「俺も」

「俺も参加で!」

「僕も参加する!」

「僕も僕も僕もするぅぅ!」



 うおっ!いつの間にか洸太も来ていた。いや、部屋が近いから来ても驚かないが、かなり眠いんじゃないか?目をシバシバさせてるぞ?



「わかった。でも明日は5時集合だぞ? 洸太、起きられるか?」


「起きられる」



 うん、もう頭がぐらぐらしてる、起きられる前にもう寝そうだな。マルクがお兄ちゃんらしく洸太を支えて送っていった。お父さん、ちょっと感動した。マルクがどんどんと成長していく。嬉しいやら寂しいやら。


 ところで饅頭を頬張ってる君ら、ついでにちょっと話がある。



「今すぐどうこう出来ないけどさ、聞いておきたいんだが。カセとクマの家族とか実家について」



 カセとクマの咀嚼が止まった。

 そのまま飲み込むと餡を喉に詰まらせるぞ?キヨカがお茶のお代わりをついでいた。



「サクっと話せ。俺も早く寝たいからな」



 カセとクマがお互いを肘で突き合っていたが、まずカセが口を開いた。

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