第161話 基本はここから⑦
俺は7人を連れて牛久大仏から外が見える胸の位置にとテレポートした。
そこからしばし、外の景色を堪能する。
「あれ?魔物植物居なくなりましたね」
「うん、あそこのってエントだよね?」
「エントが居るなら安心だね。でも2本だけなんだ……エントさん」
「一応全員エルフだからエントに襲われないと思うが、一階まで降りて外に出て見るか?」
俺はカスパーを連れていた。魔物植物が現れてから鼻の効く獣系のサモンはやめていた。ほら、花粉攻撃が怖いからね。
薄暗い大仏の中の螺旋階段を降りる。スイーっと後ろを着いてくるカスパー、なんか妙にマッチしていて少し怖いな。ニヤっと笑うな。
一階は仏像が並ぶ部屋だ。洸太もカセ達も初なのでぐるりと回って見学をしている。
マルクはアイテムボックスから何かを出してお供えしていた。紙で作った花か。
外は風の精霊のおかげで、うっすら晴れてはいる。どう言うスキルなのかはわからないが、上空の雲がやけに速く移動していた。
日が出たと思ったら曇るを繰り返す。
それから洸太やカセ達のリクエストで、俺の魔法を見せる事になった。
勿論危なくないやつだ。大仏様を背に俺の魔法ショーが始まった。
「まずは生活魔法からだ。これは毎日練習すると使えるようになるから覚えておいて損はない」
空いてる広場に向けて手を突き出した。
「ウォーター」
普通の量がジョボっと出た。
「着火!」
指をパチンと鳴らすと親指の上辺りにライターの炎サイズの火が現れた。
「そよ風〜」
前に出した手の平からふわわわ〜と風が出た。
「魔法はイメージによるところが大きいから、イメージしながら詠唱するといいぞ」
なんか偉そうでちょっと恥ずかしいな。
「ここからはウィズの魔法な。ライト!」
俺の頭上にバレーボールくらいの大きさの明るい光が浮かぶ。外がやや曇りなので見えるには見えるが、よく晴れた日は外で使っても役に立たない。
「カセさん、ちょっとこっち来て」
カセが腰を落としていた地面から立ち上がり俺の前に来た。
「ヒール!」
淡い光がカセの身体をを包んだ。
「おおぅ?」
「今のが回復魔法。まぁ、カセさんは今どこも怪我してないので変わらないがな」
「加瀬、どんな感じだ?」
「なんか、ほわっと暖かい、感じ?」
それから、シールドやエンチャントアーマーをかけた。
ヘイストをかけた時は、全員ヘイスト状態で鬼ごっこをしたいと言い出した。言い出したのは大人のクマだ。
マルクもキヨカも、洸太も彩さんも、カセ達も、皆楽しそうに大声で笑いながら鬼ごっこをした。
全員がヘイストなので、今ひとつ効果がわからなかったのが残念。
大仏の前で休憩を取り、皆がようやく落ち着いた。
「そんじゃ最後に攻撃魔法な。危ないから大仏の入り口近くまで下がってくれ」
そう言うと、俺は大仏前の広場から少し先の参道あたりの上に向けて魔法を放った。
「ライトニング!」
バリバリバリバリっ!
青い光の雷が地面へ向けて一直線に落ちた。雷魔法だ。
スポンっ!スポンっ!
び、ビックリした。
参道の少し向こう側に生えていたエントが2本、地面から飛び出してロケットのように空へ舞い上がった。
いや、10メートルくらいだが。
ズボっ!ズボっ!ズボっ!ズボっ!ズボっ!
続いて、そこらの地面から、枝葉を閉じて細長くロケットにように尖ったエントが、5本、順繰りに飛び出した。
2本は着地後に倒れて起き上がったところだ。
えっ、えっ、やば、エントを攻撃したわけじゃないんだ!
俺はエントの方へ走りながら謝った。
「スマン、すまない! 攻撃するつもりは無かった。てか、地面の中に居たのは知らなかったし!ウォーター!ウォーター!ヒールヒールヒールヒール!ライトぉ」
ブンブンと大枝を振って怒っていたようなエントがやっと落ち着いた。とりあえずエントに良さそうな魔法を連発した。
エントと敵対関係とかになったら大変だ。俺は子供達の手前である事も忘れてひたすら謝った。
すると大仏の方からやってきたマルク達、マルクはエントに近づいてふむふむと頭を上下していた。
「父さん、大丈夫だってー。ビックリしただけだって」
そうか、それは良かった
見ると、エントが枝や実を地面に置いてくれていた。
「ありがとねー。父さん、水や光が美味しかったって。枝と実をくれるって」
本当に焦った。
そうだった、俺らの攻撃魔法はゲーム同様に敵対していない相手には何故か効果が出ないのだった。
ただ、直接当てたわけでなく地面だったので驚いたってわけか。
本当に焦ったぜ。
みんなを連れて洞窟へ戻った。
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