第160話 基本はここから⑥

 タウさん、盟主パーティのグループ念話を使ったな、みんなから即反応があった事に驚いた。


 現在避難民が増えている第1拠点、第2拠点。

 初期の頃はステータス表示を気にしてこまめに調べたりしていたが、最近は全く調べていなかった。


 避難民がどんどんと増えていたのもあるが、メインで動いている俺たちが忙しかったのもある。


 しかし、リアルステータスは突然発生する。理由はまだ解明されていない。


『ゲームにログイン』

『異世界戻り組の血盟に加入』

『エリアテレポート経験者』


 など、色々と言われているが、どれも絶対ではない。


 最近は『魔素』説がある。

 今まで地球に無かった『魔素』が、隕石に付いて地球に落下したのでは?と言うものだ。


『魔素』と『隕石』までは同意だが、俺は隕石落下で衝撃を受けた地球の、海や大地や氷の下に元からあったモノが地上へと現れたのではと思っている。


 きっと昔には魔物も魔法使いも居たに違いない。だからその言葉が残っているのだと思う。



 地球が彗星と衝突して砕け散る未来だった時、神様は俺たち人間を異世界へ転移させた。

 俺たち人間と『近い世界』へと。


 その『近い世界』は魔物が居て魔法があった。昔の地球もそうだったから、似た世界がそんなだったんじゃないか?


 地球が砕け散らない未来へ進んだ時、俺たちは戻してもらった。

 以前の人間でなく、向こうで使っていた力を持って、だ。

 それは、この先、地球が『魔』を思い出す、地球の『魔』が蘇るからではないか。


 と、俺は考えている。勝手な想像だ。



 だがもしもそれに近い何かが起こっているのなら、人は日々どんどんと『魔素』を取り込み、不思議な力を発症していくだろう。

 昨日まで使えなかった人が、今日は使えるかも知れない。


『力』は地球の『魔素』から来るものとして、『ステータス』は神様からのプレゼントだと思う。

 ゲームに似せたステータス画面。それが見えるとわかりやすい、だが、ステータスが表示されなくても『力』(ブックマーク)は出たのだ。


 リアルステータス画面は神様からのちょっとした手助けにすぎないと思う。

 うれトマの婆さんや養老の爺さん、アレは完全にスキルを使用していると思う。


 いや、そもそもあのジジババ達は『ステータスオープン』を試した事はあるんか?

 やはり、拠点の避難民は、新たに全員試すべきだ。


 そこで、拠点の避難民のステータス調査にゆうごが手を挙げた。北海道の仲間達と手分けをして、アンケートを取るそうだ。

 アンケートは『ステータスオープン』と唱える事で面前にステータス画面が表示されるか否か、だ。


 

『①ステータス詠唱後の画面表示があるか ②最近特殊な力があるか それと、ゲームでの③職業 ④レベル アンケートはこんな感じでいいですか?』


『はい、それと加入している血盟名も記入してもらいましょう』


『わかりました。では北の砂漠でその作業をお受けします』


『ゆうご君、お願いします』



 俺は気になった事があったので聞いてみた。



『タウさん、ブックマークの確認はどうすんだ? ステータス無くてもブックマーク出来るかの確認』


『それだよなぁ。俺らの時はまだ身内だったし人数も少なかったから検証出来たけどさ』


『そうですね。今、避難民はおおよそ500人以上になりました。ブックマークの確認は難しいんじゃないかな』


『ブックマーク確認のために、テレポートスクロールを500枚消費するのは無駄、ですね』


『そもそもスクロールがそこまで無いよな』


『いえ……。カオるんからお預かりしているのがあるにはありますが、検証に500枚使用はありえません』


『ブックマーク検証は、拠点内の業務上、必要な者だけで良いのではないでしょうか』


『では今回のアンケートにはブックマークについての記載は入れないでおきます』



 そこで念話は終了した。

 ブックマークの検証で、テレポートリングの話を誰もしなかったのは、実はちょっと前に聞いた自衛隊のサンちゃんの話をタウさんにしたからだ。勿論、タウさんに話す事はサンちゃんの了承を得ている。


 ハマヤんとフジがリングを借りパクされた件だ。その話をタウさんの耳に入れた直後に、血盟主へ話が伝わった。


 ゲームではアイテムの借りパクはよく聞く話だ。ゲームを始めた頃、よく知らない相手にモノを貸す時は返って来ない事を頭に入れておけと言われた。


 しかし、現在、もうゲームアイテムが入手出来るかわからない状況で、知らない相手を信用して貸す事は出来ない。

 ひとつしかないテレポートリングを、見ず知らずの避難民へなど、怖くて出来ない。


 その経緯があったので、今回の念話でリングの話は出なかったのだ。





「あ、スマン。盟主念話が長引いた。どこまで話したっけ?」


「ええと、自己紹介が終わったところです。この後どうしますか?



 うむ、悩む。

 実は洞窟内や、外の洞窟周りでもブックマークの旅に連れて行こうかと思っていたのだ。

 物資収集は出来なくても、必要そうな場所のブックマークくらいは、と。


 しかし、テレポートスクロールを渡せない今、ブックマークが必要か。



「マルクとキヨカ以外はリアルステータスは出ていないんだよな?」


「ないです」

「うん、出てないなぁ」



 となると、今、この時点でブックマークは必要ないか。せめてリアルステータスが出たら考えよう。



「うん、一応毎日寝る前にステータスオープンを唱えてみてな。もしかして出てくるかもしれないからな」


「おおう!寝る前と言わず、朝昼晩唱えるぜ!」

「僕もとなえるー」


「お父さんお父さん、あそこに行こうよ。大仏さまのとこ」


「ああ、牛久大仏ですね。いいですね」


「あ、そう言えばカオさん、毎朝大仏ツアーやってるんですよね」


「ああ、ここ2週間は休止中だったがな」


「それ、人気で全然予約取れないらしいですよ」


「じゃあ今から行くか」



 俺は7人を連れて牛久大仏から外が見える胸の位置にとテレポートした。

 そこからしばし、外の景色を堪能する。

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