第139話 北を目指す
北海道の
メンバーはタウさん、カンさん、ミレさん、アネさん、キヨカ、マルクと俺の7人。それと海上保安庁の若者5名と俺ぐらいの年齢の男性2名で合計14名。
俺はテレポートで飛んだ場所の周りをキョロキョロ見回したがそこは全く見覚えがない場所になってしまっていた。
あの時は火山灰など全くなかった。と言うか景色を覚えているほど長居もしなかったか……。
だが、本州に比べると灰の量は少ない気がする。港には火山灰を被った船が何隻か放置されていた。
あの日少年(
タウさんとカンさんはそれらをアイテムボックスへと収納していた。そうか、『材料』にするんだな。
このままあってもどんどんと朽ちるだけだからな。
少し待っていると、そこらにあった船が綺麗に片付いた
クルリとこちらを振り返ったタウさんに呼ばれた。
「カオるん、ここに船を出してください」
ああ、そのために場所を開けたのか。
さて、どれを出せばいいんだ?あの時は船と気が付かずにアイテムボックスに収納した『鉄壁』だが、収納すると名称(種類?)が表示されたのだ。それを見て初めて「船だったのか」と思ったゴミも多い。
「ええと、フェリーでいいかな?タンカーとか………高速船ってのもあるぞ」
「もう少し小さめのはありますか?」
「んー……、サイズは解らんが、
ぶほっ
ミレさん……。
笑いたくば笑うが良い。
「ろかくせ……」
「
「……ああ、それです。りょ、りょ…」
「それがいいですね。人数的にもちょうど良いかも知れません」
カイホの人は笑いを堪えていたのが鼻の穴がピクピクと広がっていた。タウさんは口元を手で押さえている。
「カオるん、それを出していただけますか?」
…………さてはタウさんも言えないと見た。『ソレ』で誤魔化したな。
指示された場所へアイテムボックスから出す。
そこに
流石に海が本職の
程なくしてエンジンのような音もし始めた。壊れていないか念入りにチェックをしているそうだ。
あの津波初日に流れて来たのを片っ端から収納した中のひとつだろうか?数日経ってから拾ったのはひっくり返っていたのも多いからな。
初日なら新鮮な船のはずだ。
「タウロさん、大丈夫です。確認は終わりました皆さん乗ってください」
カイホさんの指示で俺らはソレに乗り込んだ。
「カオるん、
タウさんに頷いて答えて、船が
「エンジンも無事そうだが、カオるんの精霊で進めるなら一気に
「そうですね」
ミレさんとタウさんが地図を見ていた。
元から自分が居た場所もイマイチ理解できてなかったが、船が方向を少しずつ変えていくと、もう、俺にはサッパリだ。
「あっちが
恐らく
「カオるん、船は今バックしています。
そそそうだろう。何となくあっちな気がしたんだ、
船が動き出すと精霊を出すように言われて、呼び出した。精霊はキヨカ、タウさん、カイホさんらと一緒に地図を覗き混んでいる。
精霊にはキヨカの指示通りに船を押してほしい事は伝えてある。
精霊が空中に飛び上がり
『これから
言い終わるのを待たずに船のスピードがぐんぐんと上がり始めた。
「カオるん、マルク君、キヨカさん、中へ入ってください」
踏ん張って立っているカイホの人に言われて、俺らは中へと入った。
スピードが上がるとあの時のように波の上を滑るように進む。フェリーよりも随分と小さいせいか、尚更そのスピードの速さが目の当たりになった。俺の精霊って凄いな。
船の窓の外、右手側にある陸地が線のように流れて行く……。あ、酔いそうだ。外見るのはやめよう。
や、やめて、飛び跳ねないで。フェリーの時はここまで揺れを感じなかったぞ?
「カオさん? 大丈夫ですか?」
「父さん……大丈夫?」
「……だいじょ…スマン。船酔いだ。皆は大丈夫なのか?」
カンさんが酔い止めをくれて、キヨカがペットボトルの水を渡してくる。
それを受け取って飲んでから扉の方へ移動する。
「外で風に……あたってくる」
「一緒に行きます」
「僕も一緒に行く!」
扉から外に出た。船があれだけのスピードで移動しているのだが、それほどの強風は無い。これも精霊の魔法か何かなのだろうか。
「これは、精霊のシールドかバリアでもかかっているのでしょうかね」
カンさんも出てきたようだ。
中に居るよりは落ち着いたのか、それとも薬が効いたのか、先までの吐き気はだいぶ治った。
しかし、俺は心に誓った。フェリーより小さい船には金輪際乗らないぞ。あ、スワンは別だ。
俺を真ん中にマルクとキヨカ、そしてカンさんと、遅れて出てきたミレさんの5人で、ボォっと海を眺める。
皆ずっと忙しく動いていたから、こんな時間があっても良いよな。とは言え、ゆうごは今大変な状態なのだからそんな事を言ってはいけないのかもしれない。
海に降る火山灰は横殴りに吹雪いている。さっきの港ではここまで酷くなかった。
「船が速いから灰が吹雪いて見えますね」
そうか、とキヨカの言った事で腑に落ちた。
船内アナウンスが甲板にも聞こえた。
『
「私、ちょっと言ってきます」
キヨカが操船室の階段を上がっていった。精霊との連絡役を押しつけて申し訳ない。
そうして俺たちは
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