第127話 富士山①
拠点メンバー内に、ゲームでセカンド、サードキャラの作成が流行り出した。勿論タウさんは北海道のゆうごにも情報は回している。
外が危険になった事もあり、ゲームに精を出す人が格段に増えた。
洞窟内の避難民も今から始める人にはファーストキャラはエルフを取るように指示が徹底された。エントに襲われないようにだ。
ゲームを始めたばかりの人も、リアルステータスが表示されていない人も、エルフキャラを持っているだけでエントに襲われる事はないのだ。不思議だ。
だが、魔物植物は別だ。アイツらは人間を見ると襲ってくる。なので、外出は禁止のままだ。
最近、毎朝4時に、俺の部屋の入口前に行列が出来る。一応予約制にしてある。
『カオ回復整体 4:00〜4:30 ヒール一回のみ』
ゲームに夢中になるあまり、目や腰の疲れを訴える人が増えたのだ。ギルドからの依頼で毎日定時に回復魔法をかける事にした。
タブレットで要予約、1日限定50名でヒールを掛けている。洞窟は高齢者が多いので大人気だ。
さらに『
整体からの散歩コースと、両方に参加する者も多い。散歩コースの人数を増やして欲しいとの要望もある。
しかしなぁ、50名ものエリアテレポートは無理だ。外側の人を置き去りにする。
「2回とか連続で飛べばいいと思う」
マルクに指摘された。うちの子天才だ。
さっそく参拝コースも50名に増やした。三回に分けて飛ぶ。
そもそも、避難民はそれほど洞窟の外に出ていた人達ではないので、今回の『洞窟外への外出禁止』は、実はそれほど気にしていないようだ。
まぁ洞窟内が色々と充実しているからな。十分満喫出来ているようだ。
俺はタウさんの指示で、魔物植物の侵入対策として洞窟の入口にサモンを2体出して立たせている。ライカンスロープだ。
ライカンは子供に人気でオヤツをあげにくる子もいるようだが、洞窟の入口近辺は外が近くて危険なので注意はしている。魔物植物が侵入して来た時に、ライカンvs魔物植物で戦いになり、巻き添えを食うかもしれないからだ。
しかし注意をされてもこっそりと来る子供が後を絶たず、考えた末に洞窟入口に見張りとして2体、入口から10メートルほど奥に小さな
子供達はこの小屋までだ。柵を立てた。ライカンは交代制で、休憩の1体が子供と交流をしている感じだ。
地下LAFのゲーム部屋はいつも満席だ。キングジム達に話して、他の部屋もゲーム部屋へと改造して貰った。俺のエリアテレポート便が朝昼夕と3回ある。避難民はそれを利用して地下LAFへ通っているそうだ。
自衛隊関係は、自分達のシェルター敷地内にパソコン部屋を設置してそちらでレベル上げを行っているようだ。
ふっ、だが、
あちらはサーバーが違うのでゲーム内でかち合う事はない。だが、マースサーバーで時々見かけるダークエルフ……、あれ絶対、自衛隊関係者だよな?血盟未加入のやつらを見かける。
こちらを探っているのか、それともジュピターサーバーでの訓練に嫌気がさして遊びに来ているのか。
……確か検証で、ステータスはひとつのサーバーのみ。ステータスに表示された血盟がメインとされたんだよな?他のサーバーのキャラが消えるわけではないが、ステータス血盟が表示されると他のキャラは血盟未加入になったとか聞いた覚えがある。
俺はここマースから動くつもりはないので、適当に聞き流していた。タウさんやミレさんは血盟未加入のプレイヤーを見かけると別サーバーからのスパイだろうと言っていた。
自衛隊の3人、サンちゃんとフジとハマヤんは、こっちのサーバーにキャラを作っている。
3人のマースサーバーのキャラ名は、サンタ、フジヤ、ハマダだ。
サンちゃんは向こうでエルフなのでこっちではウィズを。フジとハマヤんは向こうでナイトなのでこっちではエルフを作った。血盟には加入出来ないのでフレンド登録のみで、ゲームにインした時によく連絡をしてくるので一緒に遊ぶ事もある。
「あっちはさぁ、マジ訓練なんでオモロくないんだよなー」
「しょうがないだろ」
「こっち来るとホッとするよな」
「ゲームしてる背後から怒号が飛び交うからなぁ。あ、リアル背後な」
そんな事を言いながら子供らと遊んでくれる。ゲーム内でだ。
『回復整体』と『参拝』と言う朝のルーティンを済ますと、ネットに書き込まれた『ヘルプ』先へと向かう。
植物に襲われて怪我をした人や緑で侵略された家からの脱出を助ける。
ブックマーク先だから迷子になるわけがないのだが、マルクとキヨカは絶対に着いて来る。エントの餌やり(ライト魔法)とかち合った時も翔太に断ってこちらに来ていた。
「ごめん、翔ちゃん、後でライトあげるからお水だけあげておいて」
「おう、わかったー。気をつけてけよー」
タウさん、カンさんの病院拠点も何とか無事に完成、上手く起動し始めたそうだ。
棚橋ドクターらは、あの個人病院にいた看護師らと病院拠点へと移ってきた。その際に普段診察で回っていた家の人達も患者込みで連れて来たそうだ。
そして、病院関係者で『医療砂漠』を立ち上げた。ゲーム内で赤い十字架のアイコン(血盟の旗)を付けたWIZの一団が、オークから逃げ回っていた。
…………頑張れ。
それにしても、この村、洞窟拠点周りだが、ここらで魔物植物を見なくなった。
あの『硬い石』のおかげだろうか?
そう言えばエントは増えたよな。動かないと普通の木に見える。
洞窟拠点内は、ゲームが出来る年齢から強制的に全員エルフを持つ事になった。とりあえずエントに襲われる事は無い。
それどころか向こうから、
「エダ ヤル」と言って、エントの枝をくれるのだ。ゲームのようにエントを蹴ったり叩いたりしなくてすむので良かった。
俺はいくらゲームとは言え、あの行為があまり好きではなかった。枝や実欲しさにエントを蹴ったり殴りまくるのだ。そう言うシステムだと解っていても良い気はしなかった。
…………はい、実が欲しくて叩きました。すみませんでしたー。
エントを洞窟で飼いたいと言う人も出たのだが、ゲームができない乳幼児が襲われる危険性があると言う話をして納得してもらった。
……余談だが、洞窟内で一番若いプレイヤーは3歳の男の子だ。ウッソだろう。どうなってるんだよ、今時の子はぁ!えっ?スマホやタブレットを普段から触ってるから慣れてる? す、凄いな。
俺たちが救助から戻り食堂で昼食を取っていた時、洞窟内を警報が鳴り響いた。
『緊急連絡 緊急連絡 各自、身の回りの安全を確保してください。衝撃に備えてください……緊急連絡…』
一瞬にして食堂が騒ついた。何だ?身の回りの安全?大地震でもくるのか?衝撃……まさかまた隕石が落下してくる?
タウさんから念話で緊急招集がかかった。
俺とマルクとキヨカはテレポートで本部へと飛んだ。
洞窟の拠点本部には各砂漠の盟主が集まっていた。ゲーム経験者でテレポートリングを持っている者達だ。他のメンバーは徒歩で洞窟内を移動して来るそうだ。テレポートスクロールには限りがあるので最近は無駄に使わない傾向がある。
「今居るメンバーに、先にお伝えします」
タウさんが何時にも増して眉間に皺を寄せていた。何だろう、何が起こったんだ?
今ここに居る、ミレ、カン、アネ、キヨカ、マルク、俺は誰も口を開かず、タウさんの言葉を待った。マルクが俺の手を握る。
「富士山が、噴火しました」
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