第81話 激減する人類
関東でも平野部は酷かった。
千葉はほぼ水没。いや、出てる(残った)部分も僅かだか所々にあった。
そうだよな?千葉県の内陸でもあるのに江戸川のあの広さから言って海並みだったからな。
千葉はもともと海に突き出た半島であったし、そちらから来た津波の被害をモロに受けただろう。
高い建物や陸地のみ頭を出した状態から今もあまり水が引かず、海に浮かぶ小島状態。ご遺体はどうやら波に持って行かれたのも多かったようだ。
ミレさんの自宅がある埼玉はまだ陸地部分が多く、生き残っている人も多かった。日比谷や丸の内の高層ビルに残された人達を運んだのもここ埼玉だっだ。ひと気の無い学校の校庭や体育館にエリアテレポートで運んだ。
東京、神奈川は一部以外はほぼ千葉県同様。
アネ一家が生き延びたのも早めの行動で内陸部から山岳部への避難が出来たからだ。ゴンちゃんもな。
良かった、2人が無事で。少しでもたついていたら今頃は……。
それにしてもキツイ。
異世界でモンスターを倒す時も、実は始めの頃はかなり抵抗感があった。
日本では『生き物』を殺す事はなかったから。
それでも猪とかウサギは『食べる為』という前提があったからまだ良かった。
人間である盗賊も弓や魔法で遠くから倒す事は出来た。殺らないとこちらが殺られる。自分の身内を守るため、という大義名分があった。とは言え、あれ?俺ほとんど盗賊なんて殺ってないぞ?
ダンジョン内は倒しても死体が残らないので気持ち的にずいぶんとラクだった。あれはまさに『ゲーム』的だからな。
こっちに、日本に戻って、以前の日本と同じ緩い世界でない事はわかっていた。
大災害が起こり、残った人達の殺し合いとかになったら絶対家族や仲間を守ろうと考えていた。
飢えた野犬が襲って来たら、俺にワンコが殺せるか、でもやらなきゃならない場面なら絶対出来ると思った。
しかし、こんなに沢山の死んだ人達…………都内も神奈川も千葉と違うのは、ご遺体があちこちに重なり置かれていた。それも早い段階で亡くなったのかかなり痛んでいる。
それに火を焚べる。
腐るから仕方ないとわかってる、放置した方が可哀想だというのも十分にわかってるんだ。
別に俺が殺したわけではない。俺の魔法でこれから殺すのでもない。
けど、何でか、心が疲弊していった。
「ファイア…」「ファイア」「ファイ、ハァ」
「カオるん、もういいですよ。申し訳なかった。私がやります。スクロールを使いましょう。カオるんばかりに辛い仕事を押し付けてすみませんでした」
「いやスマン、俺がこの辺に集まった死体を処理しようって言ったから…」
「え?俺、別に…」
「ほら、マルク、親父にくっついとけ」
「カオるん、サモンでワンコをこっちに呼び寄せれるでしょ? 呼んで、三匹。私、この辺をちょっと散歩したくなった! 散歩にはワンコは必須でしょ? 貸して。あ、一匹はカオるんに貸してあげるね」
いや、アネよ、三匹とも俺の犬だ。俺が貸す方。エンカとクラシックをアネに渡す。
マルクが一番可愛がっていたペルペルが俺の体に頭を擦り付ける。マルクも何故か俺にグリグリと頭を擦りつけた。
そうか、俺、ご遺体を燃やすのに疲れていたのか。神父さんでも坊さんでも葬儀屋でもないもんな、俺。派遣事務の一般市民だったから。
ミレさんとタウさんが何かを小声で話していた。ちょっとだけ聞こえてきた。
「カオるんは大雑把に見えて繊細だからな」
「ええ、そうですね。うっかりしました。知らない人間とは言えこんなに遺体処理ばかりさせられたら私だって夜うなされるのに…」
「やっぱ遺体は放置するしかないな」
「ええ。そうですね。腐って衛生的に良くないと目についたものだけでもと火葬していましたが、やはりやめましょう」
関東の救援を終えて一旦茨城の拠点で休息をとり、今後の計画をたて直す事になった。
いや、俺そんなに疲れてないぞ?
マルクとペルペルに挟まれてあったかいなと思った。……少しだけ疲れてたかも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます