第77話 仲間からの救援要請
装備の検証の次はポーションの検証だ。タウさんから言われて持ってる全種類をまずは一本ずつ出した。
回復薬初級(赤)
回復薬高級(白)
魔力回復薬(青)
速度上昇薬(緑)
毒消薬(茶)
ブレイブポーション(紫)
「そうでした、カオるんは黄色は持っていなかったんですね。ゲームのキャラが持っていたかは確認しましたか? こちらに戻ってもアイテムボックスの中には入っていませんでしたか?」
「おう、無かった。確かにゲームキャラの倉庫に黄色ポーションはあった。が、俺の現実のアイテムボックスにはやっぱ無いんだわ」
「とすると、魔法もゲーム内では70種ありました?」
「おう、確かにあった。70」
そう、異世界に転移した時に、ゲームのデータを元にアイテムや魔法があちらの世界に持ち込まれた。だがそれは本人の記憶が大きく関わっていたようで俺はゲームで習得していた70の魔法の内46しか
そして
なので魔法も46種しか使えないし黄色ポーション、黄色は中級回復薬だな、それは現実のアイテムボックスには入って無かった。
「くぅぅ、俺の記憶力が悪いばかりに……」
タウさんはアイテムボックスから黄色ポーションを出した。
「何を言ってるんですか。カオるんは十分過ぎる程充分ですよ。この世界にはない魔法が46種類も使える。そしてアイテムボックスには大量の物資。こんな凄い事はないです。黄色ポーションが無いくらいなんですか」
カンさんもミレさんも大きく頷いていた。
「さて、検証をどうしましょうか」
「そうなんだよな、怪我が無いと検証もなぁ」
「せめて赤(初級)でポーションの効き目があるかを見たいですね。この中でどなたか怪我をされている方はいませんか?」
「あ、肩こりとか腰の痛みでもいいぞ? 俺、畑仕事の時に使ってた。あ、魔法だけどな」
「なるほど、ヒールが効くならポーションも効きそうですね」
そう言いながらタウさんが俺の前に来て背中を向けた。
「すみません、カオるん。肩と腰お願いします。昨日のスクロールの整理が……」
うおぉぉぅ、すみませんでした。俺が押し付けた大量のスクロールのせいだな。
「あ、違いました。ヒールの検証ではなくポーションの検証でしたね」
タウさん……、よっぽど疲れているんだな。すまん。
「しかし私ではなく、ステータスの無い方に試していただきたいですね」
「あのぅ、ここに居るメンバーじゃないとダメ?……
「ああ、
「ふむ……。まぁいずれ話すつもりですし、その
「大丈夫。憲ちゃん仲間に引き入れればオッケーだと思う」
「では呼んできていただけますか?」
「はーい」
パッと明るい顔になった翔太は部屋を飛び出して行った。
「ではその間に他の検証を。青ポーションは魔力回復薬です。これはカオるんかマルク君に試してもらうしか無いですね。今ここに居る全員にエンチャントをかけてMPを減らしてもらえますか?」
「けどさ、ステータスには数字出てないぜ?」
「ああ、大丈夫ですよ。カオるんの事だからHPバー、MPバーが出るのを確認しているはずです」
おぅ、忘れていたぜ。
「も、勿論だ、確認ず、済みだぜ」
そう言いつつ慌てて心で唱えた。良かった赤いバーと青いバーが表示された。良かった。
俺は指示通り皆に魔法をかけまくる。青いバーが少し減った。直ぐに青ポーションを手に取り蓋(コルク)を開けてゴクゴクと飲んだ。
赤ポーションのように瞬時に全回復ではないが、青いバーが勢いよく青く埋まっていく。
「うん、青ポ(魔力回復薬)は効き目あるみたいだ。もう満タンだ」
「そうですか。ありがとうございます。次は毒消ですが、毒消の検証は不可能ですね」
「そうだな、誰かが毒を飲むわけにはいかないしな」
「毒消は保留で。それとブレイブポーションもナイト専用のポーションですからこれも検証不能ですね。アネさんが居れば……」
「そうだな。アネさん、無事だといいが……」
アネさんからはまだ連絡は無かった。俺は考えないようにしていた。悪い予想は当たったら嫌だからそういう時は考えないに限る。
「それとグリーン、速度上昇は誰が試しますか?」
「はい!私、私試したいです!」
芽依さんが勢いよく手を上げた。チャレンジャーだなぁ。さすがラノベ作家さんだ。自分の身体を使って確かめるとは。
「毒ではないので大丈夫とは思いますが、少しでもおかしいと思ったらすぐに言ってください。カオるん、その時はヒールをお願いします」
「はいよ」
芽依さんはグリーンポーションを手に取り、迷う事なく蓋を開けてグビっと飲んだ。
「味は栄養ドリンクみたいかな。それで効果は何でしたっけ」
「速度上昇だ。ちょっと廊下を歩いて見てくれ」
ミレさんに言われて廊下に出た芽依さんを追うように俺らも廊下に。廊下と言うか洞窟の通路だがな。
だが俺らが全員出る前に芽依さんは向こうの
「きゃははは、何これぇ、ヤバイ、私どうなってるの!うははは」
楽しそうに廊下を行ったり来たりしていた。
そんな芽依さんを部屋へと引き込んで全員で部屋へ戻った。
「芽依さん、カオるん、効果の持続時間を知りたいので、1時間毎に試してもらえますか?」
「はぁはぁはぁ、はーい。はぁはぁ」
芽依さんは座り込んでいたが中々息が整わないようだ。
「ポーションの使用が可能でも一般人のステータス、あ、画面の事ではなく通常の体力や特技の事です、一般人の通常ステータスでは無理が出てしまうようですね」
「そうだなぁ。速度が速くなっても体力は今まで通りだからな」
「今回は我々以外にも効果があるという結果が解った事で良しとしましょう。カオるん、1時間後にまだ効果が持続しているか見てくださいね」
「わかった(覚えてられるかな……)」
「大丈夫ですよ、カオるん。声かけますから」
うぉぅ、タウさんに心を読まれた!
そこにちょうど翔太が友達(けんよー?)を連れて戻った。
「ねぇ、何か今、楽しそうな事してなかった? 僕がいない間にズルいです」
「ああ、すみません。グリーンポーションの検証をしていました。速度上昇薬です」
「ええ!僕もやりたい!」
「翔ちゃん、大丈夫だよ。ヘイストの魔法使えるから後でかけてあげるね」
マルクが翔太を宥めていた。
「まずは回復薬の検証をしましょう。
「ええと、謎の実験に参加してほしい? それと仲間になったら他言無用って」
「まぁ概ね合っていますね、憲鷹君は実験に参加する事を納得していますか?」
「してる。だってこの秘密基地、不思議だらけだし仲間になったらもっと秘密がわかるって翔太に言われたからな」
カンさんはあちゃーと言う顔をしていた。だが、いいんじゃないか?いずれ知られるし、うっすらと何かに勘付いている爺さん婆さんも結構いるしな。
タウさんは憲鷹のアザを確認した後に赤ポ(初級回復薬)を手渡して飲むように言った。
憲鷹は少しの迷いもなく赤ポを飲み干した。
「
そう言って口を拭っていた憲鷹だが、膝にあった大きな紫色のアザが消えているのに気がつき驚いていた。
「ふむ、回復ポーションは一般人にも効く、と。ついでに幾つか検証しましょう」
タウさんは憲鷹にステータスが出現するかの確認を行った。
唱えてもステータスは出なかった。
PCを用意してゲームアカウントを作成させ、ゲームにログインをさせた。憲鷹はゲームキャラの職業にナイトを選んでいた。
タウさんの血盟『地球の砂漠』に加入したが、やはりステータスは現れなかった。
ブックマークをさせてテレポートスクロールを渡したがテレポートは出来なかった。つまりブックマークは失敗に終わったのか。
因みに憲鷹は俺のエリアテレポートを経験していない。
タウさんに言われて部屋の隅から隅へとエリアテレポートで憲鷹を運んだ。
短距離ではあったが、その時の憲鷹の驚きっぷりは凄かった。
「何だ!何が起こった! 俺どうしてここに居る! 飛んだ?寝てる間に飛んだのか!」
興奮して俺の服の胸元を掴んで揺さぶってきた。マルクが慌てて間に入った。
「父さん悪く無いもん! 父さんをグラグラしたらダメぇぇぇ」
マルクもよく解らない事で怒っていた。
とりあえず翔太が憲鷹を宥めて落ち着かせた。俺のシャツの首元が少し伸びた。
「憲ちゃん、これがまず秘密のうちのひとつだ。あ、さっきの回復薬がひとつ目だからこれはふたつ目だ。秘密はまだまだあるんだよ、落ち着いてよ」
タウさんに言われてブックマークを繰り返してテレポートスクロールを使用させるがやはりテレポートは成功しなかった。
「どう言う事でしょう。カオるんのエリアテレポートの経験は無関係なのでしょうか……」
「だな。一回飛べば次は成功すると思ってたが、違うのか?」
「これは……謎です」
それからミスリルセットと皮シリーズセットを渡し、着用させた。これまた大興奮であった。
「何これぇぇぇ、何でサイズがピッタリになるんだ! 後、何だろう?何か強くなった気がする。武器、武器は無いんですか?」
あるけど、渡さん方がいいと思うぞ。何か今渡すと振り回しそうな危険な香りがする。
「別室で、カンさん、憲鷹君に別室で話をお願いします。当たり障りのない程度で」
「ああ、はい……」
ちょっと諦めた感じのカンさんが、憲鷹と翔太を連れて部屋から出て行った。
一旦休憩で皆が部屋から出て行く。
タウさんは今の検証結果を血盟の念話で北海道のゆうごに知らせていた。
その時である。
タウさんのスマホが振動した。ポケットからスマホを取り出して画面を確認したタウさんは一瞬目を見開いた後、冷静ないつものタウさんに戻りスマホを操作していた。
タウさんから念話で『全員集合』の指示が飛んできた。俺とマルクは元から一緒の部屋(拠点本部)に居たので、椅子に腰掛ける。
ミレさんが芽依さんと真琴を連れて戻ってきた。タウさんの奥さんと娘さんらはちょうどお茶を運んできたところだった。
カンさんが翔太と憲鷹を連れて戻ってきた。
「どうしたんです? また何か事件でも?」
「火山でもまた噴火したか?」
そう言えば、この洞窟は
まさか、その話だろうか。
タウさんは全員が集まったのを見てからスマホを前にかざした。
「アネさんから連絡が入りました」
「何だって! アネ、無事だったんか」
「良かったです。アネさんと連絡が取れて」
「ゴンザレスさんからもメールが来ました」
「ゴンちゃんから? ゴンちゃんも無事かぁ、良かったぜ」
「アネさんとゴンザレスさんは一緒にいたのですか?」
「ええっ、何であのふたりが? アネとゴンって全然親しく無かったっよな?」
「ええ、そもそもアネさんはあまりスクロールを使ってなかった……ような覚えが。テレポートも変身もリングを使ってましたよね?ゴンザレスさんの店に行った事あるのかなぁ」
ゴンちゃんは王都で活動していた魔法使いだ。ゲームで俺がナヒョウエと言う店をやってた時、隣でゴンザエモンと言う店をやってたのがゴンちゃんだった。
俺の『ナヒョウエ』は、ゲームでは矢やバフ付き料理などの消耗品屋、ゴンちゃんの『ゴンザレス』はスクロール屋だった。
異世界に転移して王都に俺の店『ナヒョウエ』を発見した。その隣にゴンちゃんの『ゴンザエモン』もあったのだ。
俺は色々あってナヒョウエの店長でも店員でもなくなったが、ゴンちゃんはずっとゴンザエモンの店長だった。
俺は異世界での10年間、ずっとゴンちゃんと親しくしていたが、アネさんが来てたなんて話は聞いた事がなかった。
アネさんがスクロールを欲しい時はよく俺のとこに来てたよな?
「カオるん、帰還スクちょーだい」
「カオるん、解析スク欲しいんだけどあるー?」
俺は持ってる時は渡していたし、無い時はゴンちゃんとこで仕入れてからアネさんに渡してた。
いつだったか「ゴンちゃんとこで買えるぞ?」と言った事があるが、「えー、面倒くさーい。ブックしてないもん」とか言ってた。
だから、多分その程度の付き合いだよな?
「偶然、同タイミングで連絡が来ましたが、アネさんとゴンザレスさんは一緒に行動していたわけではありません」
「でもふたりとも確か神奈川……だったよな?」
「そうなんですが、ゴンザレスさんは帰還後直ぐに奥さんの実家の岡山へ避難したそうです。途中で新幹線が停まりかなり大変でしたが岡山へ到着したと。ゴンザレスさんからは無事メールのみです」
そっか、良かったぜ。ゴンちゃん今は岡山なのか。
「でも何でタウさんに連絡を? ゴンザレスさんは別血盟でしたよね?」
「ええ、ですが、彼の血盟で今回帰還したのは彼だけです。それで帰還前に連絡先を交換しました」
「あの、アネさんからは?」
「アネさんからは長いメールがいくつか。中々スマホの電波が復活せずに書き溜めてたみたいですね」
タウさんから読んで聞かされたメールは、アネさんの帰還後の大変な状況が日記のように綴られていた。
アネさんは帰還後直ぐに家族を招集、しかし隕石落下が始まる。津波を警戒して高台へ避難したが、想像以上の津波に襲われた。
自宅のあった横浜は完全に沈んだ。何とか家族の安全を確保しつつ
現在は
食糧等はアネのアイテムボックスの中にある物で十分賄えるが、近くに他の避難者はおらず、自分達だけで不安だから皆と合流したいとの事だった。
あのいつも強気なアネにしてはかなり弱気の書き込みだったそうだ。それだけ切羽詰まっているのだろう。
俺とミレさんが救出向かう事になった。
ところで丹沢山はどの辺だ???
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます