第51話 憧れのデスティニーランドが!
今度はタウさんとワイ浜へ向かう。
ワイ浜のデスティニーランドホテルに居るタウさんの家族を迎えに行く。
今回はミレさんとミレ家族が留守番だ。
マルクにも留守番をさせようと思ったが案の定、一緒に行くと言い張った。
「マルクにはこの部屋で、
「でも、ミレおじさんもいるじゃん。僕が居なくても大丈夫じゃん。僕は父さんと行く!」
また1時間ごとの帰還を約束するしかないか。そう思っていた所にタウさんからマルクへ提案が上がった。
「マルク君にお願いがあります。マルク君にはここに残ってやってもらいたい事があります。残れるものなら自分がやりたいものですが、私は家族を迎えにワイ浜へ行かねばなりません。カオるんは私の家族を此処へ運ぶために同行していただきたい。ミレさんはここに残りこの周辺から、収納出来る物を収納していってもらえますか」
「おうよ、任せろ」
「特にパソコンやタブレット、スマホとその関係の機器を」
「芽依さんはこのフロアの他の部屋を回って、収納鞄に入るだけ物を集めて来てください」
「わかったわ。冷蔵庫や箱ごと入れるとワンカウントなんで、頑張って詰めるわ」
タウさんはマルクと真琴の顔を見て、言葉を続けた。
「マルク君と真琴さんにはこの部屋でやってもらいたい事があります」
今俺らはリビングの大きなテーブルで話をしていた。タウさんは2台のパソコンを持って来てテーブルの上に並べた。
画面を操作してラインエイジファンタジーのゲームアプリを開いた。
「マルク君は既にアカウント作成してあるので、こちらでログインしてください」
テーブルの上の一台のパソコンを指す。
そして真琴を促した。
「真琴さんはこちらへ。このゲームのアカウントを作成して自分のキャラを作ってください。」
「え、ゲーム? おじさんがやってたやつ?」
マルクと真琴が隣同士並んだパソコンの前に腰掛けた。
真琴の横でミレさんが細かく説明を始めた。芽依も近寄って来て背後から覗いていた。
「タウさん、真琴の血盟はどうする?チキサバでいいのか?」
チキサバ……地球の砂漠、タウさんが新しく立ち上げた血盟だ。
「ええ、とりあえずは地球の砂漠に入ってもらってください」
タウさんは3台目のパソコンを持ってきて開き、ログインした。
「申請をいただければ、今、承認しますので」
「叔父さんも地球の砂漠なんだ、一緒だね」
「私もやりたいわぁ」
「芽依さんも収納作業が一区切り付いたらやってみてください」
「僕、お父さんと一緒のとこに入りたい」
マルクが俺とタウさんの顔を交互に見た。
「マルク君、今少し、我慢をしてもらっていいですか?カオるんが入っている血盟、月の砂漠は、現在盟主がログインを全くしていません。申請を出しても承認はされないと思います。マルク君のステータスが表示された理由がある程度解明するまで、今の状態をキープした方が良いでしょう」
「血盟を変わるとステータスが消えるって事か?」
「いえ、解りません。ですが、危険な橋は渡らない方がいい。ただ、ゲームと異世界、ステータスが関係しているのは明らかです。マルク君で検証するのは危険です」
「確かになぁ。カオるんさ、向こうでナヒョウエに戻れなくなっただろ?二度目が無いとか、誰も思わなかったもんなぁ」
「ああ、そう言えばそうだったな。ゲームの店舗のナヒョウエを向こうで辞めたら、もう店長にも店員になれなかったな」
「ええ、そうです。だからカオるんにも月の砂漠を脱退するのを待ってもらっています。本来なら、カオるんも月の砂漠を脱退してこちらの砂漠に入ってもらいたいのですが、脱退した途端にステータスが消えたらお話になりません」
「確かに、それは危険すぎる。カオるん、絶対にツキサバを辞めるなよ?」
「わかってる、けどさぁ。こっちって誰もログインしないから寂しいぞ」
「別に血盟が別でもパーティを組めば良いでしょう?」
「話が逸れてしまいましたが、マルク君と真琴さんには、ゲームキャラのレベル上げをお願いします。まずはレベル15まで頑張ってください」
「はーい」
「はい。真琴ちゃん、職業何にするの?」
「うんとねぇ、ダークエルフだよ?叔父さんと一緒」
「あ、僕も父さんと一緒のウイズなんだ。ふふふ」
「ねぇ、ふふ」
真琴がアカウント作成、ログインした時に、タウさんはステータス画面が見えるかどうか聞いていた。
答えはNOだった。
次に血盟に加入したあとも同じ質問をしていた。
答えはNOだった。
マルクにステータスが表示されたのは、マルクが異世界人だからだと思う。
俺ら、カオ、タウ、ミレ、カンのステータスが表示されるのも、異世界から戻ったからだと思う。
だが、ステータス画面ではブランクだった血盟名が、ゲームで血盟に加入した後に表示されたり、マルクがゲームアカウントを作成して血盟に加入した後にステータス画面が出るようになったのも、どちらも『ゲーム』という接点がある。
因みに俺はゲームにログインするだけでステータスに血盟が表示された。『月の砂漠』と。
タウさんは『ゲーム』という接点が、この先何かを起こすと思っているのだろうか。
ただ、ゲームを始めたマルクは直ぐに夢中になったので、その隙にタウさんの家族の元、ワイ浜へと俺らは出発したのだった。
タウさんの家族がいるワイ浜は海に近い事もあり、殆ど水没地帯だった。東京湾近辺は完全に水没していたので、足になるモーターボートさえあればある意味移動は楽だった。
『父さーん、今どこ? もう着いた?』
俺が出発して1時間後にマルクから念話が入った。ふむ、1時間ごとに連絡する約束は生きているのか。ゲームに夢中で忘れていると思ったが、しっかり覚えていたようだ。
『今はまだ海の上だな。そっちはどうだ? どこまで行った?』
『ええとねぇ、始まりの島ってところ』
もちろんマルクはゲームの話だ。
『おお、始まりの島か。確かそこで魔法を貰えるんじゃなかったか?20年前の記憶だし定かじゃないが。その後のアップデートで変わったかもしれんな』
『うん? あ、お爺さんに話しかけたらレベル10になったら来てって言われた。今は真琴ちゃんと熊とか猪とか倒してる。まだレベル7』
『おっ、猪か。油断するなよ、あいつら仲間を呼ぶからな』
ああ……悲しい過去が蘇る。薄っぺらい紙装備のウィズに猪の突進は『死』確定だ。
「タウさん、ちょっとホテル戻っていいか?」
「どうしたんです?」
「マルクにゲーム内で武器と装備を渡したい。レベル15未満のウィズなんて赤ん坊より弱いんだよ。俺も始まりの島で100回は死んだ。せめて武器と装備……」
「始まりの島で百回も死ねるのはカオるんくらいですよ。大丈夫。今は練習と言う事で。あそこは死んでもペナルティは無かったはずです。チュートリアルみたいなものですから」
そうだけどさぁ。ペナルティは無かったけど、死ぬのは結構心に刺さるぞ?
『父さーん?』
『あ、すまん。大丈夫か?』
『真琴ちゃんとふたりだからだいじょーぶ。真琴ちゃん凄いんだよ。ダークエルフって強いね。ミレおじさんも強かったもんね』
『戻ったら一緒に狩りに行こうな、夜に皆で一緒にやろう』
『やったぁ! 楽しみ!』
瓦礫が固まっている沿岸付近から離れて少し沖を移動する。沖はそれほど瓦礫も無く意外と早く進める。そうして進んでいるうちに水から突き出した高層ホテル群が見えてきた。
都内もそうだったがワイ浜も、ちょっと異様な光景だ。まるでパニック映画のワンシーンのようだ。だが、これが映画でなく現実であるのは、海の黒さと瓦礫の汚さ、そして浮かぶ……死体。
突き出た建物へ向かってボートが進んで行く。
ボートのスピードが徐々に落ちていった。
「確か……あの辺りだったはずです」
デスティニーランドが無い!夢の国が無くなっていた。俺には縁遠かった『家族』が集う場所、夢の国。
「…………本当にここが?」
「ええ、そうです。ここらの水の下にワイ浜駅があったはずです」
「そっかぁ。マルクを連れて来たかったな。あ、もちろん水没する前って事だぞ? 今は夢の国から地獄の国になったな」
流れている瓦礫よりも大量の元生きていた人達。平日でも満員の施設だからな。しかも10時なんて入園者で混み合っていた時か。
何故、隕石落下の情報を出してくれなかったのだろう。もしも事前に出ていたら、きっと被害者はもっと少なかったはず。
ああ、そうか。神さまの話だと最初は地球滅亡の予想だったんだよな。もしも発表されたとしても、それこそ最後の時を家族でデスティニーランドで、とかで結局大混雑だったかもな。
今回の災害は誰を恨めばいいんだ。
隕石か?
落下を隠蔽した政府か?そもそも政府は知っていたのか?
まぁ知らされても個人ではどうにも出来なかっただろう。
誰かを恨むより、冥福を祈るか。
そうしてデスティニーランドホテルに到着した。
この辺りのホテルで生き残っている人達は大変だ。だがそれを考えるのは、千葉県か東京都かデスティニーリゾート社かわからん。
とりあえずブックマークだけはしておく。
タウさんの家族を連れてママン東京へ戻った。ママン東京の仮拠点でまた家族の紹介を行った。
タウさんの奥さんの
難しい名前でなくて良かった。
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