第28話 隕石落下の翌日は、まだ災害真っ最中②

 ----------(タウロ視点)----------



 スマホのアンテナが辛うじて立っていた。


 メールを確認するとカンさんとミレさんからメールが届いている。良かった、無事に帰還出来たんだな。


 カオるんはまぁ、zuが繋がらないと言っていたし、LAINEの登録の仕方がわからないとも言ってたので早い返信を期待はしていない。

 だがゆうごとアネから返信が無いのが気になった。ふたりともスマホの扱いは仲間の中でも際立っていた。そのふたりからの連絡が無い。

 無事だろうか……。無事であってほしい。



 途切れがちではあるが折角繋がった電波だ。今のうちに皆のLAINEのIDを登録しておこう。友人追加を行った後にグループも作成した。

 さて、誰かが反応して友人承認を返してくれるだろうか。


 しばらく待ったがまだ反応は返ってこなかった。妻達も部屋から出てきたので一旦LAINEを終了した。



「おとん、お待たせぇ」


「ついでに入れる部屋へ入って水と食べれる物を持ってこよう」


「え……ドロボーするの?」



 美咲は戸惑ったがこれは今後必要になる。もちろん俺のアイテムボックスにも食料はあるが、この大災害がいつまで続くのかわからない。手近にある物は貰っておきたい。



「お父さんが取ってくるから3人は廊下で待っていなさい」


「美咲、美穂も。あなた、一緒に行きますよ。外があんな状態ではいつここから出られるのかわからないわ。お水も食べ物も集めておきましょう」


「うん、そうだね。ほら、美咲も一緒に行こ。アメニティとかタオルも集めようよ」


「そうだな。いつまた揺れが襲ってくるかわからないから一緒に行動するぞ?」


「はぁい」



 俺たちは廊下の端に向かって入れる部屋へと入っていく。普段はオートロックなのだろうが、どの部屋も鍵はかかっていなかった。非常時に解除されるシステムなのだろうか?


 妻と娘達はバスルームのアメニティとタオルを集めている。俺は部屋にある冷蔵庫や棚から水やジュース、酒、ツマミやチョコなどをアイテムボックスへ入れていった。ベッドから剥がした布団やシーツや枕、ソファーからクッションを、ソファーや椅子も持っていこう。


 娘達がバスルームから出て来る前に素早く収納を終えて、出てきた3人を連れて次の部屋へと移動する。何も持っていないと怪しまれると思い、一応クッションをふたつ抱えておいた。


 娘達から持ち切れないと言われ、一旦昨夜泊まった部屋へと物資を置きに戻る事にした。

 残りの部屋の探索は食事の後にした。とりあえず取ってきた水、牛乳、クラッカーとチョコレートを朝食代わりとした。アイテムボックスに食事系は充分入っているのだが、家族に打ち明けるタイミングを悩んでいた。


 食事を終えるとスマホの電波が復活している事に気がついた美咲がスマホをいじり始めた。それを見た美穂もスマホを触り出す。有希恵は先程持ってきたアメニティやタオルを片付け始めた。俺は先程途中だったスマホのLAINEを確認する事にした。


 すると、LAINEにはカンさんの入力があった。



-------カンタをグループに招待しました

-------ミレイユをグループに招待しました

-------アネッサをグループに招待しました

-------ゆうごをグループに招待しました

-------カオをグループに招待しました


-------カンタが承認しました


カンタ]タウさん、連絡が遅くなりました

カンタ]タウさん、いませんか?

カンタ]電話が繋がり難いのでLAINEに入れておきます

カンタ]昨日翔太と無事合流しました。

カンタ]今は茨城の自宅です

カンタ]自宅は無事、うちは茨城でも内陸部で津波の被害は今の所ありません

カンタ]ステータスOK、アイテムボックスOK、ブクマOK

カンタ]ステータスが使えて驚きました。カオるんの幸運が移ったかな。

カンタ]帰還スクを試したら最寄駅に飛びました。仕組みはわかりません

カンタ]電気水道はダメですがうちは仕事がら井戸と発電機あります

カンタ]固定電話はスマホより繋がります。ガスはボンベなのでOK

カンタ]県内の交通は全て止まっているようです

カンタ]またあとでここを覗きます。では!



 カンさんの最後の入力を確認すると30分程前だった。慌てて入力をした。



タウロ]カンさん気が付かずにすみません

タウロ]こちらも家族と合流しました

タウロ]私はワイ浜駅の横のホテルの18階にいます

タウロ]このあたりは壊滅的ですね

タウロ]海の中からホテルやマンションの上層階が出ている感じです



 LAINEに入力をしているがカンさんからの反応は無い。さっきの俺のように忙しく動いているのかも知れない。とりあえず入力をしておけば後で見てくれるだろう。



タウロ]私もステータス、アイテムボックス、ブクマOKでした

タウロ]帰還スクロール試さなくてよかったです

タウロ]ワイ浜駅は海の中に沈んでいます

タウロ]帰還スクロールが最寄駅なら水中にテレポートするところでした。

タウロ]今のところカンさん以外の方の書き込みはありません、心配です

タウロ]カオるんは電波が通じないか、うっかりでしょう



 そこまで入力をした時に、カンさんからの書き込みが入ってきた。




カンタ]タウさん、とりあえず無事でよかったです


タウロ]カンさんこそ。そちらは水没していないようでよかったです。動けるようになったらカンさんの所に身を寄せさせていただきたいのですが、いかがでしょう?


カンタ]はい。大丈夫です。うちは電気ガス水道が使えます


タウロ]まずは全員の無事を確認してからになりますが

タウロ]皆にメールをしておきます。集まれれば本日の夕方LAINEで話しましょう


カンタ]はい。わかりました。


タウロ]では、夕方に



 LAINEを終了してメールを開いた。


『私とカンさんは無事家族と合流しそれぞれ避難中です。

ミレさん、アネさん、ゆうご君、カオるん、無事でしょうか?

もしもスマホを使える状態なら本日夕方6時にLAINEに集合してください。』


 カンさん含め5人宛にショートメールを送信しておいた。

 夕方まで、またこのフロアで物品収集だ。それとホテルの人間も捜したい。状況を知れる何かがあれば……。





-------------(カンタ視点)-------------



 良かった。タウさんも無事に家族と合流出来たんだな。

 まだ連絡が取れていないのが、ミレさん、ゆうご君、アネッサさんとカオるんか。


 ミレさんは確か埼玉県在住だったはず。職場も県内と聞いた。埼玉は関東でも内陸部だ。海無し県だし津波の心配は無さそうだ。ただ、細かい隕石がどこに落下したのかはわからない。ミレさんもご家族も無事だと良いな。


 アネッサさんは横浜だったはずだ。津波の影響をモロに受けたかも知れない。大丈夫だろうか?

 ゆうご君は北海道……の、札幌か函館、観光地に近いと聞いた覚えがある。北海道の被害はどうなんだろう。


 そしてカオるんは東京は日比谷だ。やまと商事の本部ビルは日比谷公園の近くだと聞いた。今そのビルは、あちらの世界で死霊の森に落ちているのだろうか?カオるんの職場ビルがダンジョンになったのはいつだったか。


 フロアごとの異世界転移とは凄いな。まさか巻き込まれてまた異世界に戻ったりしていないよな?


 何しろあのカオるんだ。うっかり何をするかわからないからな。なるべく早くカオるんを収拾したいが、茨城から日比谷はかなり遠いな。

 交通が普通に動いていても電車で1時間半……いや、うちからだと2時間はかかるか。歩いて行ける距離ではないな。


 今朝、ステータスが表示出来るのを発見して、タウさんから言われていたアレコレを試した。


 自宅もブックマークした。帰還スクロールを使ったら、まさかの最寄駅に飛ぶとは!……最寄りと言っても田舎の最寄りだからかなり距離はあるが、うちから一番近い駅ではある。慌ててテレポートで自宅へ戻った。自宅をブックマークをしておいて良かった。


 ゲームでは帰還スクロールを使うと最寄りの『街』に戻った。

 異世界では、一番近い街の門の外に飛んだ。

 地球、この世界では、最寄駅だった。『駅』がその地域の入り口と言う認識なのだろうか。


 アイテムボックスも帰還前に収納していた物が全て入っているようだ。全てを記憶しているわけではないのだがざっと見てもそんな感じだ。


 この世界の物を入れられるのかも試した。座布団を入れたら入った。

それから直ぐに寝室のタンスに仕舞ってある大切な物をアイテムボックスへ収納した。妻や両親、翔太のアルバムや思い出の品だ。


 全てを収納したいが、家の中がガランとしたら翔太に気が付かれるだろう。翔太には打ち明けるつもりでいるが、切っ掛けが掴めない。

 いきなり「異世界に行って戻ってきた」と言ったら頭がおかしくなったと思われるだろう。


 …………タウさんはどうするのだろう。夕方のLAINE集合の時にでも聞いてみるか。



 昨日は村民会館の避難所に泊まり朝に一旦自宅へと戻った。貴重品と仕事場の道具もアイテムボックスに収納して、また避難所へと向かう予定だ。



「父さーん、着替えって何枚くらいー?」



 2階から翔太が大きな声で聞いてきた。



「パンツと靴下とパジャマのジャージくらいでいい。あと羽織る物も持っていきなさい。何かあったらここへ取りに戻ればいいから」



 2階へ返事を返して、自分も同じような物を用意して小さめのリュックに入れた。

 玄関で待っていると翔太が駆け降りてきた。外に出ると玄関もしっかりと施錠をした。災害時に空き巣が出ると聞く。まぁ、この辺はかなり田舎で顔見知りが殆どだから大丈夫だろうが、念のためだ。



「車で行くの?」



 車庫に向かっていたので翔太は疑問に思ったようだ。昨日は徒歩で行ったからな。



「ああ。通れない場所や道路が割れてる場所はだいたいわかったからな。車で大丈夫なところを通って行くよ」




 避難所まで少し遠いがわざと回り道をして走って行く。途中でホームセンターの前を過ぎた。時間が早いから閉まっているのか、災害のせいで今日は閉まっているのかわからない。後で見に行くか。ついでにブックマークもしておこう。


 さらに遠回りをしてショッピングモールも確認する。モールのスーパーは10時、レストラン街は11時からだが、ファミレスやマツドマルドは朝七時からやっている。この辺に住んでいる者は車でモーニングを食べに出る者が多い。うちもだ。


 しかし、マツドマルドもファミレスも閉まっていた。やはり災害で休業しているのか。まぁマツドマルドはアイテムボックスに沢山入っているからいいけど。



 そして村民会館の避難所へと到着した。

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