第27話 隕石落下の翌日は、まだ災害真っ最中①
----------(タウロ視点)----------
昨夜は何度も揺れに襲われた。その度に水位を確認するため隣のベッドルームの窓から外を覗くが、陽が暮れると外は真っ暗になり全く見えない状態だった。いつ水位が上がってくるかと
妻の
部屋にあったライト(懐中電灯)は
トイレは水が流せなくなったので、娘達はこの部屋のトイレを使うのを嫌がり、いちいち廊下を出て隣のルームへトイレを使いに行った。もちろんひとりで行動しないようにと強く言った。いつ何が起こるかわからない。もう少し状況が解るまでひとりで動くのは避けさせた。
女3人は廊下を出て隣のルーム(のトイレ)へ。俺はその部屋の前で待たされた。
「父さんはあっちのトイレ使って!」
美咲が指差したのは廊下の向かい側のルームだ。
やがてする事がない娘ふたりは
妻はベッドの横にクッションを敷いて壁に背を預けて座っていた。眠っているのかと思えば、俺が向こうの部屋へ行くたびに声をかけて来たので起きていたのがわかった。
「あなた、気をつけて」
「ああ、すぐ戻る」
窓から水位を確認した後、リビングのソファーに腰掛けてステータスを開く。
ブランクスクロールにライト魔法を貼り付けたスクロールはある。部屋を明るくするのは容易い。ただ、今の時点でどこまで家族に話すかだ。もちろんいずれは全て打ち明けるつもりだ。
アイテム一覧をスルスルとスクロールして行く。
俺がやってたゲームでの職業はエルフだった。火属性の剣エルフだ。精霊魔法は幾つか使えるがそれは敵がいてこその魔法だ。災害時には役に立たない。
アイテムボックスの中にはウィズがブランクスクロールに貼り付けて作成したスクロールが入っている。これは異世界だけでなくゲームの時から所持している物もあった。
あのゲームでのウィズは意外と使える魔法を多く所持していた。ただレベル上げや攻略には向かず、それはウィズが辞めていく原因でもあった。
ライトやヒール、エンチャント系などはウィズがブランクスクロールに貼り付けた物を持ってさえいれば、戦う時パーティにウィズが居なくとも困らないのだ。
そう考えるとあのゲーム内でウィズの立場は、まるで下働き…雑用係のようだったな。
レベルが上がらずに置いていかれるウィズが多かったが、結局のところウィズ本来の必要性は高かったのではないかと思う。
テレポートは指輪があるのでウィズに頼らなくとも困らなかったが、ダンジョンで『ライト』は必須だった。
そして現代日本に戻っても、今1番使いたい魔法は「ライト」そして恐らく今後必要になるのは「ヒール」などの回復系魔法だ。
やまと屋の皆には申し訳ないが、今回カオが戻る決意をしてくれて俺は心底良かったと思ってしまっている。
戻ると聞いた時は、異世界でのステータスはこちらでは無くなるだろうと100%近く思っていた。なのでカオのウィズとしての必要性ではなくカオと言う信じられる人間としての必要性を感じてた。
だが実際に戻ってみるとステータスが消える事はなく、ウィズとしてのカオにさらなる期待をしてしまっている。俺は酷い男だな。マルクに恨まれても仕方ない。
カオと合流が出来ていない今は自分の持ち物が頼りだ。アイテムボックスの中のスクロールを確認する。
ライト 283
ヒール 100
テレポート 12
シールド 5
ヘイスト 28
エンチャントアーマー 212
エンチャントウエポン 198
テレポートスクロールは12枚か、テレポートは指輪があるので殆ど持っていなかった。
シールドはカンさんのアース系の精霊の防御魔法の方が強力で時間も保つ。ウィズのシールドは殆んど使っていなかったな。
ヘイストはGP(グリーンポーション、移動速度増加薬)を持っているのでスクロールは使っていなかったし集めてもいなかった。
ヒールも回復薬があるのだが、ポーション切れを想定して100枚のみ持っていただけだ。
こう見ると、多いようで案外少ないな。
ライトとヒールは今後かなり必要になるだろう。特にヒールだ。怪我人の意識がある場合はポーションを自分で飲めるが、そうでない怪我には魔法の『ヒール』が有効だろう。……100枚か。
神託から帰還まで10日しか無かったから余り準備が出来なかった。いや、そうではない。ステータスもアイテムボックスも『無い』と思い込んでいたから貯めなかったのだ。そもそも地球に戻れるとも思っていなかったからな。
そうだ、帰還前の10日間、死霊の森ダンジョンのB2の店舗で『全部買い』をした。あの10日分の物資や食料は、今後生き残るのに大きく役立つだろう。
あれもカオるんのおかげか。
どうせアイテムボックスは無くなると思っていた俺たちにカオるんの一声で、10日間B2に通ったのだ。マッツ、スタガ、セボン、マツチヨ。
一覧で「セボン商品」で検索をかける。ズラリと出てきた商品の数々、コンビニ10日分を持ち歩けるとは何と便利な事だろう。
セボンもだが、薬局のマツチヨはもっと凄い。薬だけでなく生活雑貨も豊富な上に食料もある。流石に衣服や靴は無いが。
動けるようになったら、目に付く店舗から品物を収納した方が良いかも知れないな。
もしも、今後もこの災害が続くなら……。いや、神の言葉はもっと酷い状況を示していた気がする。
「あなた……」
俺が部屋に戻って来なかったのを不安に思ったのか、妻が部屋から出てきた。部屋にあった時計を見るともう朝の8時を過ぎていた。
窓の外は普段の8時過ぎとは思えない暗さだ。曇っているからか空全体が薄暗い。
「ああ、すまない。美穂達は?」
妻に聞くまでもなく、美穂と美咲が妻の後ろから出てきた。
「おとん、お腹減った」
「父さんトイレ行きたい、着いて来て」
「あ、私も行く!」
「私も行きたいわ」
女性3人に逆らえる訳がない。アイテムの確認は一旦終了してトイレの部屋へと向かった。
中に入ったと思った3人が直ぐに出てきた。
「どうした?」
「ダメ、臭い。自分達のってわかってるけど、無理」
「あー、ショック。こんなに臭いなんて。普段は即流すから気づかんかったぁ。私のウンチは臭くないって思ってたわー」
「別の部屋行く!」
俺は苦笑いしながら隣に向かう3人の後ろを着いて行った。
「あ、顔も洗おう」
「化粧水とかあったよね、この部屋の借りよう」
3人ともトイレのついでに
スマホのアンテナが辛うじて立っている!
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