私は普通。だから普通は大切。

 どうも、山田です。

 普通が取り柄の何処にでもいる女子、山田花梨です。

 私は今、文化祭の買い出しに来ております。

 何とあの青野奏太君と来ています。

 買うものが多かったから、途中でふたてに別れて買うことになり、私は速く買い終わったので集合場所で待って居るところです。


「お待たせ」

「おつかれ~早かったね」

「じゃあ買うもの買ったし、学校帰ろっか」

「うん! そういえばだけど、青野くん役あるのに買い出し来て良かったの? セリフとか大丈夫?」


 主役をやる予定だった人がインフルエンザにかかってしまったけれど、急遽青野くんが代役をしてくれることになったのです。

 それが一昨日のこと。そして文化祭は3日後。

 かなり厳しいです!


「あー……それなら大丈夫だよ。もう覚えたし」

「そっかあ……もう覚えた……ってえ!?」

「うおお……びっくりした……どうしたそんなに大声だして」

「いやだって初めて台本見たの一昨日でしょ!? しかも主役だからセリフ多いでしょ!」

「とはいえ10分もない劇だし……」


 衝撃です。

 そういえば青野くんって学校一度も来てないのに学年一位ずっと取ってるもんね……頭良いんだろうなあ……


「あ、車止まってくれた」

「あ、うん」


 信号の無い横断歩道で親切なドライバーさんが止まってくれた。

 すると青野くんはお辞儀しながら小走りで横断歩道を渡っていった。


「にしても青野くんは凄いよね。台本は2日で覚えちゃうし、テストは学校来ずに一位取っちゃうし」

だよ」

「そんなことないよ~」


 少しは誇れば良いのに。

 本当に何てことのないことのように言うもんだから憎むもんも憎めない!


「俺はさ、後悔が大嫌いなんだ。だからいつも出来ることを出来る範囲でやっていたら学年一位を取っていたし、劇の内容も覚えたんだよね」

「見習いたいな、その精神」


 青野くんにとっての普通と、私にとっての普通は全く違うんだろうなということを今思い知らされた。

 だからこそ私は、自分にとって普通のことを自分なりに普通にこなしてきた彼を好ましくかんじた。


「あれ、もう学校か」

「話してるとあっという間だね」


 荷物を持っているし、話しながらだから普段よりゆっくりなはずなのに、物凄く学校が近くに感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一目惚れなんて存在しない。だからこれは恋じゃない。 ハンバーグ @bargarkun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ