子守唄

徒文

子守唄

 無数の星がまたたいていた。


 あんまりきれいで泣きたくなった。


 風がやさしく頬を撫でた。


 おだやかで、涼しい風だった。


 遠くで聞こえるスズムシの声。


 真っ暗でなにも見えない公園。


 深く息を吸い込む。


 枯葉がカサカサと音を立てる。


 世界中からみんな消えてしまって、自分ひとりだけ取り残されたような、そんな錯覚を覚えた。


 そんな錯覚が心地よかった。


 なにをするにもふさわしい日だと思った。


 帰るのが惜しくて、なんとなく立ち止まった。


 わけもなく涙が出そうになる。


 世界のぜんぶが愛おしくて、これからも生きていけるような、今すぐなにもかも終わらせたいような、いつまでもここにいたいような。


 こんな日は、もうきっと二度とこない。


 そう思える秋の日だった。


 家に帰って、もう一度星を見る。


 しかたなくまぶたを閉じて眠る。


 いつもよりちょっと良い夢を見た。

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子守唄 徒文 @adahumi

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