主人公のアッシュ、魔女のアリシア、そしておしゃべりなリスのリッキー。この三人が出会い、一緒に暮らしていく中で生まれる絆の物語。アッシュははじめどこか心を閉ざしているように見えて、過去に抱えた何かを予感させ、物語の序盤では少し切なく映ります。でも、アリシアのちょっと強引だけど根は優しいところに触れ、リッキーの屈託のない明るさに囲まれるうちに、彼の表情が少しずつ和らいでいきます。「ああ、よかったね」と、思わず声をかけたくなります。
普段はクールなアリシアも、ちょっと不器用なところが可愛らしい。薬師として人々を助ける姿や、アッシュやリッキーを大切に思う気持ちが垣間見えるたびに、彼女の温かさに触れて、ほんわりとした気持ちになります。そしてリッキーがいるだけで、物語が一気に明るくなります。お調子者だけど、いざという時には頼りになる、三人の関係を繋ぐ小さなリス。彼らの日常のやり取りはクスリと笑わせてくれるコミカルさがあって、読んでいてとても楽しいです。
世界観も素敵で、魔法が息づく森や不思議な屋敷の描写には臨場感があります。料理をしたり、街へ買い物に行ったり、そういう「普通の暮らし」が丁寧に描かれているのが、この物語のすごくいい点だと思います。ファンタジーの世界に存在する日常を大事にしていると思います。
コメディとして笑える場面がたくさんある一方で、ハラハラする展開や、胸が締め付けられるような場面もあります。アッシュが抱える過去と、彼らに迫る問題。ですがそんな時こそ、三人の絆が輝きます。お互いを守ろうとする姿、支え合おうとする気持ちには「一人じゃないって、こんなにも強いんだな」と感じさせてくれます。
どこかに自分の居場所がある。傷ついたり、迷ったりしても、受け入れてくれる誰かがいれば、人はまた前を向ける。アッシュがアリシアとリッキーと共に新しい「家族」になっていく過程は、まさにそんな希望の物語でした。この物語を読み終えたとき、なんだか胸の奥がじんわりと温かくなるような、そんな優しい気持ちになりました。
読み終わった後も、アッシュ、アリシア、リッキーの三人の笑顔が心に残ります。心が疲れているな、と感じている方はぜひ手に取ってみてほしい。素敵な物語です。