第3話 解放 新しい仲間との出会い

あれから一週間後。

二人の冒険者…剣士のリュートとアーマーナイトのガインがギルドの受付嬢に何か尋ねていた。


「なぁ?このクエストどうなってんの?」

リュートがクエストボードを指さすが受付嬢は首をかしげている。


「ダンジョン内の魔物の一掃クエストですね。クエストを受理はされてる…ん?あれ?誰が進行しているのでしょうか?」

「あ?…どういうことだ?」


受付嬢は「言われてみればこんなクエストあったな」くらいの感覚で先ほど思い出したかのように内容を説明した。

そんな様子を見て二人の後ろにいたガインが口をはさんだ。


「クエストを達成した時と棄権した時、またはクエスト中に受理した奴が亡くなった時に何かしら結果がボードに反映されるはずだ。なぜかどれにも当てはまっていない。これは受理した奴がクエストを放置しているか或いは…最悪の場合だがダンジョン内に囚われている可能性はないか?」


受付嬢はガインの言葉を聞きハッとし、慌てて契約日を確認する…なんと一週間前だ。


そう、このクエストはミラが受けたもので、ミラの呪い着ぐるみの特性のせいで受理主は愚か、クエストの状況まで受付嬢の頭からぽっかり抜け出てしまっていたのだ。


受付嬢の顔がみるみる青ざめていく。

かなり動揺しているようだった。

「ど、どうしましょう!はやく!はやく救助隊を編成しないと!」


そんな受付嬢を見てリュートは彼女の肩にポンと手を乗せた。

「俺らがいくよ。こう見えても腕は立つんだ」


リュートが受付嬢に冒険者ランクを示すプレートを提示する。

そんな自信満々なリュートを見てガインはやれやれといった様子だった。しかしまんざらでもないようだ。

「どうせそう言うと思ったよ。すぐに出発しよう」


二人は救助隊として例のダンジョンに向かった。



それからほどなくして二人はダンジョンの奥まで到達した。

道中はすでにミラが魔物を討伐していたため難なくたどり着けた。


最後の部屋の扉はすでに開いている。

二人は警戒しながら中へと入る。

何かが焼けたような匂いとともに部屋中に充満している強烈な雌の匂い。

そして部屋の最奥から聞こえる女性のすすり泣くような声…何かただ事ではないような雰囲気だ。


「ふぅ…ふぅ…んんぅ…ぐす…」


二人はゆっくりとその臭いと声の発生源に踏み寄っていく。

緑色の女体の形をしたサボテン…ミラを発見した。


(はぁ…はぁ…だれ…え?だれかきた!?たすけて!たすけて!)


「むぐぅぅぅ!!ううぅぅ!!!」


ミラは助けが来たことに感動し、着ぐるみからの性的な責めをお構いなしにうねうねと体をくねらせた。

しかし急にミラが動き出したことで、リュートとガインは武器を構えてしまう。

散乱しているマジックバックと武器、そして異常なまで体液にまみれて汚れ、強烈な臭いを放って蠢いている着ぐるみのミラに警戒している。

そんな中リュートが口を開く。


「おい!あんたモンスターじゃないよな?俺の言葉がわかるか?」

「むぅ!んぐぅ!!」


ミラは大きく頷く。

その反応にリュートは剣を鞘に納め、ミラの体を覆っている毛布のような着ぐるみを掴んだ。

ミラの強烈な臭いに顔を歪める。


「うっ!ひどいな…今助けてやるからな!くそ!破けない!」

「うぐぅ!…ふぅ…ふぅ…んん!」


(だめ!ひっぱると股とお尻のやつが…ひっぱらないで!)


着ぐるみが引っ張られるたことでミラの中に入れられている淫具に責め立てられてしまう。

リュートはそんなミラの状況は知らず、グイグイと着ぐるみを引っ張ったり、ナイフで着ぐるみを切ろうとするが歯が立たない。


「むぅぅ!むぅむぅ!」

「こら!暴れないでくれ!くそ…全然切れないぞ。どうなってんだこれ」


そんな二人の様子を見ていたガインは自分のマジックバックから何か紙切れのようなものを取り出し、近づいてきた。


「おいリュート。おそらくそれは呪いの装備か何かだと思う。物理的には無理だろう。今解呪アイテムで呪いを解いてみよう」

「おう、頼んだぞ」

「ふぅ…ふぅ…んぐぅ…」


ガインはミラの足元に持っていた紙切れを広げた。

そしてミラを抱え上げ、その紙切れの上に乗せた。

するとミラが着ている着ぐるみの背中の部分がぱっくりと開き始め、ずるりとバナナの皮のように着ぐるみが剥けていく。

中から体液まみれでベトベトになった全裸のミラが出てきた。


急にスタイル抜群の裸体の美人が出てきたからかリュートは顔を真っ赤にし、ガインはミラから背を向けてしまった。


「ぷは…はぁ…はぁ…ありがとう…わたし…とじこめられてて…このまま死ぬまで一生ここで…うぅ…うぅぅぅ!」


ミラは泣きながら全裸で二人に土下座した。

そんなミラに対してガインは一枚の大きな布を手渡した。

リュートはただあたふたしているだけだった。


「とりあえずこれで体を隠してくれ。目のやり場に困る」

「うん。ありがとう…」


ミラは布を体に巻き付けると床に散乱している自分の杖を手に取る。

そして頭上に温水の塊を生成し、器用にもそれをシャワーのように使って汚れた体を洗い流した。

マジックバックから替えの防具を装備すると二人に歩み寄り、頭を下げた。


「ごめんね!変なとこ見せて…そしてありがとう!助けに来てくれて」


一週間あんな姿で拘束されていたとは思えないほど割と元気なミラに対して二人は不思議に感じていた。

リュートは未だに顔を真っ赤にしている。

さっきのミラの裸体が脳裏から離れないらしい。


「お、おう!気にするなって。俺はリュート!よろしくな!」

「俺はガインだ。あんた名前は?」

「ミラ…よろしくね」


ミラは二人と握手を交わした。


ぐぅぅぅぅ…


ミラのお腹から大きな音が鳴った。

ミラは顔が真っ赤になってしまった。


「私その…ずっとアレで何も食べてなくて。体調は大丈夫だけど、あの呪いで…その…」


口下手のせいで何が言いたいかわからないミラに二人は大笑いした。


「とりあえず帰って飯でも食おう!ミラの奢りな!」

「わたしの!?じゃあお礼もかねて…」

「おいリュート、冗談も大概にしろ。病み上がりなんだぞミラは」


三人は笑いながらダンジョンを後にした。


『完』

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呪いの装備 脱げない着ぐるみ MenRyanpeta @MenRyanpeta

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