第8話 それから

 思ってもいなかった言葉に驚く。


「蒼は難しいから、あんまりいい人が寄り付かなくってね」


「…………」


 もし、茜さんが協力してくれたらこの恋は大きく飛躍する事だろう。


 わざわざ蒼さんを見なくても好きな物、好きな事、嫌いな物、嫌いな事、全部茜さんが教えてくれるかもしれない。


 けど、それは少し違うと思う。


「……僕が蒼さんを好きになったきっかけは一目惚れなんだ。相手の事もよく分からない中、僕は蒼さんを好きになったんだ、」


 何を僕は言っているのだろう。早く付き合いたいならこんな事を言わずに乗っかっとけばいい物を……


「だから……!」


 違う……それじゃダメだ。ただ付き合いたいだけじゃない。蒼さんを、緋村 蒼という人物をよく知りたい。そして──


「僕はちゃんと蒼さんを知りたい。ちゃんと蒼さんと分かり合いたい……」


 ……──それからちゃんと付き合いたい──……


「ま、まずは友達から……なる!」


 にっこりと笑い、安心したような眼差しでみる。


「良かった……! ただのストーカーじゃないんだね」


 それには思わず苦笑いをうかべる。


「まぁ、良いや私も手伝いぐらいはしてあげるよ」


「とりあえず、この事は内密に……」


「……任せて!」


「い、今の間は何です? 本当に言わないでくださいよ!?」


 正直不安しかないが、大丈夫だろうと信じるしかない。



 ***



「……な、なんでアンタがここに居るんだよ!?」


 蒼さん宅前にて朝から怒鳴られる。


「二人ともおはよー」


「ちょっと茜! なんでコイツがいるの!?」


「昨日も朝会ったじゃん〜たまたまじゃない?」


 ちなみにこれは偶然では無い。当然仕組まれたものだ。


 昨日の別れ際ここに来るよう言われた。来ないと口を滑らすかも……と、脅し付きだ。来るしか無かったのだ。


 腕を強く引っ張られ体制を崩しそうになる。


「何でいるのよ……!?」


 茜さんとの間に何かあるのかとでも思ったのだろう。小声で耳元に話す。腕はだいぶ痛かったが、これで全てが報われた気がする。


「あ、蒼さんも朝来るように言ったじゃん……!」


「言ったけど……!」


 小声で喋っているとニヤニヤとしながら学校に行こうと促される。


「ほら〜イチャイチャしてないで〜」


 茜さんが思っきりお尻を蹴り上げられる。自業自得である。


 蒼さんをあまり煽ってはいけないと知った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

たとえ君がこわくても 天然無自覚難聴系主人公 @nakaaki3150

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る