第7話 放課後

 1時間目 地理総合


 昨日に引き続き今日も地理総合がある。緯度経度などまだまだ中学の時の範囲が被っている所でもあり比較的理解はできるが、


 蒼さんはどうなのだろうか……


 手を組み合わせ、真剣な表情で黒板を眺めている。その姿はとてもかっこよく見える。


 なんかの偉い人のような雰囲気が漂い、只者では無いという感じが出ている。


 そこまで聞き入る内容ではない気がするが、蒼さんは地理総合が好きなのだろうか? 確証のない情報をノートには書きたくない。


 会話のレパートリーを増やすためには沢山書きたいところだが……楽に増やせる方法は無いのか?こうしているうちに誰かが思いを固めて告白してしまうかもしれない……!!


 蒼さんをよく知る人物、仲が良く、僕とでも喋ってくれる人。一人思いつくが、リスクが高い。言いふらす可能性があるし、この状況を説明するのも気が引ける。

 手を組みあわせ、真剣な表情で黒板を眺める。その姿は斜め前の蒼さんとシンクロしていたと、遊星は語る。



 ***



 ──放課後〜〜


 よし、今日は蒼さんは足を組む時は右足が上ということが分かった! 成長だ!


 ノートも書き終わり、バックにしまおうとした時、


「おらー今日サッカーするぞーお前も参加なー逃げんなよ〜」


 後ろ襟を掴まれ引きずられていく。


「ちょ、まっ! 離せ!」


「はいはい、逃げんなー」


 聞かずに引きずられていく。誰かと思いとっさに机の中に投げたノートが少し見えている。


 掃除の人に見つかるかもしれないが、さすがに中は見ないだろうと思い抵抗を緩めた。そしてこの行動をとても後悔する事となる。



 ***



 日が落ち始め暗くなってきた夕方頃。


 誰にも見られて居ないか不安な中、階段を駆け上がる。音は聞こえない。ひとまず安心しながら教室のドアを開ける。


 夕日に照らされ、綺麗にウェーブをかけ、整えられている茶髪が一際美しく輝いて見えた。僕の机に腰掛け片手にはノートを持っている。


 すっかりと見とれていたが思い出す。彼女が手に持っている物を、


「あの、それ……」


 彼女は少し『ぎょっ』としたような表情を浮かべる。


「ごめんね? 落ちてたから、その……」


 気まずい空気が流れる中でも彼女、碧桐 茜は美しい。入学式では蒼さんに目を奪われたが、こうして二人の空間になると納得がいく。


「……好きなの? 蒼の事……」


 こうして口に出されると恥ずかしい。なかなか言葉が出てこない。


「……す、好き……です。」


「ふーーん」


 恥ずかしさを押し殺し言った割には素っ気ない。親友に恋心を寄せる人が現れたというのに、こんなものなのだろうか。


「……協力してあげよっか?」

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