第4話 監禁生活のはじまり
宮野に言われたとおり女子高生を蹴り倒した湊は、その女子高生を助けるふりをしたのか一緒に歩いてきた宮野に「変態!」と怒鳴られ、それから近寄ってきた宮野に「二つ目の角曲がって待っとけ。俺が女連れてくっから脅せ」という指示を受けた。
何をどうするつもりなのか分からないが、とにかく指示された場所で律儀に待っていたが待てども待てども来やしない。
待ちくたびれた湊は自分の家に電話して兄に宮野から何か連絡が来てないか確認したところ、兄の口から「もう帰れ」という宮野からの言づてを聞いた。
オレは置いてけぼりかよ、自分だけいい思いして。
しかし、家に戻ってほどない午後10時に宮野から電話があって、「お前あの女犯りてえか?」というありがたい誘いが来る。
「やりたいです!」
湊は二つ返事だった。
この夜、部屋には小倉と遊び仲間の渡邊泰史(17歳)が来ており、湊は二人を誘って宮野の指定した場所に向かう。
宮野はもう帰ろうかと思ったほど湊たちに待ちぼうけをくらわせてから悠々約束の場所に現れた。
一緒にさらった女子高生を伴っていたが、すでに宮野のお手付きになっていたらしい。
明らかに泣いた後の顔をしている。
しかしこの泣きはらした目の女子高生、古田順子を一目見た小倉と湊は心の中で「宮野さん、グッジョブ!」と思ったようだ。
特に小倉はこの見たことないくらいの美少女を一気に気に入っていた。
宮野に自販機のところまで連れていかれてどうするか相談を持ちかけられるや「さらっちまいましょうよ」と提案する。
さらにその後どこに監禁するかについては湊の家にすることとし、湊も了承。
湊は彼女を蹴り倒した時には分からなかったが、改めて見りゃかなりの上玉なので自分の部屋に連れ込むのは大歓迎なのだ。
おまけでついてきた渡邊も了解し、これから長期間にわたる監禁場所となる湊の家に向かった。
自分を犯した宮野ばかりか他の目つきの悪い奴らまで加わり、その中にはさっき自分を蹴り倒した奴もいる。
どう考えてもハメられているとしか思えないし、これからさらなる危害が加えられる可能性が大なのに、この時どうして順子は逃げたり周りに助けを求めなかったのだろう?
それは宮野にさんざん脅されていたからだ。
宮野曰く「お前はヤクザに狙われているの知ってっか?若いモンがお前の自宅前にウヨウヨしてっぞ。だから匿ってやるっつってんだ」と。
しかも宮野たちから逃げたら、今度は狙っているヤクザに加えて宮野たちからも狙われることになり、そうなったら家族の者に落とし前をつけさせてやるとも脅迫した。
学生手帳などから順子の住所などの個人情報は把握されていたから、やろうと思えば簡単なはずだ。
彼女はヤクザが主人公のドラマ『とんぼ』が好きだったが、リアルなヤクザを知らなかったし、心底怖がっていた。
この宮野とかいう自分と同い年くらいの男が本当にヤクザかどうか知らないが、この物腰といい圧といい、本物であってもおかしくない迫力に屈服していたのだ。
何より家族思いの順子にとっては家の者に手を出されるのが一番耐えられない。
こうした心理に付け込んだ卑劣なやり方により、そして当初は「匿う」という面目で監禁は始まった。
一行は湊の家に着くと玄関からではなく、そばにある電信柱をよじ登って二階へ上がった。
来てしまった。
これからどうなるんだろう、いつおウチに帰れるの?
またさっきみたいなことされたらどうしよう?
不安におののいていたであろう順子は、まさかこれからが本当の地獄だということを予想していない。
そして、自分が18歳まで生きられないことも。
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