ミーシャ2

 洞窟の奥に進むにつれてだんだんと暗くなってきた。松明たいまつに火をつけるとなんとか足元は見える。

 隣のミーシャは入ってからずっと、何かをつぶやいていた。耳を澄ましてみると、

「私ってなんだ。私って……」

 ずっと自分が何者かを考えていた。

 変わった子だなぁ……。だいたいこの子は何歳くらいなんだろう。背丈は俺より少し低いくらいだが、ローブの上からでも分かるくらい胸はそれなりに大きかった。

「そうか」

 彼女がハッと顔をあげてこちらを向いたのに俺は思わず目を逸らしてしまう。

「私は……」

 彼女が何かを言おうとした瞬間、コウモリの群れが一斉にこちらをめがけて飛んできた。

「うわッ」

 とっさに腕で顔を隠した。襲われるかとおもったがコウモリたちは俺たちをすり抜けて、洞窟の入り口に向かって行った。

「ミーシャ、大丈夫?」

「ふぁん」

 彼女は変な音を出したあと、白目をむいて立ったまま気絶してしまった。

「仕方ないか…」

 ここに置いていくこともできないので、ミーシャを背負って奥へ進むことにする。

 彼女の身体は見た目のわりには相当軽かった。彼女の胸のやわらかな感触が背中をおおっている。こんなに胸はずっしりとしてるのに、女の子って不思議だ。

「いや、ミーシャが不思議なだけか」

 俺はそのままコウモリたちが飛んできた洞窟の奥のさらに暗闇へと向かった。

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七つの街 @yuison

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