ミーシャ

 アルベルトからもらった地図を辿っていくと、洞窟のような場所についた。

ダンジョンの横にある看板には、何やら説明めいたものが書かれていた。

「「パール(2)のダンジョン」」

 同時に看板をよむ声が聞こえた。声のしたほうを向くと、透けるような碧色の瞳がこちらを覗いていた。

「あなたも冒険者?」

夏にそっと吹く海風のような声だった。首をかしげると、肩まで伸びた白銀の髪がサラサラと揺れた。

「違うの?」

思わず見惚れてしまっていた。

「いや、違わない」

「ふぅん、一緒にいく?」

彼女は俺を見ているようで、別のどこか遠いところを見ているような不思議な目をしていた。俺が頷くと、彼女は洞窟のなかへ向かって歩き始めた。置いて行かれないように俺も後をついていく。

「俺はトム。君は?」

「私?私は……なんだろう」

彼女は急に止まって考え込んでしまった。わたし、わたし、と一人で何やら呟いている。変わった子だ。

「君の名前はなんていうの?」

「あぁ、名前。私はミーシャ。よろしくねトム」

彼女の差し出した手を握ってみると、氷のようにひんやりと冷たかった。


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