桃の泉


 昔々、あるところに一つの桃がありました。


 ある日、おばあさんは川に洗濯をしに行くと見せかけて、とある山にある泉へと向かっていました。おばあさんはおじいさんとふたり暮らしだったのですが、なかなか子宝に恵まれず悩んでいたのでした。

 おばあさんは、その泉に供物をささげると願いが叶うという噂を頼りにやってきたのです。

 おばあさんは一つの桃を泉に投げ入れました。その桃はおばあさんの家に生えている桃の木の実の中でもひときわ大きいもので、大きさはセパタクローで使うボール(直径13.5~14㎝)くらいありました。

 

 投げ入れてから10秒が立ちました。泉には何の変化も見られません。


 おばあさんがあきらめかけたそのとき、泉が虹色に発光すると――

「そこのお方、あなたが落としたのはこちらの金の桃ですか?それとも銀の桃ですか?」


 泉の女神が現れました。


「いいえ、わたしが落としたのは、ただの大きな桃です」


「正直ですね。では、それは、割ると子供が出てくる大きな桃ですか?」


「いいえ」


「正直ですね。では、こちらの割ると子供が出てくる大きな桃を差し上げます」

 そう言うと、女神は泉の中へ消えていきました。


 おばあさんは大喜び。あまりの嬉しさに踊りだし、その拍子に大きな桃を近くの川に落としてしまいました。 


 桃は川をどんぶらこっこと流れていき、隣村のおばあさん夫婦が拾いました。隣村のおばあさんとおじいさんの家で桃太郎はすくすくと育ち、やがて鬼退治へと出かけましたとさ。


 めでたし、めでたし。 

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