桃太郎の泉 前編


 昔々、あるところに一人の青年がおりました。


 彼は名を桃太郎といい、おばあさんとおじいさんに大変可愛がられて育てられました。

 しかし、実はこの桃太郎、恐ろしく計算高い男だったのです。


 ある日、鬼退治をすることになった桃太郎は、おばあさんに渡された50個余りのきびだんごと弟を連れて山に入りました。

 その山には不思議な泉があり、泉に供物をささげると願いが叶うという噂がありました。桃太郎はきびだんごを3つ、泉に入れました。

 

 きびだんごを入れても泉には何の変化も見られません。


 それでも桃太郎は辛抱強く待っていました。そして、泉が虹色に発光すると――

「そこのお方、あなたが落としたのはこちらの大量の金のきびだんごですか?それとも銀のきびだんごですか?」


 泉の女神が現れました。


「いいえ、僕が落としたのは、粗末なきびだんご3つです」 


「正直ですね。では、それは、食べると力と気力がみなぎり、鬼を殺すことも叶う特別なきびだんごですか?」


「いいえ」


「正直ですね。では、こちらの食べると力と気力がみなぎり、鬼を殺すことも叶う特別なきびだんごを差し上げます」

 そう言うと、女神は泉の中へ消えていきました。


 桃太郎は後ろを振り返ると――

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