詩  「憎まれた さなぎ」

@aono-haiji

第1話  詩  「憎まれた さなぎ」


溶けたほうがいいのか

溶けちゃいけないのか


答えを求めて生まれてきたわけじゃないのに

わたしたちは いつも  

返す言葉を 待たれている



その時

わたしはまだ さなぎだったのに


わたしが口をひらけば それは

「甘えだろ」というにぶい光でおおってくる


そして 次には

「そのままでいなよ」という

面倒くさそうな言葉が

わたしを深くつらぬく


ならば 問いたいよ


わたしは

生まれる前の


わたしのままでいちゃ いけなかったのか


この世界に生まれたわたしだけが

わたしなんだと


どうして決めつけられるのか



わたしが さなぎを破らず

黒く乾き 果ててゆくこと


どうしてそれが 

責められるのか


わたしは 


さなぎでいた時の思いを

手放したくない

それだけなんだ



この世界に生き

ここでしか生きられない 

おまえたちは


ただ選べなかったから

ここにいるんだろう?



いまだに 

さなぎでいる わたしは


おまえらを さばけない


わたしを裁き 自分を選べるのは


わたしだけ



でも


わたしは


自分への裁きを


けして 


おまえらには 教えない


この世界には どうしても 


その価値が


見えなかったから

 

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