第13話  我、魔獣コントローラーを貰う

☆《ジョニー【仮名】の称号》

・日本人(職:農業)

・《先導者チーター》(タネ:野菜)

New・《動物使い(ビーストテイマー)》(飼:魔獣の概念)

☆《所持品》

・茶色の手提げ袋

・財布(13800円)

・ガラケー(圏外)

・野菜のタネ各種(夏野菜) 

﹂旧式育苗箱

 ﹂トマト(アイコ、つやぷるん)

 ﹂ナス(千両ナス)

  ﹂ピーマン(京まつり)

   ﹂キュウリ(四川キュウリ)

   ﹂カボチャ(坊ちゃん)

・軍手

・鎌

・鍬

・スコップ(大)、(小)

・マルチ(マルチング)フィルム×6

・肥し+木くず

・支柱

・ビニールひも×1束

New・ポリ鉢×10

現在→・畑(開拓中)

☆《魔獣》

New・《ホメ猫の概念》


◆◆◆◆


「《ホメ猫》よ、お前ものすごく強かった系?」

「ニャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャ」

ニャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャ

ニャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャャ」



よほど嬉しかったのか三行にも渡り、歓喜の雄叫びを上げている。ゴブリンへのお仕置きという初依頼を達成した我は、都市イーゲルに昼過ぎに徒歩で帰ろうとしたが、村長からの申し出があった。村長から呼び止めだ。まさかとは思うが、――。


我は村長に《イーゲル》へ送ってくれればそれでいいはずだったが、しかし――、



「この度のご活躍には感謝してもし切れません。ゴブリンは、さらっていった家畜を返却してきました。貴公にはどう礼をしていいやら……」


「では、都市イーゲルまで送って行ってもらえないでしょう? お金は払いますので」



「お金なんてとんでもない。これで良ければ、この《先導者》様が下さった家宝も差し上げますので有効にご活用ください」



すると村長はガサゴソと袋に入ったものを取り出して、言った。


それはゲーム機のコントローラーだった。某ゲームのなんとかシリーズのやつだ。


異世界にこんなものを持ってくる同士がいるとはな。それは果てして使い道はあるのか、否である。


「コントローラーですよね?」



「コント……ローラ……? これがこの家宝の正式名称なのですか、わしらは魔獣操縦機と呼んでおりまする。接続した魔獣を手足の動きから業の発動まで操れるそうですが、操る魔獣がおりませぬ」



操縦機、所謂、魔獣コントローラーね。――《ホメ猫》をこれで操作したら新手の異世界格ゲーが楽しめそうだ。でも、接続ってどうするんだろう。


有線? 無線? 疑問は残るが、とりあえず、有難く貰っておこう、。



「村長さん、わざわざ我のためにありがとうございます」


「困ったときはお互い様じゃ。ホッホッホッ、――お助け精神じゃよ」


もしかしたらこの村でも《野菜》を売り込むことができるかもしれない。

それはまたの機会にしておこう。村長も割とジョークが通じて面白い。

ともかくだ、繋がった縁は大事だな。友達は大切にしような。



◆◆◆◆


我は昼過ぎに馬車で《キャロライン村》から都市イーゲルに帰還した。


川沿いの獣道ではなく、開拓された正規ルートを通って帰ってきたのだ。


――大地よ、帰ってきたぞ。


この時期の外気は熱いため、馬車内は、とても快適だった。


《キャロライン村》に帰る馬車を見送り、家もと喫茶店常盤木亭に入るといつも通りの大盛況、……ではなくまばらな人が飯を食べているだけだった。


厨房で調理しているミツハに声をかける。



「今日は人が少ないですね。どうしたん?」


「えっとですね。この時期の毎年の問題なのですが、暑い日はあまり人が来ないの。メニューを変えたいのですが。どうしても肉や魚のみだと在り来たりな料理しかつくれないのですよ」


確かに肉や魚のみだと焼く、煮る、炒める、簡単な調理方法しか思い付かない。

――、やはりこの世界は、何かがおかしい。


かつて我がいた■■という星では、《野菜》は、原始の時代から続く礎だったはずだ。つまりは、人は、常に《野菜》と共に生きてきた。農と文明は深い繋がりがある。


我が《先導者》なら――、


この世界を変えなければいけない使命感が沸き立ってくる。


「では、もうしばらくしたら実を付ける夏野菜を使ってはどうでしょうか?」


我は思い立った野菜を使ったレシピを幾つかメモ帳にさっと幾つか書き殴る。

回鍋肉や青椒肉絲、それにナス揚げなど万能なお子様から大人まで第人気メニュー料理である。


「回鍋肉や青椒肉絲、それにナス揚げとか美味しそうですね」



「野菜、取り入れてくれますか?」


「はい、喜んで」


あ、そういえばと言うように人差し指を顎に当てて、意地悪そうに言った。


「今日のゴブリンの件はどうなりましたか?」


「ホメがさー、拳骨一発いれてやったら、改心したゴブリンが家畜を返しに来たそうだよ」


「ホメちゃん、お強いですねー。さすがです。では私はお仕事の真っ最中ですので」


「邪魔したね。ちょっと部屋で休んでくるよ」


我は、お仕事熱心なミツハの邪魔にならないように、そそくさと前線を離脱した。


◆◆◆◆

自室に戻って、我は魔獣コントローラーを慎重に見てみるが、にどう見てもなんとかシリーズコントローラーにしか見えない。線は付いてないから無線か?

――それともBluetoothか何かで魔獣と接続するのだろうか?


謎は深まるばかりだ。




ベッドに横になろうとしたとき、壁に張り付いているカレンダーらしきものが目に入る。


近づいてソレを見ると、


【春期 15日】


と書かれている。


日めくりカレンダーとかチャチなものではない、デジタル式らしくてスクロールすると次の日が現れる。


しかし、肝心の《年》が書かれていない。っいうか、西暦とかそんなものはないのだろうか。


「いや、まさかな……」


この世界は《野菜》が無かったように《年》という概念がないのではないのだろうか。


ある仮説が頭を過ぎる、この世界は《今》という瞬間が永遠に引き延ばされ続けている。


……のではないかという非:科学もいいところの仮説。


ミツハがちょっと前に言っていたのを思い出す。




『ここの店を立てて十数年なんだよね』


エルフは寿命が長いのか、本当に時が止まっているのか。あるいは果たして、――、


変な考えを捨てきれずにいる我は、気分転換に、裏庭の野菜の成長具合を観察しに行くことにした。

◆◆◆◆

野菜は、芽が出ているどころではない。成長しきって【苗】という段階へと豹変していた。


小さなポリ鉢では栄養がいき渡らず枯らしてしまうところだった。空き地は開拓されて畑となった。しかし、植えるためには、幾つか手順を踏む必要がある。


「危ない危ない、急いで畑に植えないと」


――ハウス作りは来年に回そう、――、ハウスがなくても野菜は作れる。


魔獣コロシアムは、とりあえず優勝はともかく、入賞すればいい。


金貨3枚もあれば活動資金になる。


今はこの夏野菜を実らせないと意味がない。


苗を植えた後にハウスの小さい版である【トンネル】を被せてやらないといけない。


野菜の苗は、支柱で支えてやらないといけない。

――、やることは山積みだ。


とりあえず――、だ。


今は寝よう。ベッドへと転がり込むと、呆気なく睡魔に堕ちる。真っ暗な暗闇は、我の精神を呑み込むかのように、そっと堕とされる。


――ゴブリンお仕置き任務で4時起きだったので眠いのだ。


その日、我はこうして眠りについたのだった。


魔獣コロシアムまで、あと3日。


つづく。



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異世界で、我、畑を耕す☆彡 宮本RINGO @Halley003

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