第12話  我、初めてギルド依頼を発注する


☆《ジョニー【仮名】の称号》

・日本人(職:農業)

・《先導者チーター》(タネ:野菜)

New・《動物使い(ビーストテイマー)》(飼:魔獣の概念)

☆《所持品》

・茶色の手提げ袋

・財布(13800円)

・ガラケー(圏外)

・野菜のタネ各種(夏野菜) 

﹂旧式育苗箱

 ﹂トマト(アイコ、つやぷるん)

   ﹂ナス(千両ナス)

 ﹂ピーマン(京まつり)

   ﹂キュウリ(四川キュウリ)

   ﹂カボチャ(坊ちゃん)

・軍手×2

・鎌×3

・鍬×3

・スコップ(大)、(小)×3

・マルチ(マルチング)フィルム×6

・肥し+木くず

・支柱×10本

・ビニールひも×1束

New・ポリ鉢×10

現在→・畑(開拓中)

☆《魔獣》

New・《ホメ猫の概念》


◆◆◆◆

傭兵のベルリン(男・格闘家)さんから聞いた話では、「金はギルドの依頼で報酬を稼ぐ」と言っていた。《依頼》については、二種類ある。一つは自ら発注する《クエスト型》、もう一方は頼まれる方の《請負型》。


ギルドで扱う《依頼》は、一から十までの難しさの魔獣退治や主婦主夫の家事代行まで何でも勢揃いらしい。


――我は一度、ギルドというものに手を出すべきなのかもしれない。


「日が暮れる間にでもギルド屋に立ち寄ってみるか」


日は傾き始めている。その呟きは空しくも虚空に消えた。

ミツハは、今頃お店の来客用に料理の支度をして居る頃だろう。肉肉肉魚魚肉のオンパレードの豪華絢爛メニューを毎日作ってバリバリ稼ぎまくっているんだろうな。


――働く少女はカッコいい響きだ。



考え事をして歩く足は、何時もに増してやや駆け足――。


ストリートの人々の喧騒をかき分けて、ギルド屋に急ごう。


※【ギルド】とは何か?

 ・ギルド(英: Guild、独: Zunft、伊: Arti)は、中世より近世にかけて西欧諸都市において商工業者の間で結成された各種の職業別組合。


《依頼》とは?

・ギルドマスターから日替わりで受注できる職人仕事。 単に「職人依頼」とも言う。



ギルド屋は、半分酒場(居酒屋みたいな感じ)で昼夜問わずワイワイガヤガヤ騒がしいところだ。自慢話などの英雄譚を語る人や、日々の日常をのんびりと話す輩もいる。


酒は頼めばウエイトレイスっぽい人が運んでくれる。酒場は、大人の来る場所でジュースは出ない。


しかし、頼み方次第ではジュース(ノンアルコールチューハイ)も出るらしい。


ギルド屋の扉を開くと、チャリーンと鈴の音鳴り響く。客が来るのはいつもの光景で、こちらには気にも留めない。カウンターに座る受付のお姉さんに話しかける。いつもニコニコしているのは商売柄なのだろうか。――ツッコミたいが止めておこう。


誰にだって聞きたくない秘密の一つや二つはあるからな。


「依頼を発注しにきたのですが……」



「初めての方ですね。では、ギルド登録を行うので、この書類に必要事項を記入してください。」



【ジョニー(男) 手持ち魔獣:《ホメ猫》】

【得意武器:魔獣召喚】

【強さ:一般人】


「一般の方ですね。今の依頼はこちらになります」


依頼の一覧表を見せられる。

《初心者向け》

・イヌの散歩             銅貨2枚

・垣根の剪定             銅貨4枚

・演劇舞台裏の照明係         銅貨3枚

・皿洗い               銅貨1枚


《中級者向け》

・悪戯ゴブリンをこらしめる       銅貨7枚

《上級者向け》

・ワイバーンの討伐任務         銀貨9枚


《初心者向け》は、日常系が多いのが分かる。誰にでもできるが。やっぱり稼ぎは少ない。

《上級者向け》は、ワイバーンとか竜じゃないか! 《ホメ猫》が消し炭にされかねない。場合によるとどう討伐しろと!?


だが、――ホメ猫はそんな、か弱い《概念魔獣》ではないことをもう少し後になって知ることになるのだが。


《中級者向け》のゴブリンを懲らしめる。正確には討伐、ではないらしい。あくまでも懲らしめると書いてある。



「ゴブリンを懲らしめるとは何でしょうか?」



「あーそれね、近くの村でね、洞窟のゴブリンが現れては、家畜をさらっていく事件が度々発生して村人が困っているのよ。一発ぶん殴って懲らしめてください的な依頼だよ。それ受けるのかい?」



ゴブリンの戦闘力は大した事はないと聞いたことがある。――しかしゴブリンは頭が良いらしい。鬼と魔獣の間で、武器を多用するみたいだが、でもまぁ《ホメ猫》の実力を測るためには丁度いいのかもしれないな。


「その依頼、やらせてくだい‼」


ゴブリン、――それは小鬼でも正真正銘の鬼なのだ。

どんなクエストであろうと【いつなんときも油断してならない】


それはギルドの常識であり、当たり前なのだ。


◆◆◆◆

ギルド屋から前金とレンタル装備(鎖かたびら、剣など)が支給された。


内容は、都市イーゲルから西へ行ったところにある《キャロライン村》に度々現れるゴブリンに痛い目に合わせるという依頼だった。――早朝に家畜をさらいにくるので、夜が明けないうちに早めに出かけるしかない。


家に帰ると、ミツハが夕ご飯の用意をしてくれていたので、揃ってご飯タイム。


夜は早寝早起きで絶好調の体調で向かわなければいけないので、ミツハの酒飲みだべりには付き合わず、さっさと寝ることにした。後になって知るがミツハはあまり酒が強い方ではないとか、聞くことになる。



◆◆◆◆

ゴブリン討伐ではない、正確には懲らしめるだけ作戦だ。


当日は、昨日ストリートで売っていた《朝起きができる漢方薬》を飲んだおかげで快調だ。


《キャロライン村》には、歩きで1時間くらいの場所にある。道はあるが獣道だ。


現在、川沿いを歩けば、到達できる。出現する魔物は比較的大人しいシカやウサギ程度などで襲ってくる心配はない。川沿いをテクテク歩く。テクリテクリと歩いていく。


せせらぎの音だけが聞こえてくる。退屈だな。


――、音楽を聴いて歩きたいがMP3ブレーヤーなど存在しない。


受付のお姉さんが言っていた通り《キャロライン村》には、おおよそ1時間で予定通り到着した。所々に放し飼いのヤギ、ウシ、ニワトリなどが徘徊している。


――いわゆる放牧だ。


その村は、自然と共存しているゆったりとした印象だった。


「えぇっと、《北東の方角からゴブリンが複数現れるから、痛い目に合わせろ!》か。《ホメ猫》でぶん殴ってやるか」


とりあえず、外れの大樹で隠れてゴブリンが現れるのを待つ。時刻は朝5時だ。日の出の時間には、まだ早い。木の茂みに隠れてゴブリンが現れるのをじっと待つこと15分。


僅かな時間が経過すると、茂みの中でゴソゴソと緑色をした人影が現れる。下半身に藁のようなものを身にまとって棍棒らしきものを持っている。


――、ウシにちょっかいを出して連れて行こうとしている。



「《ホメ猫》よ。ゴブリン語は話せるか?」


「ニャー!”#$%&’()」


伝わったのか伝わらないのか分からないが、分からないが要件はホメ猫に伝わったらしい。意外と賢い出来る子良い子。


「いけ、《ホメ猫》!!ゴブリンを瀕死まで追い込め」


「!”#$%&’()!”#$%&’()」



ホメ猫は、一鳴きし、ゴブリン軍団に突っ込むが、ゴブリンの反射神経の方が一枚上手のようだった。ゴブリンは、ホメ猫を囲んでフルボッコタイムのお時間をしようとしている。



「ゴブゴブーゴブ~」


ゴブリンたちの棍棒は、闇雲に突っ込んだ《ホメ猫》の頭部を狙うかのようにブッ叩かれ地面にめり込む。そして、ゴブリンたちが《ホメ猫》を囲んで、集団でお殴りのお時間をやっている。


――集団リンチ。通称、弱いものいじめである。



だが、《ホメ猫》は普通の魔獣ではない。形状は魔獣たが、中身は概念に過ぎない。大半が虚数と呼ばれる影で構成されている。よって、《ホメ猫》に対し全くと言っていいほどダメージは通っていない。


――ゴブリンが幾らボコったところで無意味である。


死んだと思ったと勘違いしたゴブリン共は、ウシにちょっかいを再びかけ始める。



《ホメ猫》のターンはここからだ。地面にめり込んだ《ホメ猫》が這い出てくる。


それは狂気と言っていいほどの殺気を纏っている。そのオーラは、闇より昏し、深海よりも深い。


「ニャーゴゴゴゴブゴー―――――!”#$%&’(」

ゴブリンは《ホメ猫》が生きている事に驚きを隠せないでいる。ゴブリン語で何か《ホメ猫》は言ったようだ。


しかし、ゴブリンが先手を取るかと思われたが、《ホメ猫》の方が断然疾い。ホメ猫は、形状をデカい拳に変えて、一体のゴブリンを頭から拳骨一発。ぶん殴る。


――その名の通り、ゴブリンは気絶した。



ゴブリンの致命傷だったらしく、身の危険を感じた奴らはボスゴブリンを抱えて一目散に逃げかえっていった。我は、ゴブリンを懲らしめた。やったぜ。ホホホ~イ!



◆◆◆◆


後日談。


村長から有難いお言葉と謝礼を貰った他、ギルド屋からの銅貨8枚も稼げたのだった。

ホメ猫にはボーンチキンのステーキがたんまりと与えられて、ご機嫌だ。


つづく。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る