第11話  我、畑、ついに完成す

☆《ジョニー【仮名】の称号》

  ・日本人(職:農業)

  ・《先導者チーター》(タネ:野菜)

New・《殺戮使い(ビーストテイマー)》(飼:魔獣の概念)

☆《所持品》

・茶色の手提げ袋

・財布(13800円)

・ガラケー(圏外)

・野菜のタネ各種(夏野菜) 

﹂旧式育苗箱

﹂トマト(アイコ、つやぷるん)

 ﹂ナス(千両ナス)

 ﹂ピーマン(京まつり)

 ﹂キュウリ(四川キュウリ)

 ﹂カボチャ(坊ちゃん)

・軍手

・鎌

・鍬

・スコップ(大)、(小)

・マルチ(マルチング)フィルム

New・肥し+木くず

New・支柱

New・ビニールひも

現在→・空き地⇒畑(開拓中)

☆《魔獣》

New・《ホメ猫の概念》



◆◆◆◆



「ホメちゃんが切り株を綺麗にしてくれましたね。これで畑と呼んでもいいんですね! 空き地が有効活用できる日が来て私はとっても嬉しいです♡」



ミツハが両手を合わせて嬉しそうな顔を浮かべている。ニコリと笑う君は天使過ぎるぜヒャッハー。

ミツハにもここ数日は色々と手伝ってもらったからな。我も本腰を上げてその働きに見合う良い畑を作らねばと決意を固める。





「では、ここでフェーズ2に移行する! 畑を耕して、ハウスを作るんだ」





「ハウス…? まだやることが残っていたのですね。畑を作ることは難しいのですね」





幸いにも《シュナウザーの迷森》のから採ってきた肥しがある。足りない気もするが、《ホメ猫》を同行させて、再度迷森を攻略すればよい。我には《ホメ猫》が家族として戦友として加わってことは、自信にも繋がっていた。簡単に言えばモチベーションの問題だ。効率が上がったともいう。

――とりあえず、畑を見ていても仕方ないので、《ホメ猫》が土と木くずを混ぜてくれた。



ここからは人間の仕事だ。畑を作るというのは、常に人の手が大切になってくる。それは生きとし生ける者が築きあげた《農》という文明だ。





「ハウスとは、ビニールで作った作物を守る家みたいなものだ。適切な温度を保つことや雨風を防ぐことで、作物をより安全に丈夫に育てることができる」



「ビニールハウスは、作るのが厄介そうですね」

「ある程度の強度のあるものを作らないと強風でダメになってしまうからな」





ビニールハウスに必要な物資を紙に書くため内ポケットからメモ帳を取り出し書き殴る。

書き出してみると意外と大変さを実感できる。っていうかね、異世界で揃うのか疑問に思えるが。



《材料》

・アーチパイプ

・直管パイプ

・農ポリ(農業用ポリエチレンシート)

・防風ネット(鳥獣害対策)

・ハウス用パッカー(留め具)

・パイプ用バンド

・ラセン杭

・針金

・マイカー線(黒いビニールバンド)





農ポリなんてものは、ホームセンターに行かないと無いぞ。パイプとか留め具、針金なら《イーゲル園芸》にありそうだけど。ないものは、どうしようもない、現実を受け入れよう。





「このメモにあるものを探しているが持ってないか? なかったら別に構わないよ」



「針金くらいならうちの倉庫には、ありますね。午後から園芸屋さんを見てきてはどうでしょうか? 店番は私一人で十分ですよ、では、お客さんが来る頃なのでお暇させてもらいます」



「いてらー」

◆◆◆

そそくさと厨房の奥へと消えていくミツハ。今気づいたことだが、栗色の髪はツインテールに束ねていた。その後、ナイスバディな姿が印象的だった。

――、さておき我は鍬を持ち直す。《ホメ猫》に頼ってばかりではいられない。畑を耕すのはニンゲンのシゴトだ。



「さて、こちらは畑でも耕しますか、ハウスはまぁなんとかなるだろう」





前歴からいうと絶望的で本当に訳ワカメ的な状況に陥った時に、暗黒世界もとい現実世界(裏)に強制転位ワープされるということだ。

《先導者チーター》田中三代目にもその都度、お世話になっている。



◆◆◆◆



畑を耕すことにした。肥しをまき散らし、鍬で耕していく。太陽がギラギラと照らす中の炎天下の作業だ。この畑を全面耕す作業は、いつになれば終わるのか。時間は有限、耕すのも有限――つまり耕してれば〚いつか〛は終わると言う事だ。





「これが家3軒分となるときついなぁ……」



耕す作業とは並行して、肥しは、土を混ぜることにより畑の体積を上げていく。

首からカゴを下げるスタイルで一掴みしては、まんべんなく蒔いてゆく。この作業が終われば、空き地はついに畑になる。野菜を育てるに適した肥えた畑がついに出来上がるのだ。





「お昼の時間ですよォ」



高鳴る想いを抱きながら、黙々と肥し蒔き作業に打ち込んでいると、裏口でミツハが呼んでいる。

もう昼食の時間らしい。まぁこの世界では、肉か魚しかないため、いつの日か《野菜》が食卓に並ぶのが楽しみだ。この国の人に《野菜》が行きと届けばいいな。

――これが、《農家》のユメってヤツだ。

◆◆◆◆





昼食のメニューは、やはり肉だった。魔獣の肉を丸焼きにし、輪切りにしたもののようだ。

肉肉肉ミートミートミート――、肉続きだと、たまには野菜も食べたくなる。

この国の人は、栄養が偏らないのか不思議に思える時がある。ミツハは、飯を掻き込むように食べる。



ミツハは、「午後からはお客さんたくさん来るから~」といい、撤退してしまわれた。



俺はというと、二番街の散策ついでに園芸屋でビニールハウス小屋を作るために必要な材料を見に行くことにした。(給料の前借分では、お金が足りないかもしれないが)

メインストリートは、現代のアーケード商店街に近い。左右にお店が展開されている。

――、ふと、街のイベントが貼り出されている掲示板に目が向いた。





【春期20日 魔獣コロシアム大会】

【最大賞金 金貨30枚】

【エントリー資格:強い魔獣を戦わせられる方、参加料は無料】

【※当コロシアムは、殺し合いではありません、公式の戦いという名目のモンスターの合法的な試合です】

【ギルド屋より】



これはこれは――、興味をそそる内容だ。《ホメ猫》の強さもここでなら図れるってものだ。こりぁあ、参加せざる得ないな。無料で参加できるとは、得しかない





「金欠不足解消にはちょうど良いな。幸いにも《ホメ猫》は戦闘力高そうだし、いっそのこと出てみるか」



《ホメ猫》は《先導者チーター》田中三代目のお墨付きのチート魔獣だ。影なのである。影はなににでも変形できる。(たぶん、おそらく、勘だけど)





「今日は15日だから5日後ね」





出場者は先着順で8名まで。トーナメント方式のようだ。――置いてあるペンで出場枠に名前を書き入れる。名前をすらすらと書き込む。だがしかし、ボールペンのインクが切れていて書けなかったので、手持ちの色鉛筆で【名前】と【登録魔獣】を書き込んでおいた。

次の人がインクが切れてたら困るので、そっと色鉛筆を一本置いておいた。





【ジョニー 参加魔獣:《ホメ猫》】



――これで良し。



歩くこと10分と少々。数分と言った方が正しい言い方だ。人ごみを避けるように裏道を通って、園芸屋に向かう。裏道は、人がまばらで、屋台などもちらほらと見かけける。

我はというと、――、

《イーゲル園芸》の戸を叩く。



「らっしゃいませー、この前の方アルネー! ヤサイ作りは順調アルカー?」



園芸屋に入るとチリーンと入店の鈴がなると、女店主のツー・シンユェが出迎えてくれる。





「今日は、とあるものを作るための資材を買いに来ました。それで、これらの資材はこの店で取り扱っているでしょうか?」





カウンターの前で、《ハウス》のメモをシンフェに手渡す。珍しそうなものを見るようにメモを凝視するシンフェ。云と頷いたと思うと考え込んでは難しい顔つきで言った





「何を作るかは問わないアルけど、農ポリとかいう物以外は、似たような物で良ければアルヨ~。you、お金あるアルカー。お高いよー」





紙切れにざっと見積書を書いた紙を見せられると、金貨5枚も必要となっている。資金的に前借分では到底払えない。

――ふと、思いついた。ないものは稼げばいいだけのことだ。魔獣コロシアムに優勝すれば大金が懐に舞い込んでくる。そのチャンス――、掴むしかないだろうよ。





「では、五日後にまた来ますね。魔獣コロシアム大会の賞金で払いますよ」



「イケてる魔獣持ってらっしゃるのでアルネー。でもでも、大会舐めるのよくないアルヨー。バケモノぞろいアルヨ。前回の優勝者は参加者を食ってしまった大食い巨大ワニだった或るアルヨ」



「ご忠告わざわざどうも。今日は、ポリ鉢を幾つか買いに来ました」



【ポリ鉢】とは?

(ポリエステル鉢)、ホームセンターで苗が売ってるときについているアレの鉢である。



「10個で銅貨3枚アルヨー」





銅貨3枚を手渡し、ポリ鉢を受け取ると、園芸屋を後にした。

大食い巨大ワニとかバケモンだ。《ホメ猫》のステータスの底上げを考えないといけないかもしれない。





つづく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る