第10話 我、殺戮使い《ビーストテイマー》になる
☆《ジョニー【仮名】の称号》
・日本人(職:農業)
New・《先導者チーター》(タネ:野菜)
New・《???》(飼:魔獣の概念)
☆《所持品》
・茶色の手提げ袋
・財布(13800円)
・ガラケー(圏外)
・野菜のタネ各種(夏野菜)
﹂旧式育苗箱
﹂トマト(アイコ、つやぷるん)
﹂ナス(千両ナス)
﹂ピーマン(京まつり)
﹂キュウリ(四川キュウリ)
﹂カボチャ(坊ちゃん)
・軍手
・鎌
・鍬
・スコップ(大)、(小)
・マルチ(マルチング)フィルム
現在→・空き地⇒畑(開拓中)
☆《魔獣》
New・《ホメ猫》
◆◆◆◆
目を覚ますと、木製の天井が視界に入ってきた、つまり我はベッドの上だということだ。
こういったことが起きるのは、現在二回目である。一回目は酒で中毒を起こしたのが原因だということはミツハから聞かされた
前回と同じように隣の椅子では、すぴすぴとミツハが寝ている。今度は起こさないように、そっと起き上がり、部屋から抜け出す。――外へ出ると朝焼けが我を包み込む。
《ホメ猫》に殺されかけた瞬間、我はどうなったんだろうか。あの気味が悪い現実世界もどうやら夢ではないらしいことも二回目の体験で分かってきた。――ならば、
「《ホメ猫》よ、出てこい」
ニャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン、
と、その瞬間に辺り一面が暗闇という漆黒の闇に包まれる。けたたましい声が天から響き渡る。そして一筋の稲妻が落ちるかのように降ってくるソレは黒い猫の影。
前はイヌっぽくなかったか?
何事もなかったようにソレ――
《ホメ猫》は目の前にいた。
裏口の戸がバタンと《大きな》音とともに開かれる。飛び出してきたのは、この
大の字で立ち尽くして、《殺戮動物》だったもの、《ホメ猫》の存在にたじたじに驚きを隠せないこの後様子は、我しか見たことはないだろうか。
「何事―っ!? え、ジョニーは《殺戮使い(ビーストテイマー)》だったの?」
ミツハから《殺戮使い(ビーストテイマー)》というあだ名を進呈された我は、なんともフクザツな気分なった。
それは、《先導者チーター》と《殺戮使い(ビーストテイマー)》、あまり持っていて便利じゃないユニークスキルだった。
◆◆◆◆
ごろにゃーん、と《ホメ猫》ひっくり返り、腹を見せては、座り込んだミツハに甘える。
外見はやはりどうみても黒い影がひゅうひゅうと禍々しい煙を上げる躰である。
目は白目だ。
「ミツハさん、その《殺戮使い(ビーストテイマー)》とは何ですか……?」
右手人差し指を立ててまるで自らの武勇伝を語るかのように言った。
そしていつもの調子で語り始めた。《概念魔獣》と呼べる神の獣として有名な逸話を自慢げに話し始めた。
「《概念魔獣》は人に懐かないことで有名なんだ。《概念魔獣》は死ぬことはない。エネルギーを使い果たしても触媒があれば現界出来る。仲間にするにはその《概念》っていうものを手に入れなければならないらしいの。らしいというのは、《概念》は《概念魔獣》を捕まえる大切な要素なの。それを手にしたのはこの国でごく僅かだから前代未聞なんだ」
ガイネン、がいねん、《概念》ね!我は《概念魔獣》というとんでもないものを仲間にしてしまったのだと、つくづく反省する。命を落とし掛けたのも事実だ。反省会レベルに匹敵する。そして更に首を傾げつつ、ミツハのきちんと声を聞き取る。
「それでね、《ガイネン》を壊されなければ、仲間になった《殺戮動物》は何度でも蘇るっぽいよ。それが《殺戮使い(ビーストテイマー)》ですよ‼」
納得。《殺戮使い(ビーストテイマー)》ってかなりパワフルなんだね!――その時、
パッと頭の中で何かが閃いた。もしやと思うが、
「《ホメ猫》、来いッ!!」
ゴロゴロしている《ホメ猫》は、その言葉で我に返ったようにこちらに向かってくる。
しかも、空中を飛んでやってきた。ミサイルの如し音速のスピード《マッハ》だ。
「ついて来い」
「!”#$%&!”#$%&!”#$Ii’\、 ――にゃーん」
記号じみたコトバと動物性をもった鳴き声。空き地へと通ずる道を通り、雑草を抜いた空き地。もうじき畑となるが切り株が邪魔している。
それは現実世界(裏)を見たことにより、垣間見た《真理》というものだった。
――これが対価交換というヤツか。
「《ホメ猫》、貴公に命ずる。切り株を撤去せよ。なるべく短時間で済ませよ」
【!”#$%&’()!”#$%&’()!”#$%&’()!”#%&’()!”#%&’()io!”#%&’!#%&’()!”#$%&’】
意味の分からない記号の鳴き声を絶叫すると、その後は、
――予想を遥かに絶していた。
《ホメ猫》は躰の形状を、ドリルに変えると、ウィィィィィィィィンと機械音が鳴り響く。
空中の《ホメ猫》が空中からその先端のドリルの刃先で切り株を削り粉に変える。
一部始終を見ていたミツハは、「すっごーい」他、喚声を上げていた。
《ホメ猫》は、詰まる所の万能猫だった。もはやハナマルをプレゼントしてあげたい。
しかし、いくら早いとはいえ《ホメ猫》は一匹しかしない。
その切り株の根まで削り粉にするには、多少の時間がかかっても致しかない。
見積もって半日ということだ。後に聞くが、ベルリンとチワワの《シュナウザーの迷森》の攻略記だが、我が《殺戮動物》に殺されたのではなく、《殺戮動物》こと《ホメ猫》の躰を粉々に粉砕。
後に我は気絶したらしい。
その気を失った我は、ベルリンに担がれてベッドまで運ばれたらしい。
事実は、実に都合よく改変されていた。
その間にギルド屋&
◆◆◆◆
「あの黒い魔獣を仲間にしたんスか、《ホメ猫》っていうんスか? 聞いたことのない名前の魔獣ッス!お礼なんていいッス、あのスタイルのいい姉ちゃんに銀貨2枚もチップでくれたッス」
スタイルのいい姉ちゃん……? ミツハのことか、まぁ可愛いとは思うがな、
◆◆◆◆
家に帰ると、宅配便の馬車が止まっていた。
ミツハが対応してくれている。しばらくして、宅配便のニッコリおじさんはこちらを振り向いては《boy、good-bye》と言い、笑顔で立ち去って行った。
笑顔が似合う紳士なニッコリおじさんだった。ニッと笑ったその口から前歯が綺麗に歯磨きされているのが分かる。
「ジョニー宛みたいよ。■■三代目っていう人からの贈り物みたいなのね」
三代目と聞いて、あの暗黒世界の《先導者》田中三代目しか思い当たらない。現実世界(裏)では意味不明なことを散々抜かすが、《感謝はしている》
ぎっちりと包装に包装を重ねた段ボール箱は、結構重い。開封していく動作すら面倒に思えてくるのは致しかない。何重目かの包装を引き剥がすと、ガムテープで固定されている。
――急いでガムテープをパリバリと引き剥がす。
「ええっと【支柱】に【マルチ】【ビニールひも】だ」
どれも暗黒世界で買ったものだ。差出人は《■■三代目》と書かれている。間違いなく《先導者》田中三代目だろう。伏字にする意味はもはや、ないと思うがアレはアレで存在がこちらの世界には不都合なものなのだろうか。否である。それは田中さんが判断することだ、我が兎や角いう資格は無い。むぅ。
「《■■三代目》って誰なのですか?」
「あ、ええっと、ちょっとした知り合い、さ。記憶が失う前、のね」
「変な名前の知り合いですね」
バレたらヤバそうなので適当に誤魔化す。
「そういや《ホメ猫》はどうなりましたか?」
「ホメちゃんはねー、さっきお仕事が終わったみたいで、縁側でお昼寝してますよ。そして、切り株全部撤去です」
《ホメ猫》のホメちゃんねぇ。まぁ良いともいえないが悪いセンスでもない。無難に言って「ネーミングセンスゼロ」と言ったところだろう。ネーミングセンスにはプラスもあるがマイナスも当然ある
ミツハはVサインを取り、自慢げだ。3時間足らずで《ホメ猫》はやってくれたのだ。
たったの3時間で切り株を削り粉に変えてくれたのだ。
木くずは、肥しと混ぜると、丁度良く栄養がある【肥料】になる。畑に肥しを散布すると、木くずと肥しが混ざり合って、作物の成長を助けてくれる。《シュナウザーの迷森》で手に入れた肥しと混ぜて、畑を作るぞ。
――ああそうだ、忘れるところだった、縁側の《ホメ猫》に声をかける。
「ほら、お前が好きそうな魚の丸焼きを買ってきたぞ」
「ニャァァァァァァァァァァァァァァァァァァン」
魚の丸焼きを、《ホメ猫》に差し出すと、ひと鳴きし、魚を咥えて、我の身体に入っていった。
優秀すぎる猫とは、このことだ。まさに万能猫、ヒャッハーだぜ☆
《ホメ猫》のホメちゃん、便利すぎて可愛く思えるある日のこと。夏が到来する前のある日のこと。
つづく。
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