第13話 二人のこれから

「あぁー…………」

 部屋に入ってすぐ、ベッドにダイブした。

 ボスンという音と共に、ベッドの上にあるぬいぐるみ達が跳ねて、少なくない数が私に覆い被さる。

「なんで疲れてんだ?」

「いや、なんでもー……」

 お母さんめ……余計な体力を使わせやがって……

「そうか。」

「それより大野くんなんで立ってるの?」

 私が部屋に来た時点で立ってたし、もしかしてずっと!?

「え、いや……だって………」

「ベッドとか、そこの椅子に座って良いんだよ?」

「えっと……すまん、女子の部屋に来るの初めてで緊張してる。」

「ソッカー。」

 はあぁぁぁぁ!?なんだその仕草!可愛いが限界突破だわ!片手で口元を隠して、斜め掛けバックの紐をもう片方の手で掴んでいるだと!?

 あぁぁぁぁー!!!!隠し撮りしたいぃー!

「フゥ。この部屋の主たる私が言っているんだよ?座りなさい?」

 内心を落ち着かせて大野くんに提案した。

「そ、そうだな。なら遠慮なく。」

 そう言って大野くんはタイルが敷かれていない硬い床にちょこんと正座した。

「え………」

「え?」

「もう!大野くん!こっちに来なさい!」

 私はそう言ってベッドをポンと叩いた。

「えぇぇ……」

「ほら!」

「うむむむ………」

「こうなりゃ実力行使じゃあ!」

 私はそう言って大野くんを引っ張ってベッドの上に座らせた。

「すまん、迷惑かけた。」

「いいよ、私は気にしてないから。」

 全部可愛かったから、カメラ設置してもう一回やりたいくらいだよ。


「えっと、じゃあ、家に来たのは良いが……何するんだ?」

 なんとなく申し訳ないと思ったのか、大野くんが尋ねてきた。

「もちろん!ゲームしよ!」

 有名なキャラクターが出てくるパーティーゲームのカセットを見せた。

「いいね。」

「大野くんはやったことある?」

 私はゲーム機にカセットを挿し込みつつ尋ねた。

「あるぞ。まぁ、二代ぐらい前のやつだけど。」

「そっか、じゃあ楽しもー!」

 私はゲーム機のリモコンを手渡した。

「おう。」

「………………」

「なんだよ。」

「別にー。」

 もうちょいノリよくしても良いのに。ま、そこまで気にしてないけどね。


「ステージ何個かあるけどどれがいー?」

「あ、あれ知ってる!」

「ホント?じゃあこれにする?」

「そうだな!」

 大野くんが嬉しそうで私もついついにやけてしまう。

 いかんいかん、これは真剣勝負!


「コンコンコン。」

「ん?」

「あぁ、お母さんだ。手が塞がってる時は口で言うんだ。」

「なるほど。」


「はぁい。」

「これ、二人のお菓子ね!大野くんの好み分かんなかったから取りあえず全部持ってきたわ!」

「え、ちょっ、多いって!」

「好きなの食べて。でも夜ご飯も食べれるぐらいよ?それじゃ、大野くんゆっくりしてね~。」

「はい、ありがとうございます。」

 お母さんは満足そうに降りていった。

「ちょっと!まっ……大野くん!手伝って!」

「よっしゃ、任せろ!」

 そう言うと、大野くんはお菓子を全て持ち、スムーズに机に置いた。

「わあ。」

「さ、速くやろうぜ!」

 大野くんは私を手招きしてワクワクが抑えられないようだった。

「うん!」

 イケメンかよイケメンだったわ。そして可愛えぇ。


 私の頭の中が荒れに荒れたため。

 ~ダイジェスト~

「よし、じゃあ一試合勝ったら、負けた人にお菓子を食べさせてもらうってのはどうだ?」

「え!?それって………」

「たまには恋人らしくするのも良いだろ?」





「うおぉぉ!サイコロォォ!一マス足りなぁーい!」

「はい、俺の勝ちー。」

「クッソォォォォォ!」

「女子が出して良い声じゃなくて草。」





「今度こそォ!リードしてるもんねー!」

「じゃ、アイテムで奪うわ。」

「っ!?せっ、殺生なぁ!」





「フッフッフッ……今回は私が圧倒的な有利ィ!これは一位を頂き………ありゃ?」

「自分で革命マス踏んでて草。一気に最下位だな。」

「うせやろ!?」





「今回は僅差!だけど勝つのは私!」

「むうぅー微妙だなぁ………」

「は?ボーナススターなんで全部大野くんな訳!?」

「お、ラッキー。じゃ、俺の勝ちだな。」

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!」





「全勝ちしたの初めてだわ。」

 大野くんが笑いながらお菓子を食べる。もちろん、私が食べさせた物で。別に大野くんに食べさせるのが嫌なわご褒美です!でも、私もあーんして欲しかったなぁ。

「うぅ………」

「……あ。」

「どうしたの?」

「この味嫌いなやつだったわー、てことではい。」

「?」

「口開けろ。」

「?……あ。」

「あーん。」

「っ!?!?!?」

 お、大野くんのあーん……脳が喜んでいるよ………

「ほら、元気出せよ。」

「うん、げんきでたぁ。」

「なら良かった。」

 嫌い味とか言ってたけど、さっき普通に食べてたくせに。ホント、優しいなぁ。



「二人ともぉ!そろそろご飯でーす!」

 下から大声でお母さんの声が聞こえてきた。

「はぁーい!

 行こっか。」

「お、おう、そうだな。」

 大野くんが少し緊張し始めた。

「大丈夫だよ。大野くん、…………多分。」

「不安になるようなこと言わないでくれよ………」



「はぁーい、二人とも手を洗って座ってくださーい。」

 そう言われ、二人であぁ、と呟いた後洗面所で手を洗ってきた。

「余り物でごめんねー!」

 そう言って出されたのはカレーとコールスローだった。

「いつも通りだね。」

「当たり前よ!取り繕ったっていずれボロは出るものよ!だったら最初からありのままを見せるべきだわ。」

「……」

「何?」

「お母さんがマトモだ………!」

「ちょっと葉利菜!どういう意味よ!」

「ふふ。」

 私とお母さんのやり取りで大野くんがクスリと笑った。どうやら緊張は解せたみたい。

 私とお母さんはグータッチをした。




「「ご馳走さまでした。」」

「はぁーい。遅くならない内にお風呂に入っちゃいなさいよぉ!」

「はぁーい!大野くん、リベンジだ!」

「お?俺だって連勝記録伸ばしてやるさ。」






「つ、遂に………勝った!!!!」

「あぁー、あと一歩だったんだがなぁ。」

 私はWinと表示された画面に向かってVサインをした。

「ふっふー!さぁ、私にお菓子を!」

「その前に……いいか?」

「なぁに?」

「………うっうん!

 今ってお試し期間だよな?」

「ん?あぁ、そうだね?」

「それで、ずっと考えてたんだ。それで、やっと言う気になった。」

「何を?」

 そう返すと、大野くんが私の前に跪いた。

「俺はお前のことが好きだ。付き合ってくれないか?」

 大野くんが私に向かって手を出す。つまり、今の言葉も私に対して…………!

「え……あ………」

「すまん、嫌だったか?」

「い、嫌じゃない!嬉しい!もちろん付き合う!」

「そっか………」

「でも、ごめん!今、ど、動悸がヤバイから………お風呂行ってくる!」

「あ…」

 私は逃げるように脱衣場に逃げた。


「ハァハァ……まだ心臓がうるさいや………」

 これで私と大野くんは正式なカップル……!

「ふふ、やった!やった!」

 私は小躍りしながら服を脱ぎ、冷水シャワーで身体を冷やした。

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私の好きであなたを絆す 麝香連理 @49894989

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