第27話 スマホ
俺は即座をスマホを向けると勇者ちゃんに向けると。
「光の矢よ! ホーリーアロー!」
光属性である矢を魔法で打ち出した。
だが光の矢は勇者ちゃんに直撃してあっさりと霧散してしまう。見た感じダメージもゼロだ。
「弱い、弱いな! お前ごときの魔法では私を傷つけられはしない!」
「確かにその通りだな。でも黙ってやられるわけにはいかないんでね! ホーリーアロー!」
また同じようにホーリーアローを打ち出す。だが次はスマホの電源をつけてライトを起動しながらだ。
さてこの世界の魔法の性質を覚えているだろうか。油を持って火魔法を放てば火力が上がる。
ならば光を放つモノであれば光魔法が強くなるはずだ。
俺の光の矢は先ほどの倍以上の大きさで、勇者ちゃんに襲い掛かった。
「そんなものは効かなっ……っ!? ダークシールド!」
勇者ちゃんは闇の光による壁を作り出して、ホーリーアローは防がれてしまった。
……チッ、まともに当たったらそれなりに痛手を与えられたのに。
「貴様……私を油断させるために、一つ目のホーリーアローは加減して撃ったな! 貴族のくせに卑劣な!」
「こんな程度で卑劣だなんて笑わせるなよ。切り札はとっておくものだぞ」
そんなことを言いながらスマホを見始める。
さてこの世界はゲームで勇者ちゃんは敵のゲームキャラだ。そして俺たちの行動はダイレクトに現実世界に影響を及ぼす。
ならばゲームを攻略する時、最初にやることは決まっている。
どうやらこの世界でもネットはつながるようなので、さっそくディアボロス・クエストの攻略ページを検索だ。
えっと闇落ち勇者ちゃんは……おっとあった。ふむふむ、近接も魔法も優秀で厄介だが、物理攻撃と特定のスキルが弱点だそうだ。
俺はスマホのカメラを起動して闇落ち勇者ちゃんを撮りまくる。
そして彼女のかなり露出度の高い姿をスマホ画面に写して、勇者ちゃんへと見せつけた。
「さて勇者ちゃん。君は今の自分の姿を少しは恥ずかしいと思ってるよね?」
「……」
「君が負けたらこの写真、多くの人に見せるけどいいよね?」
「……殺す! 闇の槍よ、彼の者を穿て! ダークランス!」
勇者ちゃんは怒り狂って闇で構成された巨大な槍を、空中に出現させる。狙いは俺……じゃなくてスマホのようだ。
勇者ちゃんの弱点。それはお色気系スキルだ。
何故かファンタジーRPGでよくあるタイプのアレが、闇落ちした勇者ちゃんには弱点なのだ!
「ホーリーシールド!」
俺は光の盾を出現させて、飛ばされてきた闇の槍を防ぐ。
残念ながら盾は数秒で粉砕されたが、その間に槍の進行方向から逃れていたので避けれた。
その隙に俺はミアレスちゃんの元へと走る。勇者ちゃんが冷静さを保てていない今がチャンスだ。
「ど、どうしましたスレイン様!?」
「ミアレスちゃん! 悪いけどこのスマホを預かって欲しいんだ」
「ええっ!? あの人、このスマホが狙いなんですよね!?」
「大丈夫だ。このスマホを持って光魔法を放てば威力が上がる。ミアレスちゃんの腕前なら勇者相手でも戦える!」
俺の光魔法を多少強くするよりも、ミアレスちゃんの魔法を強化したほうが間違いなくいい。
他にも理由はあるがなにせ俺がスマホを持つメリットがあまりないのだ。
「わ、わかりました!」
ミアレスちゃんは意を決したように俺からスマホを受け取ってくれた。
「じゃあそのスマホを勇者ちゃんに見せびらかして、ついでに煽ってくれると嬉しい」
「そんなの絶対ブチギレますよ!?」
「いいんだ。相手がキレてくれた方がやりやすい」
「わ、わかりました! やればいいんでしょう!?」
ミアレスちゃんは叫ぶと同時に、勇者ちゃんに向けてスマホを見せびらかす。
「こ、こんな恥ずかしい恰好して恥ずかしくないんですか! みんなに見せてやりますよ! こんなのが王都を襲ってきた犯人だって!」
「ダークランス! ダークランス! ダークランス!」
勇者ちゃんは怒りの咆哮と共に闇の槍を連射し、ミアレスちゃんはそれを光の盾で防ぐ。
スマホで光魔法の威力が上がっているおかげか、盾は割られていない。 俺はパリンと割られたのになあ。
さて勇者ちゃんはもうスマホしか見えておらず、俺のことは眼中に入っていない。そりゃそうだろうな、向こうからすればスマホは武器的にも恥的にも厄介だし。
今ならばスキを突ける。俺は一気に勇者ちゃんへと肉薄した。
だが勇者ちゃんは俺の方をちらりと見て、またすぐにミアレスちゃんの方へと向き直る。
「ふん! 今の貴様など恐れるに足りん! あの強化装備がないのだからな!」
やはりスマホを持っていない俺のことなど眼中にないようだ。
なるほどなるほど。確かにその通りである。なにせ俺が普通に魔法を撃っても彼女にキズ一つつけられなかった。そりゃ無警戒になるよな。
俺はアイテムがなければただのモブ雑魚。弱いのだから。
なので俺はコッソリとポケットから二台目のスマホを取り出した。今のスマホの前のやつだ。
「光の矢よ。ホーリーアロー!」
光の矢は勇者ちゃんの腹部に向けて打ち出されるが、彼女はまるでこちらに興味を示さない。
そして光の矢は勇者ちゃんを貫いた。
「がっ……な、なっ……なぜ、貴様がそれを持って……」
勇者ちゃんは今にも倒れそうになりながら、驚愕の目で俺の持っているスマホを見つめている。
仕方ないだろう。勇者ちゃんからすればスマホは超強力なアイテムだ。まさか二台目もあるとは思えないだろう。
実際は地球では履いて捨てるほどあるのだが、そんなこと考え着くわけがない。ちなみにこれでもダメだったらさらに昔のスマホや、なんなら自宅用のタブレットもあったりする。
「言ったじゃないか。切り札はとっておくものだと」
「く、そ……卑怯、な……」
勇者ちゃんはバタリと倒れたのだった。
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スマホ一台しか持ってない人の方が今は少ない気がする。
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