土曜日のダンサー!

崔 梨遙(再)

1話完結:約800字

 僕が30代の前半の時。


 何回か行ったフィリピンパブ。知人が雇われ店長をやっていた。ホステスさんはいろんなタイプの女性がいた。フィリピンの女性は色黒な人も色白な人もいる。そこのナンバーワンホステス、アイリスと土曜日の昼間にデートした。アイリスは自分の店を持つのが夢で、長身のダイナマイトバディ、顔は彫りの深い美人だった。肌は色黒でスベスベしていた。公には31歳だと言っているが、本当は36歳だということを僕は知っていた。


「何を食べたい?」


と聞いたら、


「蟹」


と言われた。蟹を食べた。フィリピンの女性は、蟹を食べさせたら機嫌が良くなるのかもしれない(多分)。昼間から酒を飲み、アイリスはほろ酔い。上機嫌だった。


 土曜日の白昼の繁華街。スゴイ人混み。そこで、アイリスはいきなり踊り始めた。


「ちょっと待って、なんで踊ってるの?」

「今日は気分がいいの。それに、私はダンサーだから」


 いやいや、僕の仕事は営業だったが、気分がいいからといって繁華街の人混みの中で営業はしない。ダンサーだから白昼の繁華街で踊る? 意味がわからない。通行人がジロジロ見る。その視線が痛い。目立つから踊るのはやめてほしかった。


 とはいえ、他人の振りをすることも出来ず、アイリスが踊り終わるまで僕はその場に立ち尽くした。



 でも、我慢したかいがあって、その後ちょっといいことがあった( ← あったんかい! )。しかし、疑問に思う。店のナンバーワン・ホステスが、常連でもない僕の誘いにどうして乗ってくれたのだろう? 気に入られていたのだろうか? まあ、良い思い出をいただいた。感謝している。踊るのは辞めてほしかったけれど。



 ちなみに、アイリスはその後、自分の店を持つことが出来た。その後のことは知らない。







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土曜日のダンサー! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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