僕の愛車!
崔 梨遙(再)
1話完結:約800字
僕は若い時にも、交通事故に遭っている。残業続きで疲れていた、というのは言い訳かもしれないが居眠り運転をした。ハッと気付いたら視界いっぱいが大型トラックだった。急ブレーキを踏んだが、間に合わなかった。
仕事の帰りだったから僕の後ろを先輩が走っていたのだが、先輩は(崔は死んだ)と思ったらしい。それだけ、派手な事故だった。
ところが、僕は無事だった。トラックの下に(トラックは車高が高いから)車体がすっかり入り込んで、ルーフがめくれ返って、車はオープンカーの出来損ないみたいになっていたが生きていた。
ぶつかる瞬間からことが収まるまで、長い時間に感じた。そういう時、回りがスローモーションに見えると言うが、僕の場合はスローモーションではなくストップモーションだった。カシャ、カシャ、カシャ、カシャとシャッターを切るような感覚。フロントガラスががバリン、バリン、バリン、バリンと割れていくのが見えた。だから僕は、助手席に寝そべった。
そして、自分で歪んだドアを開けて外へ転がり出た。
後ろを走っていた先輩は、血まみれで死んでいる僕を想像していたらしく、僕の自力脱出を見て安堵し、ようやく車を降りたとのことだった。
「崔、大丈夫か?」
「ちょっと待ってください」
僕は全身をチェックした。かすり傷1無かった。
「無事です」
そこへ運良くパトカーが通りがかったので、事故証明などはすぐにとることが出来た。
「新車だったのに、廃車ですわ」
「まあ、諦めろ。車両保険で別の車を買えや」
レッカーで運ばれていく愛車を見て、僕は悲しかった。僕の身代わりになってくれたような気がして、急に車に愛着が沸いた。
「先輩、僕、あの車を修理してまた乗りますわ」
「買い換えた方が安いで」
「お金の問題じゃないんです。あの車に、また乗りたいんです」
1ヶ月後、修理された愛車が僕の元へ返ってきた。僕は結局、その車に7年間乗った。安くて不人気な車種だったが、僕は大好きな車だった。僕は愛車と共にいろんな道を走った。愛車と一緒に沢山の思い出を作った。
僕の愛車! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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