第12話
「お兄ちゃん、誰が来たのって…本当に誰?」
料理を終えたのか少し慌てた様子で玄関へとやってきた音暖がそう言う。本当に誰か分かっていない様子でやっぱり覚えていないようだ。
もちろん俺も最初彼女の見ただけでは分からなかったし、仕方ないと思う。
それにしても目の前に立つ笑顔の彼女は本当にあのユウなのだろうか。昔の彼、じゃなくて彼女は今のように活発な性格ではなかったはずだ。
もっと大人しい子で、鬼ごっことかかくれんぼのような身体を動かす遊びよりもおままごとのような家でおもちゃを使って遊ぶようなことが多かったと思う。
「あ、もしかしても音暖ちゃんだよねー。久しぶりっ!ユウだよ!」
「え、ユウってあのユウなの?!」
「そうだよ、覚えててくれたんだね!」
「当たり前でしょ、親友なんだから!」
どうやら完全に思い出したようだな。
俺が他の友達と外で遊んでいる時も音暖とユウは二人で遊んでいたっけ。
もしかしたら俺よりも関わりが深いかもしれない。
「それにしてもさっきのはどういうことなんだ?」
「さっきのって?」
「颯太、ユウから何を言われたの?」
「結婚の約束のことだよ!俺にはそんな約束した覚えなんてないぞ」
忘れることなんてないユウの先ほどの発言。内容は俺とユウが昔結婚の約束としたというもの。
うん、してないよね。おままごとで夫婦役とかはした記憶もあるけれど実際に婚約はしていないよね。
「え、結婚の約束ってどういうことなの颯太?私そんな話聞いたことないんだけど」
「俺も聞いたことないわ!」
思わず大きな声で突っ込んでしまった。
「酷いよソウちゃん。私のことお嫁にもらってくれるって言ったじゃん」
「どういうことなの颯太?」
「知らないって。本当に覚えてないんだよ」
まさに修羅場を言う言葉が最も似合うこの状況。俺の今までの中で一番カオスといって間違いないだろうな。
ユウが言っている通り、俺がもし婚約しているのであれば誤解を解く必要がある。今の俺に誰かと結婚したいなんて欲望はないし、そもそも俺と周りの女性では俺の方が釣り合っていない。
「おままごとの時に、結婚してくださいって言ったらいいよって言ってくれたじゃん!」
「颯太!?」
「それって夫婦設定の時の話だろ。現実の話じゃないはずだ。あくまであの時はお遊びだっただろ?」
確かに夫婦設定の時にそのようなやり取りがあったような気もする。だけど、それはあくまでごっご遊びに過ぎない。
「違うよ。あの時の言葉は本物だったんだよ」
顔出しNG歌手な俺、引退直後に顔出ししてみたら次の日学校に嵐直撃してた ミナトノソラ @kaerubo3452
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。顔出しNG歌手な俺、引退直後に顔出ししてみたら次の日学校に嵐直撃してたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます