平安の予言者
ゆずじゃむ
第1話「予知能力」
1「いじめの予知夢」
私は東原柚果。普通の小学5年生だ。学校は割と好きだし、友達もいる。好きなことは—歴史だ。特に日本史。
「柚果―。そろそろ寝なよー。」
おっと、もう9時半だった。
ベットに寝転んで、それまで今日楽しかったことを思い返しながら、眠りにつくまで待つ。
・・・ここは・・・夢?
いつもの学校の教室みたいだけど?
壁掛け時計を見ると、休み時間?
「―おい!私の足踏むとか脳みそあんの?!」
誰かの怒鳴り声。振り向くと、クラスのリーダー系の女子—花園桃華が私の親友・鈴木つむぎをにらんでいた。
まわりがひそひそと話し始めた。
「ごめんなさい。でもわざとじゃなくて・・・」
「言い訳はいいんだよ!さっさと土下座しろ!!」
謝るつむぎに対し、桃華は土下座を要求する。
これって、いじめじゃないか?
—いじめは雑草のようなものだ。
そう言ったのはもう一人の友達・太田玲奈だった。
彼女は一年生の頃から、避けられたり、陰口を言われるなどの陰湿な、先生に言いにくいいじめを受けていた。
そんなある日。玲奈の席に蜂の死骸を投げつけられた。
さすがに彼女は怒って、先生にすぐに言った。
それで一旦は解決し、その件から謝る人もいた。
そして、「いじめって雑草みたいだよね。早くいじめっていう雑草を取ればなんてことないけど、放置しちゃうとどんどん広がって、ほかの人もいじめられるようになって・・・最後はどうしょうもなくなって不登校とか、引きこもりになっちゃうんだよね。」
その言葉にはものすごく納得した。
とにかく、桃華を止めないと。
「桃華。それはいじめっていうんだよ。犯罪だよ?犯罪者になっていもいいの?今すぐやめて。」
私が落ち着いた声で言う。
「あんたには関係ない!黙っとけ!」
そう言って、私は額を殴られた。その後視界は真っ暗になり、気を失った—。
「ーっは!」
夢から覚めた。
嫌な夢だったな。
夢はとにかく、早く支度をしないと。
少し恐ろしい夢にひるみながら、学校へ行った。
夢の時と同じ、休み時間。
私は図書館で借りてきた本を取り出し、早速読み始める。
「―おい!私の足踏むとか脳みそあんの?!」
・・・ん?聞き間違いか?
「ごめんなさい。でもわざとじゃなくて。」
「言い訳はいいんだよ!!さっさと土下座しろ!!」
おいおいおい、おかしいぞ?
あまりにも夢とそっくりすぎるぞ?
で、でも!これはいじめだ。止めないと。
「桃華。それはいじめっていうんだよ。犯罪だよ?犯罪者になってもいいの?今すぐやめて。」
ダメ元で反抗する。
「あんたには関係ない!黙っとけ!」
夢と同じように、額を殴られる。目の前は真っ暗になり、気を失った。
目が覚めると、真っ白なのが見えた。
保健室の天井だ。
えーと、何があったっけ。あ、そうか。桃華に殴られて、気を失ったんだった。
「東原さん、大丈夫?今桃華さんの親にこの件は連絡しておいたから。親御さんは転校することを考えるそうよ。」
「あ、はい。気分は良くなったんで。帰ります。」
「今日は休んでおきなさい。早退の連絡しておくから。」
「・・・わかりました。」
お母さんが迎えに来て、そのままお風呂に入って、軽くご飯を食べて、そのまま眠った。
結局、あれはなんだったのだろうか?
最近聞く「予知夢」というものだろうか?
いやいや。考えすぎだ。たまたまだ。気にしすぎるのは良くない。気持ちを切り替えなければ。
2「失恋の予知夢」
また夢だろうか?
ぼんやりする視界。
ここは、学校の廊下?
夕日がきれいなオレンジ色に輝いている。
今は夕方ということだろうか?
緑色のコルクボードには、毛筆の作品がびっしりと隙間なく張られていた。
「でね、私・・・竜斗のこと好きなの!」
この声は・・・つむぎ?
昨日の桃華のことは大丈夫だったのだろうか?
今、ずっと好きだと言っていた竜斗に告白しているのか。
私が邪魔をしてはいけないな。撤退しよう。
そう思い歩き出した。すると_
「ごめん、でも伝えてくれてありがとう。」
・・・ん?もしかして告白失敗したか?
つむぎから答えが返ってこない。
まずい空気だ。一旦この場を離れよう。
そのまま私は逃げるように家に帰った。
次の日の放課後。
委員会から帰ろうと思ったがトイレに行きたかったので、お手洗いに行ってから帰ろうと決めた。
トイレを済ませて、教室の前の廊下を通る。
夕日がきれいなオレンジ色に輝いている。
「でね、私・・・竜斗のこと好きなの!」
夢とそっくりすぎるセリフと発音。
「ごめん。でも伝えてくれてありがとう。」
こちらも全く同じセリフ。
ありえない。こんなことありえなさすぎる。
やっぱり、予知夢なの?
逃げるように教室から去る。
本当に怖すぎるんだが。
夜、眠るのが怖くなった。
明日はどうなってしまうの_?
3「それからの、変わってしまった日常」
それから、あれは完全なる予知夢という結論に至った。
全部予知夢通り。怖いほど。
夢を見ること、寝ることがとても嫌になった。
でも、毎日夜通しするわけにはいかない。
我慢するしかない。
この苦痛過ぎる日常はいつ終わるのだろうか・・・
4「ある日の予知夢」
はあ、はあ、今日も寝る時間がやってきてしまった・・・
眠るのが怖い、怖すぎる。
ふう、やっと眠りについたか?
「あんたなんか死ねばいいのに!」
今のは桃華の声?
私は息を吞んだ。
桃華に、屋上から突き飛ばされて、数十メートル上から頭を下に落下している!
うそ、私ここで死ぬの?
「はぁ!」
はぁ、はぁ。
夢だった。
でも、これがまた予知夢だとしたら_
私は今日、死ぬの・・・?
今日の放課後、桃華に呼び出された。
「で、なんで呼び出したの?」
「あんたが憎いの。だからここであんたを消す。」
「は?」
「あんたなんか死ねばいいのに!」
うん、やっぱり予知夢には逆らえない。
スローモーションみたいにゆっくり落下していく。
でも、もうちょっと生きたかった_
5「まさかの転生?」
「_誰かが落ちてきたぞ!」
ん?助けでも来たのかな?
まあいいや。この高さからじゃどうせ助からない。
_ドサッ
「いたた・・・」
待って、生きてる!
てか、ここどこだろう?
気づけば十二単みたいな服着ている。
もしかして、死んだは死んだけど、運が良くて転生でもしたのかな?
そうなのであればここは平安時代だろう。ここは内裏とかそういうところであろう。
「_大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫です。」
平安貴族(?)の人が駆けつけた。
「藤原道長である。空から落ちてくるとは何事か?」
「いや、私も分からなくて_私は、多分今から1000年後の時代にいて、何かしらの原因で来てしまったのかと・・・」
事情をとりあえず説明。
ん?藤原道長ってあの有名の?
まだ若いみたいだから、大体花山天皇とか一条天皇とかの時代だろうか?
「そうか・・・それなら帰れるまでの処置をとらなければ・・・」
そう言われて、内裏の中に連れていかれた。
「そうか。空から降ってきたのか。」
緊急会議みたいな感じで、帝もいる。
この時代、天皇のことは帝と呼ぶ。
今は予想が的中して花山天皇だったみたいだ。
「空か降ってきた者。名はなんと言う?」
「柚果と申します。果物の柚子という文字と果実の果を合わせた字でございます。」
言葉遣い、これであってるかしら?
「そうか。珍しい名前だな。1000前から来たとは本当か?」
「はい。1000後ではやっと戦が無くなりましたが社会問題が多数残っております。ですが、皆が努力して解決を試みているところです。」
「今いくつか?」
「11でございます」
「ほう。特技は何かあるか?」
「最近は予知夢を見ます。前日の夜に夢を見て、夢の内容はほとんど同じです。」
あたりがざわつく。
やはり不審人物と思われているのだろうか。
「ならば、占いの代わりに柚果殿の予知夢を使い、災いを回避するのはどうでしょう?」
道長様が言った
「柚果殿は理由もわからずこの世界にやってきてしまったようなのです。なので住む場所も服も食事もありません。こちらが衣食住を用意する代わりに、予知夢を使って災いを回避する、という交換条件はどうでしょう?」
「いいだろう。」
帝はそう言ったといことは、賛成ということ?
「いいのですか?」
「いつ何が起こるかわからない時代にほぼほぼ確実な答えが手に入り、災いを回避できるなどそんな奇跡は今までない。柚果殿の衣食住の準備を。」
「は。」
「感謝申し上げます。身を粉にしお努め申し上げます!」
また言葉遣いが怪しいが、伝わっていてくれ!
「期待しているぞ。」
こうして会議は終わり、解散となった。
6「最初の異変と真のチカラ?」
私は道長様の屋敷に居候することになった。
一族の皆様に挨拶してから、もう夜だったので寝室に案内された。
「こちらが柚果さまの寝室でございます」
「ありがとうございます。」
早速布団に入る。ここからが交換条件の仕事だからな!
・・・何かが見える。
「_忯子!」
帝の声?
忯子さま_帝の妻だったけ?
でも、近くにその姿はない。
もしかして_
忯子さまが、亡くなった?
平安時代、遺体に触れるのは穢れだったはずだから、最後に会うことができなかった?
夢はそれだけでは終わらなかった。
この人は_最強の陰陽師・安倍晴明だろうか。
凄いパワーを感じる。
「忯子さまが成仏できておらず、霊が内裏で暴れております。」
・・・なんだって?
そのまま視界は真っ白になり_
起きた。いい目覚め。よく寝れました。
いいや、そうじゃない!
これって、早く対処しないとアウトなやつだよ!
道長様が部屋に来た。
「おはよう、よく眠れたか?夢は_」
「良くないことが起こる。早く対処しないと。帝と忯子には配慮して伝えてほしい。」
「やはり。 忯子さまが今朝・・・」
「_!今帝ってどこにいるの!?」
「こっちだ!」
道長さまは帝のいる場所まで案内してくれた。
「帝!」
泣きわめいている帝の前に一礼し座る。
やはり逝ってしまったか。
「どうしたか・・・忯子のことか?」
「ええ。今日の夢は忯子さまが成仏できず怨霊になり、内裏で暴れていました。」
「そんな・・・嘘だろ・・・」
「早く対処しなければなりません、安倍晴明さまは今どちらに?」
道長さまがまた案内してくれた。
「お初にお目にかかります。」
「事情は聞いておる。すぐに対処しよう。」
内裏に向かい、早速儀式?みたいなのをやる。
呪文を唱えているが、あまり効果が無いみたいだ。
「_なぜ効かぬ・・・今までこんなことはなかった。」
どうしよう。あの晴明さまでも?
すると_私の手のひらが光った。
勾玉?
_あれはおばあちゃんがくれた勾玉だ。
でもなんで今?
勾玉が突然まぶしく輝き宙に浮く。
[この勾玉のチカラを借りたいときは、こう唱えるんだ。]
おばあちゃんの言葉を思い出す。チカラなど嘘だと思っていた
けど、いまここにあるっていうことは、ほんとに?
とりあえず使うしかない!
『聖なる勾玉よ。天の神よ。時を超える私にチカラをお与えください!』
光が、私の指にともる
そして最後の呪文!
『忯子さまの霊を払いたまえ!!』
すさまじい光。
別の色の光が、空へ登っていく。
「どういうことだ!?忯子さまの霊が成仏した・・・!?」
「自分でもわからないです。でも、これで夢以外でもお役に立てるかも・・・!」
「・・・貴方のチカラ、感動しました。陰陽道と関係があるのかはわかりませんが、私と同じくらい、いや、それ以上のチカラを今後出せるかもしれません。」
「・・・はい!頑張ります!!」
こうして、平安のドタバタライフがはじまったのである。
平安の予言者 ゆずじゃむ @sitorasu1114
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