第51話 皇太子視点

 ……クソッたれが!


 宰相の奴め……しくじりやがった!


 全く! どいつもこいつも役に立たん!


 仕方ないから……こいつで憂さ晴らししてやる!


「オラァ!どうだ!?」


「アンッ!? も、もう少し優しく……」


「貴様の父親がミスしたんだ! お前が身体で払うのが筋だろうが!」


 俺は、背後から腰を打ち付ける。

 それこそ、何度も何度も。

 この感覚は何度やってもたまらんな。

 いわゆる征服感というやつだ。


「も、申し訳ございません……」


「流石の俺も、怪我人を痛めつけることはできないのでな! お前が代わりに受けるがいい!」


 宰相が使い物にならないと、雑務の仕事がこなせない。

 それに、俺と宰相が仲が悪いと思われると面倒なことになる。

 反対勢力が、それを見逃すはずがない。

 全く、面倒なやつらだ。

 大人しく俺に従えばいいものを……この次期皇帝たる俺様にな。


「フゥ……この辺で勘弁してやるか」


「あ、ありがとうございます……す、凄かったですわ……」


「そうだろ! そうだろ! フハハ!」


「お、お許し頂けますか?」


「まあ、いいだろう……俺は寛大な男だからな」


 すると、当の本人がやってきたようだ。

 いつもながら、タイミングが良い。


「カイル様、先日は申し訳ございません」


「許す、俺は寛大な男だ。だが、次の手は考えてあるんだろうな?」


「ええ、もちろんです。まずは、引き続き刺客は送り続けます。奴とて無敵ではありませんし、疲労も蓄積されるはずです。そこを、私のとっておきで仕留めます」


「それだけか? また失敗したらどうする?」


 言った内容は前と対して変わらん。

 すると、宰相がニヤリと笑う。


「ご安心ください。更に、奴には復讐鬼を向けます」


「ん? どういうことだ?」


「奴には異母兄弟がおります。クロウはそいつの両親を殺した仇です。どんな手を使ってでも殺そうとするでしょう。こちらにとっても、良い駒になります」


 そうか、異母兄弟はクロウが自分の親を殺したと思っている。

 いや合ってはいるが、それを仕向けたのは俺たちとは知らない。


「ククク……ハハハ! 悪いやつよ、お主が仕向けたことだというのに。だが、そういうのは嫌いじゃない……いいぞ! 良い見世物になりそうだ!」


「まあ、これで死んだ奴らも役に立ちます。どうせ、成功しても殺すつもりでしたから。もちろん、その子供もです」


「可哀想な奴らよ。まあ、自業自得というやつか。それよりも、国境付近は大丈夫なんだろうな?」


「ええ、問題ございません。あちらも、膠着状態を維持しております。おそらく、半年ほどは平気でしょう」


「辺境伯領はどうなっている?」


「あちらも、問題ございません。辺境伯には、。仮に動いたとしても、大した問題はありません」


 国境は安全、辺境伯も動けない。

 ならば、後は奴らさえ消せば良い。

 最近では、一部の民衆どもがあの二人を英雄扱いしている。

 奴らを、一刻も早く消さなくてはいけない。


「そうか……あとは邪魔な奴らを排除し、親父さえ死ねば……俺が皇帝だ。そして、この大陸を統べるのだ! フハハハ!!」


「……そうですな」


「どうした? 怪訝な顔をして?」


「いえ、申し訳ございません。少々右目が痛むもので……」


 そう言い、右目を抑える。

 その背中には、どす黒いオーラが見えるような気がした。

 よほど、腹に据えかねているらしい。


「そうだな、お前も煮え湯をのまされたからな」


「ええ、必ずや……このままでは終われません」


「よし、では引き続き任せる。なんでも、好きなように使え。俺はここで遊んでいる」


「御意。カイル様の寛大な心に感謝いたします」


「フハハ! 奴らもバカだな! お前のように、俺に従えば死なずに済んだというのに!」


 このままだと国がダメになるだと?

 少しは贅沢を控えてくれだと?

 少しでいいから民のことを考えてくれだと?


 「ふざけるな! この次期皇帝の俺様に意見するとは!」


 俺様は特別なんだ!

 特別なら、何をしても許されるんだよ!


 「ふぅ……さて、俺はここで高みの見物といこう」


 駒共が、カグヤとクロウを連れてくるのをな。






~あとがき~


これにて一章が終わりとなります。


レビューにある通り展開が早いとのご指摘でしたが、ある意味で狙い通りに行ったかなと思っております。


こちらはスピード感とコミカライズを意識したので、このままで行きたいと思います。


それと本日よりドラゴンズノベルココンテスト中編に「役目を終えた英雄はただ立ち去るのみ~若返った老騎士のセカンドライフ~」という作品を投稿しておりますので、こちら共々読んでくださると嬉しいです🙇‍♂️

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反逆の英雄譚~愛する幼馴染が処刑されそうだったので国を捨てることにする~ おとら@五シリーズ商業化 @MINOKUN

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