第3話 夢
チャイムがなり各々が自分の席に戻る。まだマコは脚をもぞもぞしている状態だが、本望らしい。だが目の前の席であまり欲情しないでいただきたい。
「はい、じゃあまず転校生紹介しまーす」
クラスがざわつき始める。
大体予想はできている。多分……
静かに扉が開き、一人の女の子が教室に入ってくる。
ショートカットの髪、少し眠そうな目をしている。手には一冊の本を持っている。英語の題名の分厚い本だ。
「
苗字が小山。つまりはそういうことだろう。また変な奴が来たということだろう。
……それにしても、また女か。アイツはもっと陰キャの弱そうなやつだったのに、親友の裏の顔を見てしまった気がする。
「おい、あの夢って人も允の思想の一つなんだろ?」
「そうだね。正直言って彼女が一番何しでかすか分からないよ。」
少しマコの表情が暗くなる。
「気を付けてね。この調子だと神様になった思想が出てきたりしちゃうかもね」
絶対に出てくると思う。確信が持ててしまう。
***
それは授業中の事だった。すべてが見えるようになった。
少し違う。実際には服だけだが突如として透けて見えるようになった。
何で急に服が透けるんだよ!?
思いっきり目をつぶり、マコを欲情させないよう何とかしようとする。
しかし、ダメだった。この現象を受けた人はどうやら僕以外にもいるようで、
「……っう!」
「やめろマコ! 授業中だぞ!?」
理由は分かっている。夢だ。
というか夢以外ありえない。
誰しも一度は考えたことがあるのではないだろうか。
服が透けて見える展開……そうそれは、こういう事が出来る世界線ならば絶対に起こると言っても過言ではない。王道展開。
勿論服が透けて見えて露わになっているとは誰も思わない。皆が気付かない中、自分だけが見えているという優越感。
しかしマコは分かる。まず普通に考えてだ、見えたら何を想像するか。分かり切っている。
「んっ……! ぁあ!」
まだ小声だから大丈夫だからバレていないが、彼女は允の欲の化身。『一回ぐらい目隠しして虐められたい』とか言っていたやつ。の欲!
何が起こるか分からない。一瞬たりとも気が抜けない。
かと言って目を開けることもできない。
やれる事は二つある。夢を止めるまたは、マコの事を脳内であんな事やこんな事にしてあられもない姿にしている奴を見つけ出す。
考えてる暇などない。今すぐ夢を──
授業の終わりを告げるチャイム。戦いの始まりを知らせるチャイムが響く。
同時に立ち上がり後ろを向く。転校生の席は一番後ろ。
しかし、いち早く危険を察知したのか夢が教室を飛び出す。
「鬼ごっこか!? おもしろ──」
教室の外は知らない空間が広がっていた。
違う。学校が変形している。変な所に階段があり、上下反転、変な穴まで開いている。
「確かに学校で鬼ごっこしたいなとか考えたことあるけど……!?」
タイムリミットは近い。色々とシチュエーションを話しているマコだが、実際は雑魚だった。
確かに允も『俺は、脚で十分堕ちると思う』とか言っている程のクソ雑魚だったな……
手すりを滑り降り、壁を蹴って急回転したり、学校中を駆け回る。
しっかりと透視の効果はある。通り過ぎる女子の服も透けている。しかし、彼の脳内ではそんなことよりも学校鬼ごっこが楽しかった!
「──遅いんだよっ!」
階段を飛び降り夢を捕まえる。
「さ、さあ。戻してくれ……」
校内も戻り透視能力もなくなり、一件落着かと思えたが、
「そうえば、アレだな。透視能力無くても脳内で好き勝手出来るもんな……」
多少痙攣しながら机に突っ伏しているマコを哀れに思う。
「あっ……っあ……」
恨むならこんな事を考えていた允を恨んでほしいものだ。
「べ、別にこの能力……感度値とか、オンオフ切り替えられるんだよね」
「お前は変態って事か……よく分かった」
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