第2話 思想

「私の解釈を話そう。まず、允は死んだ。確実にね」


 準本人が言うのだからそうなのだろう。あまり受け入れられる事では無いが、決心して学校にも来ている。


「では、私は一体何なのか……私は允の思想の一つだ」


 思想の一つ? ということは允の遺志を継いだような人間が沢山いるのか!?

 真剣な話に茶々が入る。


「允の代わりに転入したって本当~?めっちゃ可愛いね」


「めっちゃ可愛いじゃん! なぁ、仲良くしようぜ~?」


 こいつら……允が死んで見た目が変わって嬉しがってやがる……マコも何か言ってやればいいのに、


「良いですよ~仲良くしましょう!」


 すっと手を差し出す。男子共は喜んで握手をして去って行った。


「あんな奴らと関わって何になるんだ? 関わらなくていいだろ?」


「見ましたあの人達? 下心丸出しですよ?」


 だから関わらなくて良いと言っているのだが、様子がおかしい。


 顔が赤くなってきている。もぞもぞと動き出し、少し息が荒くなる。


「……今、彼らは私でいやらしいことを考えている……! きっと彼らの頭の中では私はあられもない姿にっ……!」


 ついに頭がおかしくなったようだ。


 元から『寝取られって良いよな。取られる人も取る人もいないけど』や、『行き過ぎた姉妹愛って、もはや美しいよな』『ロリを見ろ! あの澄み切った眼を見ろ! あの輝きを保ったまま暗い道に進ませたい……!』などの変態要素があるとは思っていたが、


「なんか変わったな……」


「私は愛欲、性欲、そっち路線の思想をありったけ集めた存在だからね」


 允の奥は深いと知った。こんなことを考えていたのか。


「……っん!」


「変な声出すなよ! 僕が何かしたみたいになるだろ!?」


「ご、ごめんね……実はそのね、思想の一つに──」


 允は馬鹿だった。想像を絶する人間だった。相手の想像とどうやら同期するらしい。


「…………」


 ビクッと動き、脚をジタバタさせながら悶絶する。


「す、すごいね……多分今の君でしょ……?」


「ごめん。」

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