最終話 7年

それから7年が経過した。

俺達は高校を卒業して婚約した。

アイツは、というか。

富山莉愛は教師になった。

因みに学校も転校し、1から彼女はやり直しを行った。


そして俺は...社会に役に立つ仕事。

福祉関係の仕事に就いた。

それから俺は婚約者の彼女。

和奈と一緒にアメリカにやって来た。

何故かといえば。


「ここがベティの実家か」

「そう。...懐かしいな。7年ぶりかな」

「...そうか。...確かに久々だな」


俺達はそのままアメリカのワシントンにあるベティの実家を訪ねていた。

俺の奥さんの大切な亡き友人の実家に。

それから俺は日差しを感じながらそのまま家を訪ねる。

すると奥から笑顔の絶えない中年の男性が出て来た。


「やあ」

「...え?日本語...」

「そうだね。実は祖父が日本に行ったアメリカ兵であったから。それで色々と日本語を幼い頃から勉強したんだ」

「そうなんですね」

「...日本には原爆などの話が有るからね」


彼はそう言う。

それから複雑な顔をしていたがハッとしてから顔を上げた。

ニコニコするその男性。

俺はその姿を見てから和奈を見る。


「...お久しぶりです」

「そうだね。私の娘よ。久々だね」

「...」

「婚約したってね」

「...はい。叔父様」


「めでたい話だ。じゃあ早速中に入ってくれ」と彼は俺達を促す。

それから彼に付いて行って中に入った。

そしてトマス・ロジャーさんは「この子も知っているんだよね?」と大きく新聞を見せてくる。

英語で書かれているから何が何だか分からなかったが。

だけど写真で分かった。


「...ああ。天才少女、幸か」

「アハハ。活躍しているね」

「アイツは教師だけどその代わり世界中を飛び回っているらしいからな」

「...そうなんだ」

「ああ」


幸ちゃんは滅茶苦茶な天才ピアニストになった。

今、2人の親父さんは金銭管理などを任せられている。

マネージャーの様な存在になっている。

俺は苦笑しながらその写真を見る。


「...彼女の噂はかねがねだよ。凄いね」

「凄いというか...まあ知り合ったのも偶然ですよ」

「...だけど誇らしいんじゃないのか。こうして活躍しているのが」

「それは0では無いです。活躍しているのが誇らしいです」

「...そうか。良い事だね」


ロジャーさんは「さて。それじゃ...先ずは結婚祝いをしようか」と言い出す。

それから何か赤飯が出て来る。

え?!と思いながら俺はロジャーさんを見る。

ロジャーさんは「アッハッハ!実は僕は赤飯が好きでね」と笑顔になる。


「アメリカのご飯も美味しいんだけど日本食が好きでね」

「...そうなんですね」

「ホッとしてくれたかね」

「何が出て来るか不安でした」

「あっはっは」


そしてロジャーさんは赤飯を盛り付けながら「日本には寿がある。...これは幸せな言葉だ。...日本には暫く行ってないけど僕は日本が好きだよ」と言う。

俺はその言葉に「ですね」と返事をした。

それからロジャーさんはつまみ食いをしながら「はい」と言って渡してくる。

少しだけ塩っ辛い様な赤飯だった。


「おじさまは相変わらずですね。塩辛いです」

「赤飯は塩辛いのがベストだ。何故なら甘いからね」

「アハハ」


それからロジャーさんは「君達はお酒は飲めるかね?とっておきの日本酒がある」と言葉を発してから俺達を見る。

俺達は顔を見合わせてから「お酒は弱いです」と俺は苦笑い。

和奈は「おじさまが入れるなら」と笑顔になる。


「じゃあ少しだけ」

「そうだね。愛娘の体調が心配だ。...少しだけにしておこう」

「そうですね。おじさま。えっとそれから」

「?」

「今年から妊活始めます」


そう話しながら笑みを浮かべる。

俺はその言葉に赤面しながら「大規模に宣言する事じゃ無い?!」と言う。

するとロジャーさんは「はっはっは!まあ良いじゃあないか。元気な子を産んでほしいな」と言いながら笑顔になる。


「しかし時が経つのは早いね。...君達がこうして誇らしい夫婦に育ったのが嬉しいよ」

「...おじさまのお陰もあります。私達は今までずっと良い方々に恵まれました」

「...本当に悲惨な事もあったけどそれにめげずによく頑張ったね」


そうロジャーさんは言う。

それからロジャーさんは「...」となりながら「何というかベティもきっと喜んでいるよ。君達が幸せな姿を見てね」と言う。

俺達はその言葉に見合う。

そして「複雑な心中お察しします。...それでも私達の事を支えてくれて有難うございます」と話した。


ロジャーさんは笑みを浮かべてから涙を拭う。

それから「よし」と言って立ち上がった。

そして「祝いの日にはやはり升だな」と言う。

何が感覚がズレている。

だけどまあ。


「ロジャーさん」

「ふむ?」

「有難うございます。彼女を...見守ってくれて」

「...ああ。全然大丈夫だ。此方こそ有難う。君達には...助けられてばかりだったからね」


それから彼は笑みを浮かべる。

そして俺達は再び見合った。

笑みが...絶えない。

恐らくだが今が俺達は一番幸せだった。


fin

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現彼女が浮気したのだがそしたら昔の彼女だった女の子が... アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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