第22話 PTで

さて、しばらく考えてもどちらが良いかなどということはわからないかった。私では答えが出なかったので、女神様に聞いてみることにした。女神様に聞くためにも一度ダンジョンから出ることにした。29層から転移陣に乗り入り口に戻る。


すると、行きよりも人は多くなっていたようだった。だが、行きとは異なっていたことがあり、それは動画撮影をしている人が少ないということだった。確かに動画撮影をしている人がいると周囲の人が気を使うため、その付近には近づかないようにしていたので、正直邪魔になっていた。これからもっと流行るようになっていったら、これらの問題も上手いように改善されていくだろうと思い、しばらくは仕方ないと諦めることにした。


ダンジョンの外に出てみるとすると、一際人気のあるPTがいた。周りを多くの人が囲んで離さない状態だった。ここまでの盛り上がりを見たことがなかった私は、何事かと聞き耳を立てることにした。するとどうやら、このPTは20層をクリアしたメンバーたちのようで、ファンなどが彼らを囲んでいるようだった。気になって見に行こうとしたら、人混みに押されて転けた。痛い。どうでも良くなって寮に帰る事にした。やっぱり人混みは怖い。


寮に帰っていると、星宮さんに出会う。「ちょっと待って、綾地さん。」と呼び止められる。どうやら彼女も今帰ってきたようだ。それから、いつもどこに行っているのか?などを聞かれたが誤魔化すことにした。やはり、PTを組んでいる彼女たちからしたら不思議に思うようだった。確かに考えてみれば、いつも私が帰ってくるときに彼らと会うことが多いが、どこに行ってるかは気になるだろうと思った。なぜこんなにも帰り道にPTのみんなと会うのかは、わからないが仕方ないかと思うことにしておいた。


そして私はここで変な嘘をつくより、ある程度本当のことを話したほうが良いだろうと思い、彼女に外に出ているという話をした。ここで嘘をついて、学校にいて鍛錬を積んでいるんだなどと言っては、教員からバレるかもしれないし、他の生徒からもバレるかもしれない。どこでボロが出るかもわからないので話すことにしておく。実際に、外に杏を買いに行ったりしているのでまるっきり嘘であるわけではない。それから、何も予定がない日や時間があるときは、お菓子を探していたりもするので、問題なく話もできるだろうと思いそう答える。


それからおすすめのお菓子あるという話をされたので、近くのデパートの地下で製菓製品を多く取り扱っているお店があり、そこで杏のドライフルーツやクッキー生地を買いに行っている事、それからそこのドライフルーツは保存料を使ってなく砂糖だけで、ドライフルーツを使っている無添加の食材なのでそういうのが気になる場合であっても良いかと思って、そのお店を紹介することにした。


それから、訓練について何をしているのか聞かれたので、昔古武道でやっていた練習方法などを伝える事にした。すると、「綾地さんもやっぱり武道習ってたんだよね?何習ってたの?」と食い気味に聞いてきたので、古武道だと返しておいた。それからそこでは、剣術と投擲に力を入れて学んだと話しておいた。あまり長い事立ち話をしているのもあれかと思い、食事に誘うことにした。星宮さんは武道の話が好きなようで色々なことを聞かれたり、話してくれたりしたが、なぜか頭に入ってこなかった。彼女と二人でいると本当の姿が見えていると思ってしまい落ち着かないのだ。


星宮さんと食事を済ませた後に、私はいつものようにお祈りをしてからお風呂に入った。お風呂から出て私は、啓示のスキルを使い女神様に話を聞いてみることにした。いつものようにお祈りをしてみたのだが、女神様の声は聞こえることがなかった。ただMPは消費していたようなので、発動しているはずには違いないのだが…どういう事だろうか?


私がすぐに思いついたのは、前回と同じ啓示であるので、今回は聞くことができなかったということだ。


次に思ったのは、信仰心が必要であろうこのスキルだが、私の信仰心が浅いと判断されたのだろうか?実際に判断しているのは女神様だろうから、女神様の気分の問題かもしれないが…。


最後にスキルから啓示が消えている、あるいは使用回数に制限があったか、一定期間の間は使えないか、このいずれかではないのか?という案である。


信仰心に関しては、自身ではわからないのでなんとも言えないが、スキルから消えていることはなく、感覚が制限などはないと言っている。なので、前回と同じ内容であるからいう必要がなかったのではないか?と思い込むことにした。


そうこう考えていると、夜も更けてきたので寝ることにした。明日は、勇者くんたちと学園のもう一つのダンジョンに行くことになっている。同伴してくれるのは、林先生と西城先生らしい。メールで勇者くんが教えてくれた。アドレスは以前一緒にご飯を食べた時にPTのみんなで交換していた。それから、希望するならPTを変えることもできるようだ。これはあくまでお試しで組んでいるからにすぎない。だが、他のみんなはこのままでいいと言っているらしいので私だけ他のPTも見てみたいと言うのも難しかった。なお、PTに関しては変わっても変わらなくてもどっちでも良いと思っていた。ある程度自由が聞けばどこも同じだとは思っていたのだが、星宮さんの動きを観察できるこのPTの方が良いのかもしれないとも思う気持ちが無いわけではなかった。やはり、人に特大の秘密を握られているのは不安だ。彼女にとってはあまり重要なことではないはずだから、ふとした時に話してしまう可能性があるからだ。


翌日になり、みんなとの約束があったのでお菓子を軽く詰めてから集合場所に行くことにした。今回は私も早かったようで、姫野さんと、私の二人だけだった。それから時間もあったので彼女と話してみたら、幼馴染の勇者くんが関わらないと思いやりのある良い子だったようだ。恋をすると盲目にいうが、どこか冷静さを失っているのだと思う。それからもしばらく話していたが、彼女はダンジョンの配信をしてみたいようなことを言っていた。星宮さんもそういうのが好きだったはずなので、話が合いそうだなと思った。


しばらくそんな話をしていると、他のメンバーと先生たちが来てくれたようだった。勇者くんが掛け声をあげて、これからダンジョンに入るようだ。どうやら彼もゴブリンとは戦ったことがあるらしく、今日は行けるところまで進むと息巻いているようだった。それから、星宮さんと、姫野さんは仲良く何かを話しているようで、西燈さんが仲間に入りたそうな目で二人を見ていた。どこか親近感を覚えたが気にしないことにした。


ダンジョンの中に入る。するとどうやら足場が良くないようで、ちょっとぬかるんでいる。ゴブリンは弱いがこの足場が続くのであれば転倒したりして危険があるなと思った。他のみんなも同じように歩きにくそうにしていた。足場が不安定なダンジョンは初めてだったので良い経験になると思った。しばらく歩いているとゴブリンが現れる。勇者くんが前に出て戦うようだ。剣を振ると、ゴブリンには対応ができなかったようで簡単に倒してしまった。やはりゴブリンは弱い。


することがないので、レベルがどれぐらいなのかなどという話をPTメンバーとすることにした。すると、勇者くんがLv21、姫野さんがLv15、西燈さんがLv12、星宮さんがLv28のようだった。私は、Lv32と言うことにしておいた。学校のダンジョンに入ってからそれなりにモンスターを倒していたが、私のときと違いあまりレベルが上がっていないようだ。もしかしたら、PTメンバーが多ければ多いほど、一人当たりの経験値は少なくなるのではないかと考えている。実際にどうなのかは体験できないためなんともいえないが…。それも検証してみたいため気にかけておくことにした。


それからしばらくして、ゴブリンは何度も出てきたので交代しながら、倒していくことした。どうやら勇者くんたちだけが戦闘をしているので私たちが暇だろうと思ったのか?わからないが、今回の敵は弱いのもあって西燈を除く四人は全員一人で倒せていた。また、一人で倒しているとあっという間にレベルが上がったりした人もいて、やはり経験値は1人で戦った方が多いのではないか?と考えている。それから、特にレベルが低い西燈さんに一人で倒してもらえるようにPTのみんなで色々と案を出し合ってみたが、どの案も上手くはいかず目をつぶってみたり、武器の杖やナイフなどがすっぽ抜けて、飛んでいく様を何度も見た。


勿論安全は確保しながら戦ってもらっていたが、流石に目の前で転けたときには、心配になってしまった。勇者くんが「ダンジョンから帰ったら、二人で戦闘の訓練をしよう!」と誘っており、姫野さんがすごい顔をしていた。勇者くんは、いつになったら姫野さんのことに気がつくのだろうか?でも、こんな鈍感すぎるところがやっぱり主人公だなと思ってしまう。


それから、林先生からもダンジョンの中でPTはこれで大丈夫なのか?という話が全員に対してあり、勇者くんたちは言い方は違えど全員即答で大丈夫です。と答えてしまったので非常に困ってしまった。私も場の空気を乱すわけにはいかず、大丈夫ですと答えた。ここで違う答えを言う勇気は私にはなかった。


しばらくそんな感じで歩いていると、ボスの部屋に辿り着いた。ゴブリンは本当に弱く、誰もダメージを負わなかったので回復役としては何もすることがなかったので暇だった。それから、私がゴブリンをあまりにも簡単に倒したことが他のみんなは驚いていた様子だった。ある程度戦えるのは知っていたようだが、ここまでとは思ってなかったようだ。


一応ボス戦が控えているので疲れてはいないが、休憩を取ることにした。みんなはお昼ご飯を食べているようだが、私はボス戦前にそんな食べることが信じられなかったので、おやつだけにしておいた。


今日のおやつは、杏のマカロンだ。杏のジャムを混ぜ込んだマカロンなのだが、香りがいい。みんなが食事をしている中、一人ティータイムを楽しむというのも悪くないものだなと思う。どうやら無意識に、隠密が発動していたようで、誰にも一切気取られることはなかった。そのことは、少し時間が経ってから気がついたので、すぐに解除したが、どうだろうか?バレていないだろうか?わからないので不安になったが、解除しても誰もこっちを見たりしてこなかったので、大丈夫だろうと思い、ティータイムを楽しむのであった。


それからしばらくして、お昼を食べ終わった勇者たちは、5層のボスに挑むことにした。ボス部屋の中に、全員で入る。すると中には一匹の巨大なゴブリンがいた。このタイプは、見たことがない。どんなタイプなんだろうと思っていたら、勇者くんが戦闘を始めてしまった。


どうやら、姫野さんと星宮さんの協力もあり余裕を持って戦えているようで、後衛職の私と西燈さんはやることがなくなってしまい、手持ちぶさたになってしまった。ボスゴブリンの耐久は高いらしく、致命的なダメージがなかなか入れられないようではあったが、少しずつダメージを与えていっているのでじきに倒せる思う。


それから少し時間が経ち、勇者くんたちでボスを倒したようだった。宝箱が出てくる。みんな嬉しそうにしていたが、ついに一度も被弾せずこの戦闘が終わってしまったので、本当に暇だった。もちろんヒーラーがいらなかったということは、誰も怪我しなかったという事であるので、そんなことはおくびにもださなかった。


宝箱の中身を見てみると中には、オーブが入っていた。スキルオーブだと思われる。触ると発動することもあるため、誰が最初に触るのか話し合いになったが、どうやら勇者くんが最初に触ることになったようだ。スキルのオーブを触ると、雷魔法を覚えたらしい。雷魔法とは、聞いたことがなかったのでどんな魔法か気になって聞いてみたものの、本人も覚えたてで使ったこともないのが関係しているのだろう。なんと答えて良いか困惑しているようで申し訳なさそうにしていた。

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現代ダンジョン生活(仮) @kuma06830

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