図書館へ



「今日はこれで授業終わりだけど」



 午後、今日の授業が終わった慧。



 いつもならさっさと自転車にまたがって家に帰っているが……。



 大学のなかにある図書館に慧はやってきた。



 ここで日本の神話についての資料を探して読んでみようと考えたのだ。



「アマテラス本人にあった後に資料を読むって、普通は逆な気もするけど」



 そう言いながら図書館へ入っていく。




 大学の図書館は照明の光量を落としており少し薄暗い。学生はここで休んだり、静かに勉強したり各々の時間を過ごしている。





 この図書館は建築デザインにこだわって建てられたそうで、建物片面は全面ガラス張りで自然光を取り入れるようになっている。ガラスに向かって椅子も置かれており、ここでうとうとするのは気持ちがいい。今は午後で陽が傾いているので薄暗いが。





 慧は手ごろな席に腰を下ろした。



「神話に関する本を探そう」



 大学の図書館は研究に役立つ資料が多く所蔵されている。




 大学には日本文化を勉強できる授業もある。だからそれに関する本も豊富に用意されているはずである。




「あったあった」



 慧は本棚から日本神話に関する本をいくつか取り出した。



 その場でぺらぺらとめくって拾い読みする。



「難しいな」




 今まで日本神話についてこのような資料を読んだことなどないので、内容は難しかった。




「まぁしょうがないか」



 席に戻って本を読みだした。



 イザナギとイザナミの男女の神々が登場して物語が進んでいく。



(これがアマテラスさん達の両親か)




 スサノオを生んだ後、イザナミは命を落としてしまうこと、イザナギは黄泉の国へイザナミを追ったこと、そして二人はそこで運命の喧嘩? をしてしまう。




 お互いに一日決まった数の人を殺すイザナミ、決まった数の人を生み出すイザナギという結果に落ち着いた。




 イザナミの悪霊を食い止めるためにイザナギはあの世との道を巨大な岩で塞いだのだという。それが黄泉平坂と呼ばれる場所らしい。




(イザナギとイザナミの二人の約束。夫婦だった二人がこんな形で引き裂かれてしまうなんて……)




 神々の結婚観は正直分からないが、イザナミとイザナギの二人は多くの神を作った夫婦の神々、お互い好きという感情があったと思うが、こんな形になってしまうのは残念だ。




 そして慧はスサノオの神に感情移入してしまう。



 母を望んで泣き続ける男の神、スサノオ。



 自分も両親を幼いころに失くしたものとして彼に興味を少し持った。



(どんな人柄なんだろうか)





「……」



 知らないことが一ページにたくさん出てくる。




 アマテラスがメインに登場して話が進むまでに、多くの物語があることが驚く。




「自分の国にこんな神話があったのか」



 慧は単純にタメになると思いながらも読んでいくが、

「全然進まないな」




 いつも読む小説とは違う、表現や言い回し、説明文に苦戦してなかなか頭に入ってこない。




「小説とは違うもんな。書いた人の研究内容とかでもあるわけだし」



 ふと時計を見るが、時間はあまり進んでいない。



 水筒のお茶を飲んでリフレッシュする。

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