偽アマテラス⁉
もう一つの可能性がある。
「あのアマテラスさん自身が偽のアマテラスとか」
すでに本物のアマテラスが捕まり、偽物と入れ替わっているかもしれない。
それならば、犯人にとって手紙を届ける際に見つかるリスクを考えなくてよい。あらかじめ二通用意して隠し持っておき、タイミングが来たら「届いた」と大騒ぎをすればいいのだ。
目的は旅館内で周りが大騒ぎするのを面白がっているとかであろうか。
しかしここで考えなければならないことは、弟のツクヨミの存在である。
どれほど弟のツクヨミを騙せるかが問題であろうか。
偽物にとって本物が面識のある人物を騙せるかが大切だ。
あのアマテラスが偽物として、不自然な点はなかったか……。
彼女はツクヨミを避けている様子はあっただろうか。
「なかったよな」
彼女は宴会中に弟に話しかけていた。特にツクヨミも姉がいつもと違うような反応はしていなかったと思う。
ただの姉弟の普段の会話であった気がする。
兄弟は普段どのような会話をしているのか兄弟のいない慧には判断できないが。
しかしツクヨミ本人から聞くアマテラス像とも一致するような気がする。
本当に彼女は偽物なのだろうか。
「まぁツクヨミさんも共犯者なら話を合わせるのは簡単だけど、納得いかないよなぁ……」
慧はベッドに寝転んだ。様々な案が浮かんでは消えていく。どれも信じれば真実のような気もするし、疑えば違う気もする。
「それにもしアマテラスさんの自作自演だとして……、自作自演で悲劇のヒロインなんて、『みんなで寝間着で語り合ってみたい』って言う彼女がそんなこと思うかなぁ」
慧が見てきた中でのアマテラスからはそんなことを考えるような人物には見えない。
「しかし俺はアマテラスさんのことを分かっているのかな……」
会ったばかりの彼女のことを考えるには少しばかり情報が足りないような気がした。
疑うにも、信じるにもその人物のことをよく知る必要がある。
犯人は誰かはまだ分からない。
慧にはまだ疑うにも信じるにも時期が早いということだろうか。
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