アマテラスの自作自演⁉



「彼女朝から何しに来たの?」



 祖母はアスカを見送ると不思議そうに慧に訊いてきた。



「大学の授業で使う資料を借りに来たんだよ」



 とっさの嘘で身をかわした。



(俺も嘘が上手くなったな)



 この間の同級生からアスカとの関係を訊かれた際にも即座に回答が口から出た。自分で自分をすごいと思った。




「まだ学校始まる前なのに? あんたどんなすごい資料持ってるのよ」



「ハハハ……」



 まだ嘘のレベルは磨き甲斐がありそうだ。



 登校するにはまだ時間がある。



 慧は部屋で一人、また考えてみる。



「……」



 新たに他の神に対して考えることはなさそうだ。



 ならば、

「やっぱあれを考えてみるか?」



 慧は今まで考えてこなかったある可能性について考えてみる必要がある気がした。






「もしも、この手紙からすべて、アマテラスさんの自作自演だとしたら……?」






 考えたくはないが、ここまで進展がないとするとこの手紙を持ってきたアマテラス自身に疑いの目を向けたくなってしまう。





(正直一番の神様を疑うっていうのは気が引けてしまうなぁ……。でもあらゆる可能性を考えてみないといけないし。『あらゆる可能性を排除して残ったものがいかにありそうもないことでもそれが真実なのだということを思い出してみよう』みたいなことを言ったのはシャーロックホームズだっけ? まぁセリフを考えたのは作者のコナンドイルだろうけど……)






「いや、疑うことは信じることにも繋がるはず」



 アマテラスについて考えてみる。



 彼女が犯人だとして、犯人だとしたらどうかを考える。



 彼女を疑ってみる。



「アマテラスさんがなにかよからぬことを考えているか」



 彼女の自作自演の可能性。



 ではその理由は何か。



 皆から憐みの目を向けられたいからではないかと慧は考えた。



 彼女は生まれながらにしてとんでもないオーラを持った神、皆から常に注目されて生きてきたはず。



 それなりに豊かな生活もしてきたはず、だからこそより多くの目線を浴びたいと思う気持ちを持っていてもおかしくない。



 悲劇のヒロインを演じて同情を得ようとする、なんとなく分からない話でもない。




 どこかの国で子どもに毒を盛り世話をすることで献身的な人物を演じていた人間が

いたという話を聞いたことがあった。




 具合の悪い子どもを看病することで真面目な人物像と周囲に認められることで快感を得るという悪魔のような人間がいたと。




 だからアマテラスがその思想を持っているのは、ありえない話でもない。



 彼女も周囲からは尊敬のまなざしで認められている。




 そんな人間とアマテラスは似ているのかもしれない、これは慧の行き過ぎた思い込みであろうか。




「でもこれは物語の読みすぎかな。悪く言いすぎて罰が当たりそうだ。あと、もしくは……」



 もう一つの可能性がある。



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