昨日の宴会 前編
この間の宴会の時間と同時刻に神々は集まった。
皆が集まったのを確認して、アマテラスは席から立ちあがった。
「皆さん、今夜は大切な話をしなければなりません」
神妙な面持ちで話し出すので、他の神々も何かを察して身構える。
「この中に、偽物がいるのです」
はっきりとアマテラスは皆に向けてそう発表した。
「偽物?」
会場がざわざわと動揺する。
「姉上、一体どういうことです?」
ツクヨミはアマテラスに説明を求める。他の神も小さく頷いた。
「この旅館に来る前、一週間前のこと、この手紙が届いたのです」
アマテラスは一通目の手紙を懐から取り出してテーブルに置いた。
「ちょっと失礼」
ピリは手紙を広げて中身を確認した。
「……」
「そしてこれが二通目」
次はツクヨミが手に取り広がる。
「これは……!」
ツクヨミは手紙を見つめたまま硬直した。
「どうしたの? 見せて」
ヒノコはツクヨミから手紙を取った。
「命が危ない⁉ 本物の命が危ないってこと?」
「何?」
「本当か⁉」
「見せて見せて!」
露の神、砂粒の神、そよも手紙を覗き込む。
「これ……本当なんですか? アマテラス様」
「何かのいたずらなんじゃ?」
皆がアマテラスに視線を戻す。
「残念ながら、その可能性が高いと思われます」
アマテラスの言葉に皆がうつむいた。
「私はこの旅館の皆さんにお願いして探せるかお願いしていました。我々はここを出たら世界行くわけですから。よく分からないモノを他の世界へ連れていくわけには参りません」
「だから旅館の人が紅茶を持ってきたんだ」
ヒノコはアスカを見る。
アスカは会釈を返した。
「なるほど、妙なことをしてるなとは思いましたが……」
「もしこのまま犯人が見つからなければどうするんです?」
「仮に見つからなくとも行かねばなりません。でも見つけないままでは困るのです……」
「それはそうでしょうけど」
ピリは困惑の表情を崩さない。
「どうして今日それを発表したの?」
そよは首を傾ける。
「それはこの手紙が届いたから。ただのいたずらではなさそうということで発表する
ことにしました」
アマテラスは二通目の手紙を持ちながら言う。
宴会場に重い沈黙が流れる。
「それで、発表してどうするんですか?」
「皆さんにも犯人探しをしていただけないかと」
眉毛を思い切り下げてアマテラスは言う。
再びの沈黙。
「申し訳ないが、俺は協力できない」
砂粒の神は険しい顔で口を開いた。
「偽物だとかそんなに大切なことを黙っていたなんて。犯人よりもここの全員を信用できない」
そう言って彼は部屋へ戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます