家に来たアスカ




 次の日も寒い朝だった。



 布団から出るのもためらうほど部屋は冷えていた。慧は温かい布団に包まる。温かい布団の中は実に気持ちがいい。再びまどろむ。



「部屋が寒くて布団から出られないな」



 今日は授業の時間は遅い。まだ寝ていられる時間だ。そう確認して再びウトウトしだす。



 しかし、

「慧、起きてるかー?」



 祖母が部屋をノックした。



「うん?」



 今日は遅い時間に起きると伝えてあるはず、なぜ祖母がきたのだろう。



「アスカちゃんって子が来てるけど?」



「は⁉」



 ガバッと布団から起き上がった。



 寝間着のまま階段を下りてリビングへ向かう。



「あ、おはよう!」



 アスカは椅子に座り祖父とお茶を飲んでいた。



「いや、アスカさん、何で?」



 アスカはそこに自然と座っている。今日初めて来たはずなのに。



「なんでうちに?」



「手紙の件知りたいかなと思って、来ちゃった。連絡先知らないし」



「手紙の件?」



 話を聞いていた祖父が首を傾げた。このまま話を聞かれるのはあまり好ましくない。



「あぁ、部屋来ます?」



 気は進まないが、仕方なく慧はそう言った。



「おや、いいのかい?」



「まぁ、外は寒いですし」



 あまり他人を部屋へは入れたくはないのだが、慧はアスカを部屋へ案内した。



「どうぞ。散らかってますけど」



「お邪魔しまーす!」



「適当に座ってください。これ座布団です」



 そう言われるとアスカは窓の近くにちょこんと座った。



「よくわかりましたね家の場所」



 慧は住所まではしっかり教えた覚えはない。



「ケイコちゃんに聞いたから」



「なるほど」



 ケイコは一度慧の部屋に来たことがある。だからわかったのだろう。



「ふんふん、普通の男子の部屋で。他の人の部屋は見たことないけど」



 アスカはきょろきょろと部屋を興味深そうに眺める。



「あんまりじろじろ見ないでくださいよ」



 恥ずかしさを覚えた。



「手紙の件はどうなりました?」



「そうだったね」



 アスカはしっかりと座りなおして慧に向き合う。



 慧も彼女に倣って向き合った。



「まずはね、昨日のことだけど……」



 アスカは昨日の夜のことを話し始めた。


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