久々に会う同級生たち



 慧はそれから数日間普通に大学へ通っている。



 旅館のことを考えても特に思い当たることは無い。



 平日の朝、慧の祖母が起きてきた慧に話しかける。



「慧、今日は今シーズン一番の冷え込みかもだって」



 天気予報は確かに「寒い」と伝えてきている。



「厚着していかないとな」



 慧はクローゼットから厚手のコートを出してきた。



「今日は本当に寒いな」



 外に出て外気に触れると気温の低さに驚いた。



 次第に季節は冬に向かって進んでいる。



 慧はいつもより着るものを多くして大学に向かう。



 良く晴れていて空気も澄んでいる。気持ちは良いが、少し太陽の光が弱い気がした。



「秋ってことか、冬が近づいてるな」






 昼休みのこと、慧は一人でおにぎりを食べていた。今日の昼休みの後は空きコマなので、長く休憩がとれるので、ゆっくりとしていた。



 もうじき文化祭が催される。だからしだいに校舎全体が文化祭使用に衣替えを始めてきている。



 装飾品があちこちに飾られて雰囲気が鮮やかになってきている。学生たちの雰囲気も文化祭に向けて気持ちが高まってきているような、学校全体が興奮を高まりつつある。



 こんな大学の雰囲気も悪くないと思いながらお茶を慧は飲んだ。



(そういえばレナと今度会おうって話してたんだっけ)



 レナ、慧の幼馴染は今別の町の大学に通っている。文化祭機関で大学が休みになるときに会おうと約束をしていた。



(あの時の埋め合わせもしないとな)



 この間ケイコが「町を見たい」と言った際にどこへ行くかレナに連絡したことを思い出す。いろいろと迷惑をかけたので何かしなければと思っていた。



 あれやこれやと考えているが特に浮かばなかった。しかしそんな時間も楽しい。



「おぉ! 慧、久しぶりだなぁ」



 不意に誰かが慧の名前を呼んだ。



 振り返る慧。



「あ」



 前期まで一緒に授業を受けていた同級生が慧に声をかけてきた。



 後期は一人で授業を受けていたから彼らと会う機会はなかった。



 久々の再会である。



「久しぶりだね」



「授業同じの取ってないと会うことないもんな」



 彼らは普通に慧のテーブルの席に座る。



 慧は少々窮屈に感じながらもテーブルを彼らと囲む。



「最近どうよ、授業」



「いろんなの取ってるよ。家も近いし」



「家近いのっていいよな。ギリギリまで寝てられるじゃん」



「でも寮に住んでる友達ちょこちょこ寝坊して授業休んでるけど」



 若者ゆえの悩みかもしれないが、よく眠れるのも大変である。



「もったいな! それで単位落とすとか」



「いや、ギリギリ落とさないように行ってんだよ」



 なんとも情けない話にも聞こえるが、自分次第の学校生活。本人が良ければそれでいいのだろう。



 それでも今の慧にはその生活は魅力的ではない。



(どのくらい休むか計算するの面倒だし。毎日出席したほうが楽だわ)



「慧君ちょっとちょっと」



 誰かがまた慧を呼んだ。

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