宴会の終わり
(え? アマテラスさんに⁉)
彼女は最高神である。そんな彼女に自分が苦手だという理由だけで野菜をあげるなどと言って大丈夫なのだろうかと慧は焦った。
「食べないの? そよちゃんのこと言えないね」
アマテラスは笑ってヒノコからパセリを受け取り食べた。
(食べるんだ。そういえばアマテラスさんって『寝間着で皆と語り合ってみたい』って言ってたんだっけ)
「んー独特な味」
アマテラスも楽しそうに食事と会話を楽しんでいる。彼女にとってこのような時間を過ごすことが理想なのかもしれない。
(仲いいな。しかし、神様同士の宴会とは思えないな。人間の宴会と話す内容が同じような感じだよ)
宴会は大いに盛り上がった。
神々は食後のデザートまでしっかりと完食した。
「良かったですね」
カゲロウは嬉しそうに目を細めた。
「あーお腹いっぱい!」
ヒノコはお腹をさする。
「眠たくなっちゃった!」
そよはまぶたをこすった。
「もう食べられないな」
ツクヨミは笑ってそう言った。彼も酔っ払っているのか昼間よりも表情が和らいでいる。彼はその後何か書き物をした後部屋に帰っていった。
「ごちそうさま」
砂粒の神も部屋へ帰っていく。
「今日はもう休もう」
露の神もサッと帰っていく。
女神たちも一緒に部屋へ帰っていく。その後をコロちゃんズがタッタカタッタカ走っていく。酒を飲んでいる彼女ら二人を心配してのことだろうか。
宴会会場に残ったアマテラスに慧は恐る恐る尋ねてみる。
「アマテラスさん、どうですか? 何か違うなと思ったこととかありますか?」
神を前にしていると嫌でも緊張してしまう。足の震えを抑えるのも大変だ。
(アスカさんみたいに普通には話せないよ)
しかしそんな慧の様子に気が付く様子もなく、アマテラスは首を横に振る。
「いいえ、何も……」
残念そうな顔をしたかと思えば急にパアと顔を輝かせて、
「でもほんと~うに楽しかったわね!」
アマテラスは満面の笑みでうっとりとした表情を見せた。
よく見ると彼女の顔は赤く染まっていた。
「あ、結構酔っ払ってるんですね」
彼女が酔っ払っているからか少しだけ慧の緊張もほどけた。
「フフフ」
慧から見れば、ただの宴会だった。最高神という存在はとても窮屈な生活をしているのかもしれない。
周りから見られる生活、慧には想像もできないがストレスはあるのかもしれない。
他の者と「普通」に過ごすことが楽しいと彼女は思っているのか。
そんな空間を提供する手伝いができたこと、慧は嬉しく思う。
「おやすみなさい」
その後アマテラスは宴会場を去っていった。
神々が集まる宴会、何も起こらなかった。
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