会話



「私お野菜食べられなーい! 苦手―!」



 そよが口を尖らせる。酒を飲んでないが、彼女は元気に陽気に話す。



 何とも子供らしいダダのこね方である。



「あ、タヌキさんおいで!」



 そよがター坊を呼ぶ。



 ター坊は「なんだなんだ?」とそよに向かって走っていく。その後をコロちゃんズがついていく。



「はい、どうぞ」



 そよがサラダの入った皿をター坊へ手渡した。



 ター坊は嬉しそうにそよから皿を受け取って嬉しそうにサラダを食べ始めた。誰にも渡すまいと片方の手で皿をがっちりと掴みながらキョロキョロしながら食べている。



(誰も取らないって……)



 ター坊の様子を皆が微笑ましく見守った。



「かわいい~!」



「そよちゃん、お野菜も食べないと」



 ヒノコが笑いながら言う。



「だって味が苦手なんだもん……」



 そう言って口を尖らせるそよは実に子供らしい。



「そう言わずに食べてみない?」



 ピリが優しくそよに微笑みかけるも、



「ううん! 食べないの……」



 ブンブンと頭を振ってピリを上目遣いで見るそよ。



「……わかったよ。じゃあ食べられるのだけね」



 ピリも強くは言わないで引き下がる。彼女は面倒見の良い女神のようである。そよと話す姿はまるで優しい保育士のようにも見える。



(そよさんの見た目は小学生くらいだから、保育士だと合わないか? でもそよさんって幼い感じだよな。神と人とは少し見た目年齢が違うのかも)



 そよはにこりと笑った。フォークとナイフを握り、ハンバーグを切り始めた。そして大きな口でハンバーグを頬張る。



「全く、子どもネ」



 ヒノコは苦笑いする。



 そよは気にせずハンバーグを食べている。



「だって子どもだもん!」



「ま、そういうアタシもこの香草は苦手だけど」



 そう言ってヒノコはパセリを皿の端へ避けた。



「ヒノコちゃんまで」



「これは食べる野菜なの~?」



 ヒノコは砂粒の神に尋ねる。



「ん? あぁ、食べられるよ。クセのある香りだけど」



 砂粒の神はすでに食べているようで



「食べたんだ? 美味しい?」



「クセのある味だな」



 ヒノコは砂粒の神を怪しいなどと言っていたが、話しかけている。



(よく変だと思っている相手に話しかけられるな。本当に変と思ってるわけでもないのかな)



「そうなんだ、じゃあアマテラスさんどうぞ~」



 ヒノコはエへへと愉快そうに笑う。彼女のほっぺは少し紅い、シードルのアルコールで酔っ払っているのかもしれない。彼女の着物のはだけた胸元部分からのぞく肌も少し紅く染まっている。まるでリンゴの果実のように、ほんのりと。




(え? アマテラスさんに⁉)

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