宴会の始まり



 宴会開始時間十分前には露の神を除いた全員が揃っていた。



 女性の神々の登場で賑やかに、明るくなった宴会場。ようやく宴会会場っぽくなってきた。



 それからすぐに最後の一人が現れた。



「いらっしゃいませ。露の神様」



 ついに露の神が姿を現した。



「あれ? 俺が最後か。時間間違えたかい?」



「いいえ、大丈夫ですよ。さぁさぁどうぞ」



 アスカが露の神を席へ誘導する。



 彼も温泉に入ってきたようだ、わずかに髪の毛が湿っている。



(ん?)



 慧は露の神の手元を見ていた。彼の指と爪の間に土が入っていた。



(また山の中に行ってたのかな)



 そうまでしてどこへ行っていたのか、露の神の行動は謎である。



 露の神が着いて、彼のウーロンハイが届いた時点で宴会開始時間となった。



 アマテラスが立ち上がる。



「皆さん、昨日からお疲れさまでした」



 アマテラスが丁寧に一例をして、挨拶を開始する。




「この間会ったばかりの私達ですが、今回の旅は非常に大切なものになるはずです。そのためにもこの素敵な旅館で元気をためて参りましょう。そして親睦を深めていきたいと思います」




 アマテラスはゆっくりとみんなの顔を見ながら話す。微笑みながら話すその姿は



 彼女の言葉は特別なものではない。しかし皆が彼女に注目している。アマテラスにはどこか視線を向けてしまう魅力がある。





「乾杯」



『カンパーイ!』



 ゾロゾロと神々はグラスを掲げる。



(なんとも人間らしい乾杯だ)



『いただきます!』



 皆が一斉に箸を持って食事を始める。



「いっぱい食べるー!」



 そよはパチンと手を鳴らして箸を握った。子どもの姿をしているが箸をきれいに持っている。



「お腹空いた~」



 先ほどまではいまいち弾まなかった会話も酒が入ったことで少しずつ盛り上がり始めた。



「ツクヨミ、今日は何してたの?」



 アマテラスは弟のツクヨミに話しかける。



「今日は外に出てその辺を散歩していたよ」



「何か面白い者でもあった?」



「面白い鳥が空を飛んでたなぁ。結構上空を飛んでたよ。結構大きかったよ」



「鳥かぁ。私はね~……」



「姉上、俺の話のは興味ないですね」



 何気ない日常の会話。姉の方が弟の話を遮り自分の話をし出すところも日常の会話のようだ。



「美味しい!」



 ピリは料理に舌鼓を打つ。



 他のみんなも「美味しい」と料理を楽しんでいる。




「良かったですね」



 慧は旅館の料理人であるカゲロウに小声で話しかける。



 カゲロウはウンウンと頷くも表情は険しい。全ての料理に満足してもらうまで安心はしないという思いが顔に出ている。



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