強さの秘訣?
三人は一斉に礼をして将棋を指し始めた。
パチパチと駒を指す音が響く。
「将棋を指すと人柄がわかるって、そういえば仙人さんが言ってましたね」
「そうなんだ~それはあるかもね」
「それはあると思う」
ピリはそう言って次の手を指した。そして慧の目を見る、アスカの目を見る。
慧はピリの目を見返す。
彼女の目は美しい濃い茶色をしている。その目を見ていると全てを読まれてしまう気がする。
慧が差す手、差す手全てにおいて彼女はその先の手を返してきた。
(何か、話してないのにすべてが伝わっていってる気がする)
そして遂に、
「参りました」
慧はピリに降参をした。彼女は強かった。多分以前対局した仙人と同じくらいの実力だと思った。
(自分の力じゃどのくらいの実力かなんてわかんないけどね)
「ありがとうございました」
彼女は慧に礼をした。
あとはピリとアスカの対局である。
慧はちらりとアスカの横顔を見た。
「……」
真剣。おでこに人差し指を当てて考え込む彼女。
普段の彼女からは感じられないほどの緊張感がある。
(ちょっと、怖い)
「いや~参りました」
アスカは息をついて一気に脱力すると、そう言った。
「ありがとうございました」
ピリもアスカに礼を返した。
「強すぎだよ~ピリさん」
アスカは先ほどまでずっと緊張していたからか、糸が切れたように話し出す。
「慧君もアスカちゃんもすごい強いよ!」
アスカは嬉しそうに笑う。
(アスカさんはこっちのほうが良いですね)
「しかし久々に将棋したけど、疲れるねー」
アスカはそう言ってドライフルーツを頬張った。
「頭を使うと甘い物がほしくなるネ! でも将棋って楽しい! 今度やるときは勝てるように特訓しないとね、慧君!」
アスカは慧に向かってニンマリと微笑む。
「ハ、ハハハハ……」
ちょっと勘弁してもらいたいと慧は思った。
「でもピリさん凄い強いですね。なんか考えていることが全部バレてるみたいで……」
「確かに! 目を見てるとバレちゃってるみたいだよね」
二人はピリを見て笑う。
ピリも二人に笑顔を返しながら、
「その通り、わかるんだよ!」
と言った。
「え⁉」
二人の目がまん丸に見開かれる。
「なんてね」
少し色っぽく、不敵に笑った。
そうこうしているうちにあっという間に夕食の時間が近づいてきた。
「さてさて、本日のメインイベントだよ!」
黄昏館に宿泊している神々の宴会の時間である。
女将、アスカと慧は先に会場に入り、出迎えをする。
すでに料理の準備はされている。彼らの到着を待つだけだ。
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