本日の予定
「あんなに大きなカバンに何を入れて温泉いくのよ」
「確かに」
じっと二人は砂粒の神の背中を見つめた。
「何見てるの?」
「!」
後ろにヒノコが立っている。
「びっくりした……!」
「ごめんごめん」
ヒノコはキャッキャと笑う。
「何でもないですよ」
「ふぅん……」
ヒノコは何か察しているように目を細める。
アスカは廊下の向こうを再度覗く。
砂粒の神は姿を消していた。彼の行方は分からなくなってしまった。
「あとで話を聞いてみましょう」
「そうね」
「ヒノコさんはいつからいたんですか?」
「ちょっと前からだよ。なんか二人が面白そうなことしてるなと思って」
つまりヒノコは慧とアスカのやり取りを見たいたことになる。
ずっとみていたのだろうか。
「面白そうなんて、ただお客様を見てただけですよ」
客を観察するなど、褒められたことではない。下手したらクレームが入りそうだが、アスカと慧は素直なので、咄嗟の嘘が出てこなかった。
「独特な感じだもんね、あの人!」
ヒノコは砂粒の神の方を見ながら言う。
「そんなことないですって!」
アスカと慧は焦って否定する。客を否定することはさすがにできなかった。二人はブンブンと手を振る。
「アハハ! そんな本気にしないで、冗談だよ~!」
そう笑ってヒノコは廊下を歩いていく。
「今から岩盤浴に入るんだ~!」
ヒノコはスキップをして廊下の奥へ消えていった。
「こっちが観察されてたね」
「そうですね」
「慧君、今日は夕食手伝ってくれる?」
「はい」
「今夜は神様がみんな揃ってディナーだって」
「昨日は皆で食べてなかったんですか?」
「昨日は『みんな疲れているだろうから食事は各々で』ってことになったみたいで、今日皆で揃って食べるんだって」
「なるほど」
神が揃う会、彼らがどんなコミュニケーションをお互いにとるのか観察するにはもってこいの場面に違いない。
「はい、見せてもらいます」
夕食までは当たり前だが時間がある。それまでは神に話を聞きに行けないかアスカと作戦会議だ。
「今日は露の神様と砂粒の神様に会いたいよね」
「そうですね」
昨日話せなかった二人の神、他の神から聞けた話では少し怪しさもあると慧は思っていた。
しかしそれは噂程度だったり、本当のことはわからない。だから本人と話してみて
どうだろうかといったところを確かめる必要がある。
「砂粒の神様には、話は絶対聞きたいですね」
「だね」
二人はその日の仕事を始めるために準備に取り掛かった
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