ヒノコの話



「そうだ! ドライフルーツもあるんだった!」



 アスカはドライフルーツを出した。



「すごーい!」



「私桃が一番好きー!」



 ヒノコは美味しそうに桃のドライフルーツを頬張った。



「俺も一番桃が好きなんですよ」



 慧がそう言うとヒノコは嬉しそうに表情を輝かせた。



「ホント⁉ 桃好きに悪い人はいない! 仲良くしようね!」



 ヒノコは慧に握手を求めてきた。



「あ、はい……」



 少し展開に圧倒されながらも慧は握手に応じる。



 ヒノコの手は小さく細く白く、キレイだった。そしてすこし温かった。



「おっきな手!」



 ヒノコはもう片方の手で慧の毛を包み込み、手の平で撫でた。



 慧の手の甲に彼女の手に平が滑る。



 その動きからより彼女の滑らかな肌がより感じられる。



「あ、すべすべ」



 そう慧は呟いてしまった。



「な~にそんなこと本人の前で声に出してんのよ」



 アスカが苦笑いする。



 ハッと慧は我に返る。



 ヒノコはニヤニヤと笑っていた。



「お兄さん、ウブだネ!」



「すいません」



 慧はどぎまぎししながら答える。プチパニックになっている。



「きゃはは! 面白い! 気に入ったヨ! お二人、お名前は?」



「榊アスカです」



 ヒノコはアスカにも握手を求めた。



 ヒノコは両手でその手を包み込む。



「アスカちゃん、ヨロシクね! アタシ人間の女の子のお友達いないから仲良くしてくれると嬉しいな!」



 ヒノコは嬉しそうに歯を見せて笑う。



「はい! 私も仲良くしてもらえると嬉しいです!」



「人間の遊びを教えてね! お兄さんは?」



「石岡慧です」



「ケイちゃんかぁ。改めてよろしくネ! 仲良くしよ!」



 そう言ってヒノコはウインクした。閉じた瞼から小さな火の粉がきらりと飛んだ。



「はぁ、お手柔らかに……」



 慧は額の汗を拭いながらそう言った。



(初対面でケイちゃん呼びか……。距離の詰め方が早いよ)



 それからは皆で会話を少し楽しんだ。



 特にアスカとヒノコは気が合ったようで一番会話が盛り上がっていた。



 ヒノコは神の中で一番話しやすい、フレンドリーな性格だった。






 二人がヒノコの部屋を出ると、アスカはニヤニヤとしながら慧の方を見た。



「慧君、気に入られて良かったね」



 アスカが笑う。



「まぁ慧君も変態でなにより」



「変態なんてやめてくださいよー」



「『すべすべだぁ』なんて、鼻の下伸ばしながら言う人のどこが変態じゃないのよ」



「鼻の下は伸びてないけど、ホント失態醜態です……!」



 慧は両手で顔を覆う。このまま逃げ出してしまいたいと思った。



「でも慧君ってああいうタイプの人に気に入られるよね! そういう星の下に生まれてるよね」



 アスカは面白そうに言う。



「勘弁してくださいよ~、ああいうキャピキャピ系は苦手なんですって!」



「いやいや何言ってるの。ああいうタイプの人の方が似合ってるよ~」



 アスカはケタケタと笑った。

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